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カントール(教会音楽家)植木紀夫先生が、教会音楽やその個々のテーマについて「あれこれ」と語ります。

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2003/10/31

メルマガ「教会音楽あれこれ」No.2

教会音楽シューレメールマガジン「教会音楽あれこれ」No.2 (Oktober 2003)

◆◆ご挨拶◆◆
「教会音楽あれこれ」第2号をお送りします。秋も深まり、肌寒い季節になりました。
「教会音楽」で季節を語れませんが(まぐまぐ発行の審査用に創刊号発行前ホームペ
ージ中にupしていた「教会音楽あれこれ」サンプル号をお読みになった方は、そこで
“夏の讃美歌”を取り上げたのをご記憶でしょう)、教会の歩みの知恵である「教会
暦」を辿ることは、神の恵みを繰り返し覚えることの助けになると思います。
 
という訳で、今日は何の日か皆さんはご存知でしょうか。月末決算!いやいや、500年
も前に、東ドイツ、ヴィッテンベルクの城教会の扉にマルチン・ルターが「95箇条の
提題」を打ちつけた日です。教会暦で「宗教改革記念日」と言われます。でも「・・
記念日」という言葉だけが私達の意識に留まる前に、それは何だったのか、そしてそ
れが教会音楽にどのように関わってくることになったのか、考えてみたいと思います。

◆◆教会音楽あれこれ(その2)−会衆の歌−◆◆
16世紀のドイツは、皇帝がいたとは言え実際は小単位の領地を領主が治める領邦国家
でした。免罪符販売(免罪符を買えば救われる)に対する疑問・反発、ドイツの富が
ローマに搾取されていることへの不満は、民衆や領主達に共通のものとして鬱積して
いる状況でした。領主の中には自分の領地をもっと信仰的にしたいと思う者もいまし
た。同時に権力欲から教会の改革を後押しした領主がいたのも歴史的には事実だと思
います。

いずれにせよ、そのようなところに「ルターという行為」が投げ込まれました。「提
題を打ち付ける」というやり方そのものは、当時の議論の投げかけ方としては習慣的
にされていた方法で、何ら特別なことではありませんでした。当時の学問用語ラテン
語で書かれた「95箇条の提題」を読めば明らかなことですが、ルターはそこで純粋に
免罪符の悪用に関して声をあげただけだ、ということがわかります。教会を否定して
いないし、宗教改革なるものを目指した訳でもありません。信仰的な視点から投げら
れたこの提題は、結果として教会的・経済的・政治的なうねりにの発火点になってい
った訳です。そこに私は「神の摂理」を認めます。

私植木の立つ福音主義の歴史観は「神の摂理」を第一に信じます。これらのことはル
ターという人が、聖書のローマ書から「キリストを信じる信仰のみが、人を神の前に
義とする」ことを確信したことを出発点にしています。聖書のみ・信仰のみ・万人祭
司、という宗教改革の理念です。同時にその「神の摂理」は、ここで考察したような
様々なその他の因子(政治的・経済的)の全てを貫いて為されるもの、歴史を支配さ
れる神の「摂理」とはそのように働くことができる「摂理」だということです。

「宗教改革」と言って皆さんが想起する讃美歌はおそらく「神はわがやぐら」(讃267、
讃21-377)でないかと思います。しかし今日は敢えて別のルターの讃美歌「深き悩み
より」(讃258、讃21-160)の話をしたいと思います。「95箇条の提題」より6年後の
1523年、ルターは礼拝改革に取り組んでいました。祈りを持って熟考し非常に注意深
くこの礼拝改革にあたっていたことは知られています。ルターがそこでまず必要を覚
えたのは、民衆が理解し歌うことのできる母国語の讃美歌でした。1523年から1524年
にかけて彼は複数の友人に手紙を書き、ドイツ語の讃美歌の必要性を訴え、まず詩篇
をドイツ語に韻律化してくれる様に、またその様な賜物を持った詩人を紹介してくれ
る様に訴えています。その手紙に見本として添えたのが、詩篇130編を元に自ら整えた
「深き悩みより」でした。ルターは当初、讃美歌製作を自らの仕事とは思っていなか
ったようです。これらの手紙へのレスポンスはルターが期待していた程なかったこと
も合い待って、彼は更に讃美歌創作を続け後世に40曲程の讃美歌を残しました。

「深き悩みより」には、宗教改革のエッセンスが詰まっています。礼拝改革の最初の
第一歩として、詩篇の韻律化を讃美歌の最初の一歩としたことがまずそうでしょう。
→『聖書のみ』。この讃美歌(オリジナルに最も近い讃美歌21-160による)は1節の初
行と最終節5節の最終行がそれぞれ詩篇130編の1節と8節に対応していますが、その間
は作者によって内容が展開していきます。3節にはほとばしるかの様に「おのれの業に
は少しも頼らず、おのれの力に救いを求めず」と信仰義認の教理が歌われます。→『
信仰のみ』。そしてもう一つの『万人祭司』。どこに認めることができるでしょうか。
この讃美歌を持って実際に何がなされたのか、に目を留める時に浮かび上がってきま
す。

宗教改革より1000年程前の5世紀、ラオデキア公会議が楽器の使用と創作讃美歌を禁止
して以来、教会の歌は修道院を中心に培われてきました。グレゴリオ聖歌を初めそこ
は賛美の豊かな源泉です。しかしそれは同時に、歌うことによって神を賛美する、と
いう神への応答という行為から会衆を遠ざけてしまうという結果ももたらしました。
それ以来1000年もの間、会衆の口は、中世の教会のミサにおいてつぐんでしまったの
も事実です。ルターの讃美歌は、全ての会衆が礼拝者として礼拝に参加する、自分達
の言葉で讃美歌を共に歌うという、信仰共同体としての、神への応答という意味での
「会衆賛美」という「行為」に導きいれたのです。→『万人祭司』。

ドイツで手にした賛美歌学や教会音楽関係の文献には、ルターの教会音楽における功
績は「彼が40数曲の讃美歌を後世に残したことそのものではなく、それによって礼拝
に会衆賛美という機能を確立したことにある。」との言及が良く見受けられます。私
はここに、この歴史から500年経った私達への助けとしてもう一つの言葉を付け加えた
いと願います。ならばその「会衆賛美という機能の確立」とは何の為だったか、です。
『それによって、礼拝式が神の啓示への応答としての真の霊的礼拝となるため』。そ
れがまさに、ルターが讃美歌という課題を通して、今日の私達へも残してくれた問い
かけであるように思います。

ですから最後に私は、讃美歌を学ぶ時に、バッハのカンタータや受難曲のコラールに
出会う時に、素晴らしい讃美歌に出会って感動した!という「讃美歌物語」に終わる
ことなく、神に向かって歌われる「会衆の歌」を、神の啓示への応答としての、真の
霊的礼拝のため課題として、いつも考え問い続けていきたいと願わされるのです。

◆◆教会音楽シューレあれこれ◆◆
来る11月22日(土)教会音楽シューレの第2回ワークショップを開催致します。テー
マは「教会と楽器 −なぜオルガンなのか、なぜオルガン以外の楽器なのか−」です。
最初から「教会の楽器はオルガン!」と決め付けることから始めるのではなく、何故
オルガンが教会の楽器になったのか、ということを歴史から学びつつ、今日の教会は
楽器という課題をどう考えていったら良いか、そのようなプロセスを確認しつつ共に
学びたいと願っています。ゲストに私植木が留学中に一時期同じ大学で教会音楽を学
ばれた清沢紀久先生をお迎えします。

◆◆教会音楽シューレホームページについて◆◆
かんりにん・あんざいさん、のご尽力で、前回のメルマガ発行時から多くの部分が更
新されています。どうぞご利用ください。主な更新事項は、、
 ◎ワークショップ
  ・・第1回ワークショップが終了しています。
 ◎教会音楽ツアー
  ・・旅行日程と訪問地等の詳細が更新されています。今回の「教会音楽あれこれ
    (その2)では、ルターの歴史の「95箇条の提題」から「礼拝改革」までの
    道程を端折っています。ツアーはその歴史を実際に見つめる機会ともなりま
    す。参加を歓迎致します。
 ◎ライブラリー
  ・・第1回ワークショップの概要が公開されています。
そしてまもなく11月3日(月)に、掲示板「KMSホワイエ」(カー・エム・エスホ
ワイエ)をオープン致します。教会音楽シューレに様々な形で集い、関わっている方
々、とりあえず少し立ち寄ってみようかなと思われる方々が集い、近況を交換し、互
いの交わりを深め、賛美と教会音楽という課題を共有していく、そのような「ホワイ
エ」となることを願っています。

次回の「あれこれ」はアドベントの時期にお送りします。

なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、
その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。
「義人は信仰によって生きる。」と書いてあるとおりです。
(聖書:ローマ人への手紙1章17節)

2003年10月31日
植木紀夫
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教会音楽シューレ
http://www.h6.dion.ne.jp/~kms/
E-mail: kms@mail-box.jp
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教会音楽シューレ・メールマガジン「教会音楽あれこれ」
発行者:植木紀夫
mag2 ID:0000115900
バックナンバー:http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000115900
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