『 ただ今大工修行中! 』第115号
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『 ただ今大工修行中! 』 第115号
2009年 6月 13日
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【 ごあいさつ 】
「ただ今大工修行中!」読者のみなさまこんばんは。
今号から新たに購読を始められた読者の方へ、始めまして。
ただ今大工修行中!のM・KAI(エム・カイ)と申します。
前回号での予告通り、今回号では【 茶の湯にまつわるエトセトラ 3回目 】
というタイトルでのお話しになります。
それでは、お話しさせていただきます。
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【 茶の湯にまつわるエトセトラ 3回目 】
始めてこのメールマガジンを読まれる方へ向けてお話しをしています。これから
始まるお話しは、前回号のメールマガジンから続いています。
いつもの事なのですが、前回号を読まれていない読者の方へ向けてお話しをおさ
らいすることから始めていきます。よろしければ前回号をご覧ください。
まぐまぐ ただ今大工修行中!バックナンバー閲覧ページ
http://www.mag2.com/m/0000115674.htm
さしがね会長は優雅な田舎暮らしが出来るということで、住み慣れた都会から孫
娘の英理ちゃんと2人で郊外へと引っ越し、そこで茶の湯を始めることにしたの
です。
何かしらを始めるに当たり、昔からことわざに従って行動を進めていくのが、さ
しがね会長の習わしです。そのことわざとは何かというと、「古きを訪ね新しき
を知る」という言葉です。
茶の湯を始めるにあたり、さしがね会長は茶の湯について知識を得るべく勉強し
てみたのです。すると、今まで知らなかった茶の湯の世界が見つかりました。
千利休がつくり上げた極限まで無駄を省いた侘び茶や、千利休が残した「人と違
うことをせよ」という言葉について、周囲の人とは少しばかり違う人生を歩んで
きたさしがね会長にとってぴったり当てはまるものでした。
昔から無駄な浪費など一切せず、お金を貯める一方の貯金道楽者のさしがね会長
にとって、茶の湯というこれまでにない深い世界があったことに驚き、茶の湯に
関わる事にますます気に入り、本格的にお茶を覚えて自分なりの遊びの流儀を造
っていこうと、さしがね会長は考えたのです。
自分なりの遊びのお流儀を造っていくに当たり、まずは自宅にあるお茶室の名前
を決めることから始めました。さんざん考えた挙句に自分の孫娘の名前、英理
(えいり)を取り、お茶室の名前が英理庵(えいりあん)という名前になりまし
た。
日本語の読み方ではいかにも風流でお流儀がありそうな名前になったのですが、
捉え方で妙に変わってしまう名前でもあります。これをそのまま英語に直します
と、有名な映画のタイトルであるAlien(エイリアン)となってしまいます。
風流な遊びのお流儀をつくり出そうといす前から、なんだか雲行きが怪しくなっ
てきてしまいました。
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住み慣れた都会を離れて孫娘との生活が始まりまして、しばらく経過しました。
今まで住んでいたに都心部のにぎやかな場所での生活から一変して、いざ住んで
みて気がついてみると、とても静かな生活が始まっていたのです。
近所にショッピングモールがり、生活に便利で何も支障のない場所であるとはい
え、郊外での生活は都心部とは少々時間軸がずれるものです。日が沈んだころに
は周囲の人通りが消えて人の動きがなくなってしまうのです。
郊外のショッピングモールは自動車で来店されるお客さんが多く、自転車や徒歩
で来る人はあまりいないのです。さらに夜8時を過ぎると全てのお店が一斉に閉
店します。
昼間はたくさんの人でにぎわっているのですが、夜8時を過ぎると街はすっかり
静まり返ってしまうのです。その地域の人の動きなどは実際に住んで実感してみ
なければわからないものです。
孫娘の英理ちゃんは引っ越したばかりのときは、新しい場所での生活に舞い上が
り、それこそ毎日とても楽しく過ごしていました。
家の周囲は自然にあふれかえり、遊びに行けばいたるところに新しい発見があり、
毎日が新鮮で楽しく遊びまわっていたのですが、最近は周囲の環境に慣れてきま
して、さすがに気持ちが落ち着いてきました。
昼間は人の気配が感じられるのですが、夜は人の気配がなくなり周囲は静まり返
ってしまいます。夜も騒がしいことに慣れていた都会育ちの英理ちゃんは郊外の
生活はさみしいものだと感じたのです。
英理ちゃんは都会との違いについて感じたことを伝えてみたところ、さしがね会
長は英理ちゃんに向かって、こう言ったのです。
「さみしいといわず、閑静といえば雅があってよい。都心と違って静かな生活が
出来てよいのう。」
おじいちゃんは物静かで人が混み合わないことで快適な田舎暮らしをすっかり楽
しんでいたのです。
物静かで快適な田舎暮らしを楽しみながらお茶を楽しめる。さらに孫娘と一緒に
お茶を楽しめるとは、何よりの楽しみを見つけたものです。道具は揃っています
し、英理庵という立派なお茶室もあります。
さしがね会長はお行儀や躾に良いからと英理ちゃんをお茶室に呼び、お茶の相手
をさせることにしましたが、いざお茶の湯を始めようとしたのですが、困ったこ
とがありました。
始める早々に何を困っているのかを英理ちゃんが尋ねると、さしがね会長はお茶
のお流儀を全て忘れてしまったというのです。
「子供のうちに習っていたのですっかり忘れてしまった。」
始めた当初の調べ物や理屈に関しては一流でしたが、いざ実践となると調べもの
だけでは済みませんでした。これから何をどうしていいのか、全く思い出せない
というのです。
子供のうちに習ったものごとは忘れないものだと、英理ちゃんがお父さんやお母
さんは言っていましたとさしがね会長に伝えると、さしがね会長はこう答えまし
た。
「忘れてしまっただけだ。始めれば思い出す。」
忘れたっていうけれど何を忘れてしまったのかを聞くと、全てを忘れてしまって
いて、まず始めに使うお茶碗の中に入れる緑色の粉、あれが何なのかを忘れてし
まって、それが何かを思い出せないのでお茶が始められないというのです。
お話を聞いた英理ちゃんはそれが何なのかを思いつきまして、すぐさま近所のス
ーパーまで行きました。そこで何を探してきたのかといえば、パセリの粉末、モ
ロヘイヤの粉末、青汁の粉末、青きな粉、メロンソーダの粉といった緑色をした
粉末を見つけてまとめて買ってきたのです。
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お茶の湯を始める時点でこんな調子ですので、いざお手前となると見られたもの
ではありませんでした。
まず炉の中に炭を入れ、炭に火をつけて茶釜でお湯を沸かすことにしたのですが、
炭に火をつける作業は慣れていないと大変なのです。
火を起こす時に炉の中へ炭を山のように積み、炭に火をつけるためにうちわであ
おぎ始めたのですが、炉の中の灰が茶室に舞い上がってしまい、2人とも茶室の
中で灰を頭からかぶってしまいました。
これではお茶を飲むどころではないということで、さしがね会長は自宅の物置ま
で行きましてガスバーナーをとってきました。
これで何をするのかというとガスバーナーで炭を直接あぶり、それで炭に火をつ
けることにしたのです。ガスバーナーであぶってしまえばすぐに火がつく、これ
からは炭に火をつけるのはこの方法が良いという結論になりました。
どうにかこうにか火を起こしたので、次に道具の準備を始めました。まずは英理
ちゃんにお茶碗を取らせることにしました。お茶碗には浅いのと深いのと両方あ
るけど、どっちを取ればいいのかを尋ねると、
「深いほうがいい、どっさり粉が入るから。」
それから長い柄のひしゃくがあるので、それも取るように英理ちゃんに伝えまし
た。このひしゃくは何でこんなに長い柄がくっついているのかを尋ねると、
「遠くからでもお湯が汲めるように、柄が長くなっている。」
絹のふきんがあるのでそれもこっちへ持ってくるように英理ちゃんに伝えました。
ふきんについてさしがね会長は英理ちゃんに向かって伝えたのは、
「お茶の湯の道具は何もかも上品に出来ているから、こぼれた時には絹で拭くん
だ。」
それからお茶を入れるときにかき回すものが必要だということで、それも持って
くるように英理ちゃんに伝えました。このかき回すものが面白い恰好しているの
で、興味を持った英理ちゃんがかき回すものの名前を聞くと、
「このかき回すものの名前は、ざしきざさら、別名泡立たせともいう。」
そして、お茶の粉をすくうのに使う竹でできた耳かきみたいな棒があるので、こ
れの名前も聞きたいと英理ちゃんは尋ねましたところ、
「大仏様の耳かき、もしくはゾウの耳かきともいう。」
全ての道具についてさしがね会長が当てずっぽうに名前を付けたものです。お流
儀を作り出そうという手前から、お流儀などあったものではありません。
先ほど炭に点けた火が勢いよく燃えだしたので、五徳の上に茶釜を置いてお湯が
湧くのを待っていました。お湯が沸いたらさっそくお茶を飲ませてあげようとい
うことで、英理ちゃんはお湯が湧くのを楽しみにしていました。
最初は茶釜の中のお湯がちりんちりんといっていましたが、そのうちがばんがば
んと蓋を開けてお湯がぼこぼこを音を立てて湧き始めました。
このような音を立ててお湯が湧き始めたら、そろそろお茶を飲むための良いころ
合いだといって、素手ではふたが開けられないので絹のふきんを持って鍋のふた
を取り、長い柄のひしゃくを使ってお湯を汲みだしました。
「お茶の湯はとても熱いお湯を使うので、やけどをしないように長い柄のひしゃ
くが必要になる。覚えておくとよい。」
これから茶の湯をするときのためにと、さしがね会長は英理ちゃんにこう伝えま
した。
始めからこのような調子でお茶の湯を行っているのですからお流儀などは既に存
在していません。さしがね会長の茶の湯はとても他人に見せられるようなお茶の
湯ではありませんでした。
しかしそんなことは露も気にせずさしがね会長はお茶碗の中に英理ちゃんが先ほ
ど買ってきたパセリの粉末、モロヘイヤの粉末、青汁の粉末、青きな粉、メロン
ソーダの粉といった粉末を適当に選び放り込みまして、ざしきざさらを使ってか
き回し始めました。
「しばらくかき回すと泡が立つ、そうしたらお客様である英理ちゃんが飲む。お
客様にお茶を出すときはこういう段取りになっているのだ。」
しかし肝心な抹茶の粉を使っていないので、お茶碗の中のお湯はいくらかき回し
てもまったく泡を立てることなどありません。かき回しても泡が立たないことを
疑問に思ったさしがね会長は、
「うまく泡が立たないな。これはほかにも何か必要なものがあるぞ。」
泡を立たせるために何か良いものはないかと英理ちゃんは思いつき、台所から粉
せっけんを持ってきたのです。さしがね会長はこれは良いアイデアだといってお
茶碗の中に粉せっけんを入れると、先ほどとは比べ物にならないくらい、恐ろし
いほど泡が立ちました。
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お茶碗の中に泡が立ちまして、英理ちゃんがお茶の湯をするのは今日が初めてだ
からということで、さしがね会長はお茶の飲み方の見本を見せることにしました。
しかし茶碗をもっていざ口の中に含んでみると、とてもじゃないが飲めるような
代物ではありません。口の中にお茶を入れた途端、すさまじい表情を浮かべて今
にも泣き出しそうな表情になっています。
しかし英理ちゃんの手前お茶室の中で吐き出すわけにもいかず、そのお茶を涙と
ともに一緒に飲みこみました。
飲み終えてほっとすると、さしがね会長はひとこと、
「いやぁ、これは風流だ。飲み終えたときの爽快感がたまらないのう。」
その様子をみていた英理ちゃんも興味を示し、一緒になって真似をしてみること
にしたのです。英理ちゃんは飲み方を知らないので、さしがね会長にお茶の飲み
方を教わりながら試してみることにしました。
まず手前にお茶碗を引き寄せて、手元でお茶碗を3回まわす。そうするとお茶碗
の中の泡が向こう側に寄っていく。そのままにして放っておくとお茶碗の中の泡
が手前に戻ってきてしまう。向こう側に泡が寄っているうちにすばやく飲むのだ
と、さしがね会長はこう教えました。
お茶碗の中の泡が口元に来ないうちにお茶を飲む。泥棒のように泡のすきをうか
がってお茶を飲むのですねと英理ちゃんは言いました。
そしていざ口の中に含んでみると、英理ちゃんもさしがね会長と同様にすさまじ
い表情を浮かべています。
適当に選んだ様々な緑色の粉末と一緒に粉せっけんが入っているのですから、と
てもじゃないが飲めるような代物ではありません。それでもさしがね会長と同様
に涙と一緒に飲みこみまして、これは風流だとばかりにさしがね会長の真似をし
てみたのです。
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狭い空間で2人きり、とても飲めないようなまずいお茶を半ば強要されて、飲み
終えたその時の安堵感と解放感と爽快感がたまらない。これがおじいちゃんの言
う風流なのだと、さしがね会長からお茶の飲み方を教わって英理ちゃんはこう勝
手に解釈しました。
これはお茶という風流な見栄えだけではなく心理学的にもおもしろい遊びを見つ
けたと、英理ちゃんはお茶の湯をすっかり気にいってしまいました。
最初はさしがね会長に付き添われてお茶の湯の相手をしていたのですが、そのう
ち自分からお茶室に出向くようになり、お茶の湯を勝手に始めてしまうようにな
ったのです。
こっそり忍び込んではお茶道具を勝手に使う程度で済んでいましたが、今ではす
っかりお茶室を英理ちゃんに占領されてしまい、さしがね会長は強制的にお茶の
相手をさせられているのです。
ここで改めて繰り返しますが、英理庵で行われているお茶の湯は、お茶碗の中に
パセリの粉末、モロヘイヤの粉末、青汁の粉末、青きな粉、メロンソーダの粉と
いった粉末を適当に選び放り込みまして、泡を立たせるためにお茶碗の中に粉せ
っけんを入れるというお茶の湯です。
これらの粉末を混ぜ合わせるのですから、茶碗の中にはまるで化学の実験でもし
ているような恐ろしいほど泡が立った不気味な液体が出来上がるのです。そして
その後相手に半ば強制的に飲ませるのです。
こんな調子で英理ちゃんがさしがね会長を相手にお茶の湯を1週間も続けたとこ
ろ、さしがね会長はたちまちひどい下痢になってしまいました。
ひどい味のものでも1度や2度なら我慢が出来るが、毎日のように英理ちゃんの
お茶の湯の相手をさせられたのではこっちの体がたまったものではないと、さし
がね会長はこう思いました。
そこで周囲には影響力のあるさしがね会長は現役当時の会社の部下や取引先の人
間を次々に呼び出し、英理ちゃんのお茶の湯の相手をさせることにしたのです。
会社内の人間はもちろんのこと、取引先であろうとも、呼び出しがかかれば誰も
さしがね会長に逆らうことなど出来ませんでした。さしがね会長は家族以外の周
囲の人間に対してはとても厳格で冷酷な人でも有名なのです。
しかし、さしがね会長は身内にはとても甘く接することでも有名でした。特に孫
娘の英理ちゃんには生まれた時からべた惚れで、何をいたずらしようと怒ること
すらありませんでした。
お金を貯めることと孫娘を可愛がること以外、何も知らない人でしたし、孫娘も
おじいちゃんの衣を借りて図に乗り、どんどんとお流儀のない茶の湯を増長させ
ていったのでした。
現役当時の会社の部下や、取引先の人間を次々に呼び出し、英理ちゃんのお茶の
湯の相手をさせていくに従い、英理庵での茶の湯の被害者が比例して増えていき
ました。
来る人全てに英理ちゃんが立てたお茶を振る舞います。立場上逆らうことも出来
ず、半ば強制的にお茶を飲まされていく被害者達は、ひどいものを飲ませる茶の
湯があるものだと、帰り際に目を合わせてお互いに口走っていきます。
さしがね会長は毎日こんなものを飲んで、今まで良く生きていられたものだと不
思議がられ、被害者のあいだでさしがね会長は不死身なのではないかという伝説
じみた噂まで流れていく始末でした。
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そうこうして英理ちゃんがお茶の湯を続けていくうちにあることで問題が起きま
した。
お茶の湯にはお茶菓子が付き物です。英理庵に呼ばれるお客様が増えていくに従
って、必然的にお茶菓子の出される量も増えていきます。
英理庵では常に高級なお茶菓子が出されてお客様に振舞われていくものですから、
月末にご贔屓のお菓子屋さんから届いたお茶菓子の請求書を見て、さしがね会長
はびっくりしてしまったのです。
もともと締まり屋で、お金に関しては細かいさしがね会長は、お茶菓子にとんで
もない代金の請求が来て、お茶の湯もいいがこうお金ばかりかかってしまっては
堪らないと、倹約家のさしがね会長は英理ちゃんに自分でお茶菓子を作らせるこ
とにしたのです。
自分でお茶菓子を作ることになり、さっそく何を作ろうかと考えましたところひ
とつお茶菓子のアイデアを思いつきました。英理ちゃんはお餅が好きなので、自
宅で餅のお菓子を作ろうと考えたのです。
以前お友達の家に遊びに行ったときに、友達の家に餅つき機があったことを思い
出しました。興味を持った英理ちゃんが餅つき機の中を見てみると、炊飯器の釜
のようなものに羽根がついていて、そこがくるくると回ることで餅をつくことを
教えてもらったのです。
そこで自分の家でも餅をついてお客さんにお茶菓子として振る舞おうと思ったの
ですが、自宅には餅つき機がありませんでした。自宅でも簡単に餅をつくことが
出来ないかと思い、たしか引っ越した時に買い換えてからまだ一度も使っていな
い洗濯機があることに気がついたのです。
洗濯層が炊飯器の釜のようになっていて底に羽根がついていますし、まだ1回も
使っていない洗濯機ならば食べ物を扱うのには良いだろうということで、洗濯機
で餅をついてみることにしたのです。
洗濯機にふかしたもち米を入れてタイマーを15分ほどかけてまわし始めました。
まわし始めて5分ほど経ったら洗濯機がうなり始めて、だんだんとおかしな音を
出すようになったと思っていたら、突然洗濯機が止まってしまったのです。
その後いくらスイッチを入れても動かなくなりまして、そこで慌てて電気屋さん
に電話をして診てもらったら、餅が洗濯機の中で絡まってしまい、動かなくなっ
てしまったのだと伝えられました。
これでは修理するにもお金がかかるのでどうにもならない。こんな使い方をされ
たのでは保障の対象にもならない。新しいのに買い替えたほうが得ですよと電気
屋さんに言われてしまいました。
最初から洗濯機を使って餅をつこうなんて考え方をせずに、お金を出して餅つき
機を買っておけば良かったと気がついても既に手遅れです。引っ越してから買っ
たばかりで一度も使われることなく、また新しい洗濯機を買う羽目になってしっ
たのです。
英理ちゃんは新品の洗濯機を壊してしまったことで自宅での餅つきが禁止になっ
てしまいまして、仕方なく他の方法を使ってお手製のお菓子を作ることにしまし
た。
近所の農協でさつまいもをひと箱買ってきてふかして皮をむきまして、すり鉢の
中に入れて黒砂糖と蜜を混ぜてガラガラとこねくり回しました。
台所にはお椀形のおちょこがありまして、お茶菓子の型にちょうどいいというこ
とでさっそく使ってみたのですが、おちょこが瀬戸物なので芋が中でべとつきま
して、逆さまにしてもうまく抜けません。
お菓子の型を抜くのに何か良い方法はないものかと考えた英理ちゃんは、物置に
芝刈り機用のエンジンオイルが置いてあったことに気がつきました。あらかじめ
型に入れる前にお椀の中にエンジンオイルをひとまわり塗っておけば、簡単に抜
き取ることが出来ます。
見栄えは黒みがかった芋ようかんのようになり、オイルで照りがかかっていて美
味しそうなのですが、それこそ食べたられるような代物ではありません。
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そろそろさしがね会長のご来光も効き目が薄くなり、会社の社員、取引先全ての
人たちが被害を受けていたのでお茶の湯のお誘いがかかってもうまくかわされて
しまうようになりました。
調子に乗って隣近所の住人にも声をかけてお茶の湯に誘っていたので周囲にも飲
ませる相手がいなくなってきたころ、タイミング良く新たにお茶を習いたいので、
いちどお手前を見せて欲しいという人が現れました。
これは珍しいことに飲みようの知らないお客人が自ら英理庵に出向いてくれたと
いうことで、英理ちゃんは大喜びでお茶の湯の準備を始め、緑色の粉をいつもの
倍の分量で使い粉せっけん入りのお茶の湯をお客人に振舞いました。
私は飲みようを知りませんのでお笑いにならないようにと、ひとことご主人であ
る英理ちゃんに告げてお茶を口にしたところ、とてもじゃないが飲めるような代
物ではありません。
ひと口含んでみたけどもその場で吐き出すわけにもいかず、とても飲める代物で
はないので口直しにと出されたお茶菓子を食べてみたのですが、オイルを塗って
あるこのお茶菓子を口にしたところ、とんでもない味がしたので2度びっくりし
てしまいました。
こんなものを飲まされたうえに、とんでもないお茶菓子まで食べさせられたので
は堪ったものではないとお客人は思いました。ちょっとおなかの具合が悪くなっ
てしまったのでお下を拝借と言いまして、お客人はそのままトイレに駆け込んだ
のです。
お客人はトイレに駆け込んでほっと一息ついたのはいいですが、お茶の湯は始ま
ったばかりでまだ終わりそうにありません。このまま英理庵から逃げ出したいの
は山々なのですがお茶室に上がり込む際に、にじり口から靴を脱いで上がってし
まったのを思い出したのでした。
お茶室のトイレは縁側を挟んで建物の奥にありました。英理庵から逃げようにも
靴が必要でして、靴を取りに行くためには英理庵の前を抜けて、英理ちゃんとい
ちど顔を合わせなければならないのです。
英理ちゃんと顔を合わせないように何とかしてこの場から逃げ出したいが、どう
やって逃げ出そうかとお客人が考えていると、トイレに窓があることに気がつい
たのです。
トイレの窓からは広い敷地に面した庭が見渡せます。庭を見まわしてみると、家
の庭木の手入れをしている植木屋の職人さん数人がいまして、ちょうど職人さん
達が休憩をしているところでした。
植木屋の職人さん達がいてくれて幸い、ここから逃げ出したいので申し訳ないけ
れど、こっそりにじり口まで行って靴をとってきてくれないかと、お客人は植木
屋さんに事情を話して頼みます。
お客人に一連の事情を話されて、休憩をとっていた植木屋さんは慣れた様子でひ
とこと、
「あぁ、またやっているな、茶の湯。」
英理庵でお茶の湯が始まると、いつものように必ず被害者が出るので、出入りを
している植木屋さんはいつも英理庵から逃げ出すためのお手伝いをしているので
した。
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【 編集後記 】
4月は大工さんのお仕事で忙しく、埼玉県内をあちこち駆け回っていたのですが、
5月に入ったら大工さん以外の仕事で忙しくなってしまいました。
世の中が一斉に休日となるゴールデンウィークも全てお仕事が入っていまして、
どこか遠くに出掛けることは出来ず、そうかといって平日も平日でお仕事が詰ま
っていたので、5月はほとんどお休みを取ることが出来ませんでした。
休みを取らないと体が疲れてきて集中力がなくなりますし、疲れが原因なのか、
ときどき腰に痛みが出るようになってしまいました。
建築現場に出て道具を持っていないとストレスがたまります。幸い6月は大工さ
んのお仕事が出ましたので、しばらくぶりに現場に戻れそうです。
6月に入っても忙しい日々が続いていますが、上手に休みを取りながらお仕事を
したいと思います。
次回の「ただ今大工修行中!」ですが、タイトルを特に決めていません。
第116号は通常通りの配信日である2009年 7月 13日の配信で予定し
ています。
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