会社にケンカを売った社員たち RSSを登録する

『まぐまぐ大賞』ビジネス・キャリア部門3年連続ノミネート!実際の判例から会社を訴えた社員の言い分に着目し、人事リスク発生の原因を探ります。感性豊かな企業の経営者・管理職・人事担当者必読のマガジンです。ノン・フィクションなので、読み物としても楽しめます。

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

2008/05/07

★ 『会社にケンカを売った社員たち』 ★ No.207 (2008/05/07発行)

□■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■


        『 会社にケンカを売った社員たち 』No.207 


 〜 感性豊かな経営者、管理職の方に特に読んでほしいメールマガジン 〜

                         (2008/05/07発行)
■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Legal Literacy Inc.━□■□

※「等幅フォント」に設定していただきますと最適な表示となります。



C┃O┃N┃T┃E┃N┃T┃S┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛


■ 今週の事件【東京自転車健康保険組合事件】
▽ <争点>
整理解雇と不法行為

1.事件の概要は?
2.前提事実および事件の経過は?
3.職員Xの言い分は?
4.判決の要旨は?

■ 編集後記



==========================================================================

■ 今週の事件

【東京自転車健康保険組合(以下、T組合)事件・東京地裁判決】
(平成18年11月29日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1. 事件の概要は?
─────────────────────────────────────

本件は、T組合が職員であるXを整理解雇したところ、Xが当該整理解雇は無効で
あると主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および解雇の意思
表示後の賃金、賞与の支払いを求めるとともに、不法行為に基づき300万円の慰謝
料を求めたもの。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2. 前提事実および事件の経過は?
─────────────────────────────────────

<T組合およびXについて>

★ T組合は、健康保険法に基づき設立された公法人であり、国の健康保険事業全般
を代行することを主たる業務としている。同組合の加入者は、主に自転車および原
動機付き自転車の製造、関連部品製造、卸売、競輪関係団体などであり、労働者お
よびその被扶養者の業務外の事由による疾病、負傷もしくは死亡、出産に関する保
険給付を行い、疾病予防等の保険事業を営んでいる。

★ T組合には総務課と業務課の2つの部署があり、これ以外に健康相談室があるが、
これは独立した部署ではなく、毎週木曜日の午前中に2時間だけ開かれているもの
であった。また、同組合の職員数は平成15年1月末時点で8名、16年1月末時点
で7名、17年1月末時点で8名であった。

★ Xは、保健師および看護師の資格を有していたところ、平成10年12月にT組合
との間で期間の定めのない労働契約を締結した。Xは健康相談室で業務を行うほか、
総務課において、部長の指揮の下、他の職員と同様に日常業務を行っていた。



--------------------------------------------------------------------------

<本件整理解雇に至った経緯等>

★ T組合の被保険者数は年々減少してきているが、同組合の収支は平成10年度か
ら16年度まで7期連続黒字であり、内部留保額も多く、財政的には当面心配のない
状況にあった。

▼ 16年9月、T組合は従業員に対し、現行の退職金規程を改定し、17年3月末日
付で全員退職の手続きをし、同日までの退職金を清算し、翌4月1日付で全員再雇
用するとの案を提示したが、Xらは回答を留保した。

▼ 同年12月、T組合のA理事長は退職金、賃金の改定を理事会で決定したと述べ、
退職金を約70%減額する旨の改正案を提示したところ、Xらは改正の理由や必要性
を質問したが、A理事長らは理事会の決定であると述べるにとどまった。

▼ Xらは労働基準監督署に労働相談をし、17年1月、T組合を相手方として、労
働条件の一方的な不利益変更無効の確認を求め、労働局による助言、指導の申請を
行った。同月、労働局はA理事長らを呼び、助言指導を行った。

▼ 同年2月、A理事長らはXら職員に退職金規程改定について説明を行ったが、そ
の際、Xらの労基署に対する相談行為等は理事会に反旗を翻したことになると述べ
るなど、Xらを納得させる説明はなされなかった。

▼ 結局、T組合は同月、Xら職員に対し、退職金規程改定はせず、従前どおりの規
程を適用すると発表した。一方、同月の理事会で健康相談室の廃止が決定された。

▼ 同年4月、XはT組合のB常務理事に対して妊娠していること、里帰り出産を予
定していることを伝えたが、後日職員全員に配布された同年12月までの当番勤務表
にはXの名前も記載されていた。

▼ 同月、A理事長はXに対し、解雇予告通知書を交付し、整理解雇の意思表示をし
た(以下「本件整理解雇」という)。Xは解雇予告通知書の解雇理由に「事業の運
営上のやむを得ない事情により、健康相談室の廃止を行う必要が生じ、他の職務に
転換させることが困難なため」と記載されていることについて、Xの健康相談室で
の勤務時間は週2時間であると述べたところ、A理事長は「そんなの知らなかった」
と主張し、Xの代わりに別の人を雇うことが決まっていると述べた。

▼ Xは同年5月末日でT組合を解雇され、同組合は翌日、Xの代わりの別の人を職
員として採用した。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3. 職員Xの言い分は?
─────────────────────────────────────

1)本件整理解雇は解雇権の濫用として無効だ!

▼ 本件整理解雇が有効であるためには、人員削減の必要性、解雇回避努力義務の履
行、人選の合理性、説明協議義務の履行の4要件を満たす必要があるところ、本件
整理解雇はいずれの要件も満たしておらず、客観的に合理的な理由を欠き、社会通
念上相当として是認できないから、解雇権の濫用として無効である。

▼ T組合は健康相談室の廃止を整理解雇理由としているが、Xは健康相談室の業務
には、1週間にわずか2時間程度しか就いていない。したがって、健康相談室が廃
止されたからといって、XのT組合における業務自体が失われたわけではない。

▼ T組合は15年度、16年度とも1億円以上の黒字を計上している。また、同組合
は16年度決算において約8億円の剰余金を計上し、17年3月分からは保険料率を
引き下げており、そもそも黒字基調の経営をしている。

▼ T組合は本件整理解雇に際し、経費削減、新規採用の停止、労働時間短縮や賃金
カット、希望退職募集など他の雇用調整手段によって解雇回避の努力をする信義則
上の義務を負っているところ、上記のような解雇回避努力を一切行っていない。

▼ XはT組合職員の中でも経験、知識、勤務態度ともに最も優れた職員であり、お
よそXを整理解雇する理由はない。

▼ T組合はXとの間で本件整理解雇についての説明、協議を一切しておらず、また、
代償措置も講じていない。


--------------------------------------------------------------------------

2)本件整理解雇は違法であり、不法行為に当たる!

▼ 本件整理解雇は、法的に有効とされる余地がないにもかかわらず行われた違法な
ものであり、不法行為を構成する。

▼ 本件整理解雇は、Xの復職希望を不当に拒絶し、出産を控えたXに著しい精神的
苦痛を与えた。したがって、本事案においては、Xに対し、地位確認と就労拒絶機
関の賃金および賞与の支払いを認めただけでは上記の精神的苦痛は慰謝されない。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4. 判決の要旨は?
─────────────────────────────────────

------------------------------------
弊社ホームページ・リニューアル!
http://www.ll-inc.co.jp/ 
サービスがわかりやすくなりました。
------------------------------------


▼ 整理解雇が有効か否かを判断するに当たっては、人員削減の必要性、解雇回避努
力、人選の合理性、手続きの相当性の4要素を考慮するのが相当である。

▼ 使用者は人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性の3要素について、そ
の存在を主張立証する責任があり、これらの3要素を総合して整理解雇が正当であ
るとの結論に達した場合には、次に従業員が手続きの不相当性など使用者の信義に
反する対応等について主張立証する責任があることになり、これが立証できた場合
には先に判断した整理解雇に正当性があるとの判断が覆ることになると解するのが
相当である。

▼ T組合がなした健康相談室廃止を理由とする本件整理解雇には、人員削減の必要
性、解雇回避努力、人選の合理性のいずれの要素についても立証がされていないと
言うべきであり、本件整理解雇は有効ということはできない。

▼ T組合は、退職金規程の改定、健康相談室廃止などの施策を実施しようとしたと
ころ、これに反対するXが外部機関に相談することを快く思わず、整理解雇の要件
がないにもかかわらず、本件整理解雇を強行したと認めるのが相当であり、本件整
理解雇は不法行為を構成すると言うべきである。

▼ 一般に解雇された従業員が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われるこ
とにより慰謝されるのが通常であり、これによってもなお償えない特段の精神的苦
痛を生じた事実が認められるときにはじめて慰謝料請求が認められるところ、Xは
本件整理解雇により、解雇期間中の賃金が支払われることでは償えない精神的苦痛
が生じたと認めるのが相当である。

1)XがT組合に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2)T組合はXに対し、17年6月から本判決確定に至るまで、毎月17日かぎり
  金28万7100円およびこれらの金員に対する遅延損害金を支払え。
3)T組合はXに対し、17年6月から本判決確定に至るまで、毎年6月末日および
  12月末日かぎり金57万4200円およびこれらの金員に対する遅延損害金を支払え。
4)T組合はXに対し、(慰謝料として)金100万円およびこれに対する
  遅延損害金を支払え。
5)Xのその余の請求を棄却する。
6)訴訟費用はこれを8分し、その1をXの負担とし、その余をT組合の負担とする。


☆★☆ ご意見・ご感想をお寄せ下さい ☆★☆

今回の事件をお読みになって、ご意見・ご感想等がありましたら、
当マガジン公式ブログまで是非お寄せ下さい(ハンドルネームでもOKです)。
⇒⇒⇒ http://blog.goo.ne.jp/ll-inc 

なお、ご質問・ご相談につきましては、メールにて info@ll-inc.co.jp まで
お送りいただけたら幸いです。

<ブログでのコメントのつけ方>
1.コメントをつけたい記事のタイトル、または記事の一番右下にある
 「コメント」の右にある( )内の数字をクリックして下さい。
2.コメントを投稿するページが開いたら、「名前」「コメント」等それぞれの
  欄に入力し、最後に「投稿」ボタンをクリックして下さい。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 編集後記

諸般の事情により、前号で予告した内容から変更になりましたことをまずはお詫び
いたします。私のGWは普段とあまり変わりありませんでしたが、ガソリンが高く
なる前に車で信州方面まで足を延ばしてきました。道路も混んでおらず、美味しい
物も食べられて、良い気分転換になりました。

約12年ぶりに現役復帰したテニスの伊達公子さんにはほぼ同世代でもあり、大いに
注目しています。「世界と戦うためではない」とご本人は語っていますが、“テニ
ス界のゴッドマザー”といわれたナブラチロワ選手は37歳でウィンブルドン決勝進
出、さらに50歳近くになっても4大大会のダブルスで優勝していました。是非世界
の大舞台での活躍を見てみたいものです。

次回配信日は5月21日(水)の予定です。(Y)

─────────────────────────────────────

※ 当マガジンでは、会社側の主張、争点に対する裁判所の判断の詳細はあえて割愛
しています。これは裁判の結果(勝訴・敗訴)ではなく、争点が生じた原因を探る
ことに重きを置いているためです。もちろん従業員側の主張の全てが真実というわ
けではありませんが、訴えられる余地を最小限に抑えることによって、無用な争い
を事前に回避することが可能になると考えます。株式会社リーガル・リテラシーは、
裁判で勝てる・負けない会社作りよりも社員にケンカを売られない社内環境作りを
サポートするための各種サービスを提供しております。詳しくは当社ホームページ
( http://www.ll-inc.co.jp/ )をご参照下さい。

なお、当マガジンで扱っている判例はほとんどが地裁レベルのものであり、第二審
以降の経過をフォローすることは本来の目的ではありませんので、興味をお持ちの
方はご自身でお調べいただけたら幸いです。

※ バックナンバーで取り扱った事件につきましては、次のURLをご参照下さい。
◆ http://www.ll-inc.co.jp/service/mailmag.html#list 


--------------------------------------------------------------------------

※ ご意見、配信に関する手続などは以下からお願いします。

<ご意見・ご感想・ご質問・ご相談など>
◆ e-mail:info@ll-inc.co.jp 
広告(ヘッダー)掲載等ご希望の場合もこちらまでお問い合わせ下さい。
なお、サイドビジネス等の広告は取り扱っておりませんので、ご了承下さい。

当マガジンのコンテンツの著作権は、リーガル・リテラシー社に帰属しています。
無断転載(ブログ含む)および無断コピー等は一切禁止させていただいております。


<配信中止・配信先変更>
大変お手数をおかけしますが、手続きはご自身で行って下さい。
当社では一切の代理手続をいたしかねます。
◆ http://www.mag2.com/m/0000116175.htm   (まぐまぐ!)
◆ http://www.melma.com/backnumber_97380/  (melma!)
◆ http://melten.com/m/15654.html     (メルマガ天国)
このメルマガは、まぐまぐ・melma!・メルマガ天国を利用して配信しています。

--------------------------------------------------------------------------

□ 発行元 株式会社 リーガル・リテラシー 広報部 http://www.ll-inc.co.jp/ 
     【併 設】社会保険労務士法人 リーガル・リテラシー
 〒150-0044 東京都渋谷区円山町15-14 エルアルカサル渋谷
       TEL:03-3463-5858 FAX:03-3463-5885
 ※「会社にケンカを売った社員たち」公式ブログ http://blog.goo.ne.jp/ll-inc 
 ※「労務トラブルを回避する個性診断テスト」>>> http://www.kanrishoku.com 
□ 発行責任者 黒部 得善(社会保険労務士)
□ 編集担当者 荻野 泰男(社会保険労務士)

─────────────────────────────────────
Copyright (C). 2003−2008 Legal Literacy Inc., All Rights Reserved

最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

上へ戻る