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2008.7.12 Vol.208
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1. 今日のコラム「いま、働くということ(2)」 (第465回 2008.7.12)
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◇この間起こった秋葉原の通り魔事件は、今社会に横たわる様々な暗い影がも
ろに噴出したようで、驚きとともに、ああこんな世の中になってしまったのか
と本当に悲しくなってしまいました。「孤独」「将来不安」。みんな不安に満
ちた社会を、どう生きていくか必死なのですが、みんながもっと心穏やかに過
ごせないものかと心を痛めます。とりわけ若い人は、不安で一杯なのでしょう
。なかでも雇用については他人事ならずです。世が世であれば思いますが、本
当に大変な時代になりました。まさかこんな時代になろうとは夢にだに見ませ
んでしたが、人生に試練はつきもの。誰だって苦しいときはあるのです。いや
、苦しく、しんどいのが常ですが、困難に耐え、希望を捨てずに頑張って欲し
いと願わずにはいられません。
◇事件を起こした人は、派遣社員でした。いつ契約を打ち切られるかわからな
いという不安を抱え、正社員のように責任ある仕事も無かったといいます。今
の社会を不安に陥れた元凶は、規制緩和の大義名分のもと、すべての職種で派
遣労働を認めたことのあるのではとも思います。自分が現役のとき、東京に単
身赴任していた時期がありました。そのとき、自分の職場に女性の派遣社員が
いましたが、すごく能力のある人で、ここはこうした方がいいのではないでし
ょうかと提案を受けたりで、派遣社員も生き生きと働いていました。ところが
です。今、派遣社員は悲惨で、あちこちで問題が起こっています。とうとう先
日、(社)日本人材派遣協会では「労働者派遣事業の適正な運営に向けて」と
いう1面を借り切っての新聞広告を出さざるを得ませんでした。自分など人材
派遣業だけは絶対やらないと拘ってきましたが、協会の広告に名を連ねている
会社がなんと数の多いことか。あらためて驚いてしまいました。人材派遣の市
場規模は、5兆円と急成長していますが、いまどき急成長と聞くと、どこかお
かしいと身構えてしまうのです。
◇前回少しだけ紹介しました大庭健さんの近著「いま、働くということ」(ち
くま新書)の第1章には「働く環境の劣化」というのがあります。「こんにち
「環境破壊」というと、地球温暖化にも象徴される自然環境の破壊について語
られることが多い。しかし、私たちの日々の暮らし・生き方への打撃という点
からいうならば、働く環境の破壊は、より深刻である。(中略)そして働く環
境が急速に劣悪になった発端は、あの1990年前後の未曾有のバブル経済に
破綻であった。(中略)こうした中でも、企業のうちには、それまで培ってき
た技術・ノウハウに磨きをかけて新たに高品質の製品を開発したり、未開拓の
分野に挑戦して、苦境を乗り切ったところも僅少ではない。しかし、多くの企
業、とりわけ大企業のトップが採った道は、そうではなかった。彼らが選択し
たのは、とにかく人件費を削減するというもっとも安直な方策であった。すな
わち、一方では「リストラ」という名のもとに、人減らしを断行し、他方では
新卒の採用を手控えることによって、人件費を削減したのである。(中略)新
卒の採用にかんしては「氷河期」と呼ばれる凍てついた光景が出現し、毎年、
多くの若者が正社員になれぬまま卒業し、その多くはいわゆるフリーターにな
っていった。しかし、そのようにリストラを断行して人を減らし、新規採用を
切り詰めていけば、いずれ働き手が足りなくなってしまう。(中略)したがっ
て企業にとって望ましいのは、社員でない人が会社に来て、社員よりも安い給
料で働いてくれることである。すなわち、派遣社員を送ってもらって、社員が
減った穴を埋めてもらうことである」。
◇「ところが戦後の日本にあっては、労働者供給事業は法によって禁じられ、
仕事の紹介・あっせんは、公共職業安定所という行政機関で行われてきた。し
たがって、この法律を潰さなければ、派遣社員を送ってもらえないので、経済
界は、90年代のなかばになると「雇用流動化の促進」という名のもとで、人
材を派遣する業務を自由化するよう、政府に圧力をかけ、「規制緩和」という
うねりにのって功を奏し、20世紀の最後の年にはついにあらゆる業種・職種
にわたって、人材派遣業が自由化・合法化されるにいたる。この前後から堰を
切ったように、働く環境は、急速に劣悪になる」。
◇「もちろん、中には、努力が認められて正社員として中途採用される人もい
るし、派遣社員として働いているあいだに蓄積したノウハウを元に起業して成
功した人もいる。しかし、非正規労働という形で働いている人の総数からみれ
ば、そうした人の数はきわめて少ない。多くの人は「こつこつ働き続けたとこ
ろで、生活が改善される見込みはない」という、やりきれない思いを抱えたま
ま、きょうもまた単純作業にとりかかることを余儀なくされている。生活基盤
は脆弱なままであり、それが改善される希望をまったくもてない。これは、非
常に深刻な事態である」。
◇大企業トップの採った道は、とにかく人件費削減という安直な方策であった
。いつも経営者は「厳しいグローバル競争に勝つため」と泣き言を繰り返しま
すが、バカのひとつ覚えみたいで腹立たしくなります。バブルのとき、銀行に
は公的資金が投入されたように、人材派遣の規制緩和だって、バブル時の特例
にすればよかったのかも知れませんが、いまだに残ってしまっているのです。
この間、日経の大機小機の欄に「雇用のフレキシキュリティ」と題して会社経
営者を厳しく糾弾している記事がありました。「日本企業が厳しい競争に勝ち
抜く方策は、労働コストの削減によって低付加価値商品の世界シェアーを確保
することではなく、高度な技術開発に基づく高付加価値商品で世界市場を開拓
することである。日本企業は元来、会社は従業員を含めたステークホルダー全
体のもの、との哲学に基づき景気循環には実質賃金の柔軟性で対応し、安易な
雇用削減を回避してきた経緯がある。浅薄な経営論に便乗し、有能な従業員を
切り捨て、社会保障負担を国に押しつけ、技術開発を怠り、株式時価総額の最
大化こそが企業の目的だと叫び続けてきた経営者は猛反省すべきだ。雇用が柔
軟性と安定性を兼ね備えたフレキシキュリティでなければならないのは自明の
理である」(日経6月14日)。同感。同感。大企業は弱いものイジメして儲
けすぎ。我々庶民にはそう映ります。折角掴み取った既得権は、そうやすやす
と手放すものかとお考えでしょうが、(無理を承知で)もうちいと社会全体に
目を向けていただけないものか(お願いだから!)。
◇バブル崩壊後、我々が目にしたのは金儲け至上主義でした。金儲けのためな
らなにをしてもいいような社会風潮が蔓延してしまいました。小泉政権が、自
民党をぶっ潰すのは勝手にやってもらってよかったのですが、行過ぎた規制緩
和のもと、人のこころまでぶっ壊してしまったのです。「不安」と「不信」に
満ち溢れた社会に導いたのです。「政府は、野放図な非正規雇用と労働者派遣
を制限し、労働環境の劣化に歯止めをかける責務を負っているはずである」、
と大庭さんも指摘していますが、今の政府もあてになりません。我々にできる
ことはたかが知れていますし、なにをやったらいいのかもわからないのですが
、あたらしい政権に期待してみましょうや、ということぐらいでしょうか。日
経に「あすへの話題」という記事がありますが、伊藤忠商事の丹羽さんが「経
営の神髄」と題してこんなことを書いていました。「経営の神髄は人をどう動
かすかにかかっている。私が心がけているのは「認める」「任せる」「褒める
」の3段階だ。人間はこの3段階がなければ動かない。とりわけ「認める」こ
とが大切だ。人が疎外感、孤独感を募らせれば、精神は簡単に壊れてしまう」
。半年続いた連載の最後に丹羽さんから届けられた言葉は「心に栄養(仕事、
読書、人との交流)を与える」ことの大切さであった。
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少しの勇気で動いて下さい!動かなければ何も変りません。
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