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「読めば建築の世界が見えてくる!」メールマガジンです。家づくりにまつわるお話し、建築現場でのお話し、道具のお話しや建築の世界で起きているお話しなどをお伝えしています。

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2009/01/27

『 ただ今大工修行中! 』第110号



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        『 ただ今大工修行中! 』  第110号

                        2009年 1月 27日





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【 ごあいさつ 】



「ただ今大工修行中!」読者のみなさまこんばんは。
今号から新たに購読を始められた読者の方へ、始めまして。
ただ今大工修行中!のM・KAI(エム・カイ)と申します。

前回号での予告通り、今回号では【 奇妙建築について part5 】とい
うタイトルでのお話しにいたします。

それでは、お話しさせていただきます。




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【 奇妙建築について part5 】



世の中には建築界の巨匠が設計した、ずっと歴史に残るような“名建築”がた
くさんあります。本屋さんに立ち寄ってみれば、有名建築家が設計した建築を
巡る本が出ているくらいです。

それら歴史に残るような名建築と比較してみて、逆に世の中で表に出てこない
ような建物もあります。建っていること、そこに存在していることを忘れ去ら
れたような建物もあります。

 建築雑誌では取り扱われないような建物、
 建築の授業では出てこないような建物、
 建築の教科書には記載されないような建物、

これらの建築物について、僕は愛称を込めて「奇妙建築」と呼んでいます。



今回のお話では「奇妙建築について」取り扱っていきたいと思っています。ち
なみに「奇妙建築について」ですが、以前から僕は同じタイトルで何度かお話
しを書き続けています。

以前から読者である方であれば読まれた方もいると思いますが、お話しを知ら
ない方に向けて説明させていただきます。奇妙建築について、今までに4回の
配信をしています。



 第47号では、福島県会津若松市にある「正宗寺さざえ堂」について、

 第72号では、石川県金沢市にある「妙立寺」について、

 第79号では、京都府京都市にある「二条陣屋」について、

 第88号では、アメリカ、カリフォルニア州サンノゼにある「ウィンチェス
 ター・ミステリーハウス」について、2回連続で書いています。




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以前取り扱ってきた奇妙建築に「正宗寺さざえ堂」「妙立寺」「二条陣屋」が
あります。

これらの建物は防御や警備といった機能、もしくは巡礼といった何かしらの“
用途”があった上で奇妙なかたちになった建物でした。

どんな建物であろうと建物を建てる場合には、たいてい用途や機能が求められ
るのが普通です。

ただ、奇妙な建物の中には用途や機能といったそれらを全く無視して建てられ
ている建物もあります。



以前【 奇妙建築について part4 】にて紹介いたしました「ウィンチ
ェスター・ミステリーハウス」です。この建物は用途や機能が無く奇妙なかた
ちになっていった建物です。

「ウィンチェスター・ミステリーハウス」の女主人であるサラ・ウィンチェス
ターは、膨大な財産を費やしながら「霊のお告げ」により全く意味も無い巨大
で奇妙な建物を建てました。

この建物の中には40の寝室と2つの舞踏室を含む、およそ160の個室があ
りまして、47個の暖炉と17の煙突(2つの建設されていた形跡もあります)
お屋敷の中にキッチンは6ヶ所あり、バスルームは13ヶ所、2つの地下室が
存在します。



この建物が建てられたのは19世紀の末から20世紀初頭にかけて、アメリカ
のカリフォルニア州で建てられました。

しかし探してみると、ほぼ同じ時期、日本でも膨大な財産を費やして全く意味
も無く奇妙なかたちをした建物が建てられていたのです。その建物についてこ
れから紹介していきます。

建物の名前は「二笑亭(にしょうてい)」といいます。



ところで、ここで少しばかり余談ですが、今回のメールマガジンを書くことに
関してのお話しをします。今回のお話しを書くに当たって困った事がありまし
た。

ひとつはこの建物が建っている場所です。僕はお話しを書く場合、実際に足を
運んで取材をするのを常としているのですが、今回取り扱う建物はすでに取り
壊されていまして現存していない建物なのです。

僕はこの建物を実際に観に行ったわけでは無いのです。実際に取材する事が出
来なかったので資料を読み込み自分の想像を膨らませてお話しを書いています。



さらにもうひとつ困ったことがありました。

それは、この建物についての資料がなかなか揃わなくて、簡単に見つけられな
い事でした。僕はひとつのお話しを書くときには、それなりに資料を集めてか
らお話しを書き始めることにしています。

今回のお話しは前回のウインチェスター・ミステリーハウスと同様にあちこち
探し回って見つけてきた数少ない資料の中から選んだものを使って書いていま
す。

ネットで検索してみますと多少資料が存在するのですが、詳しい内容まで書か
れておらずこちらの建物について残されている資料が世の中にはかなり少ない
のです。

ネット検索などで出てくるお話と、僕の説明とではお話しが食い違うかもしれ
ませんが、その点をご了承ください。




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 メールマガジンおよびWebログ、相互紹介を募集しています。
 詳しくは e-mail forbizm@nifty.com までご連絡ください。

 なお懸賞系、在宅ワーク系、サイドビジネス系、出会い系、アダルト系は
 ご遠慮願います。

 発行者 M・KAI(エム・カイ)









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「二笑亭(にしょうてい)」についてお話を戻していきます。

まずはこの建物が建築されていた場所です。東京深川の繁華な商店街の一角に
実在していまして、この地域の地主であった渡辺金蔵が自ら設計し大工を指揮
して建築させた個人住宅(渡辺邸)なのです。

建物が建っていた敷地の広さは95.7坪(約315平方メートル)あり、永
代通りに面していたそうです。

敷地の表は電車通りに面し、裏は2間(約3.6m)の小路に面していたと記
録では書かれていますから、かなりの繁華街に建てられていたことが予想され
ます。

繁華街である敷地の中に、建坪67坪(221平方メートル)ほどの建物であ
ったと称されていますが、建物の詳しい大きさまではわかっていません。



どのような点で奇妙な建物なのかといいますと建物の至るところです。

最初に気になるのが建物の外観です。正面が異様なかたちをしていました。建
物の正面二階に当たる位置に配された3枚のはめ殺しの大きなガラス窓と、入
り口に置かれた鉄製の半円形の雨よけがあります。

これら材料の配置や大きさが実に奇妙でして、絵で描いて表現でもしない限り
説明がしづらく、寺院のような、神社のような、倉のような何ともつかない正
面を作り出しているのです。

正面玄関の門構えに当たる両側に大きな柱と梁が使われているのですが、それ
らに当たるであろう柱と桁にはそれぞれ全く違う太さや大きさの材料が使われ
ています。

通常ですと建物を建てるときは材料の大きさをそろえて左右対称になるように
バランスを見ながら建てられる場合が多いのですが、この建物を建てた主人は
違いました。バランス感覚などまったく無視をして建物を建てているのです。




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この建物は閉鎖的で特異な外観を持ち、当時近所では「牢」「お化け屋敷」な
どと呼ばれていたそうです。

正面玄関の格子引き違い戸をくぐり中に入るとさらに奇妙な光景が出てくるの
です。建物の内部そこいら中に奇妙な箇所が見られるのです。

まず異様な正面玄関を入ると、2階まで吹き抜ける大きなホールがありました。
大きなホールの内部には照明も無く、左側と前面に大きな浮彫(レリーフ)の
模様が置かれています。

この浮彫の形は建築主自らのデザインで「石」という字から考え出されたもの
であります。建て主はこの模様がたいそう気に入っていた様子でして、自宅で
使う風呂敷などには模様を染め抜いて使っていたそうです。

模様というよりは自宅の紋章に近かったようです。この模様がホール内部に漆
で塗られた太い柱の間に、玄関から入ったものを威圧するほどの大きさで浮彫
を使い白色で描かれていたのですから、たまげたものです。

さらに高さ4mあたりの人が届くはずもない場所に、帽子や衣装を掛ける金具
が、無秩序にしかも大量に打ちつけられていたそうです。これでは何の役にも
立たず使えない金具になってしまいます。

ホールから奥に進んだ場所には引き戸のある奇妙な細工が施された部屋があり
ます。厚いヒノキの板壁の所々の節をくり抜いて、そこに厚いガラスをはめ込
んで作られたのぞき窓が無数に作られているのです。

こののぞき窓は一体何のために作られたのか、まったく見当がつきません。



さらに奥へと進みまして建て主が生活をしていた母屋の部分に入ります。母屋
の玄関には両側に左官でつくられた壁があるのですが、その壁は黒砂糖と除虫
菊の粉末を練り込んでつくられています。

なぜこのような事をしたのかといいますと、盛夏に飛んでくる蚊や虫を遠ざけ
ようとする建主自らのアイデアなのです。

実際に効果があったのか測りかねるのですが、壁を塗っていた左官屋さんはこ
のアイデアの犠牲になって、ひどいくしゃみに襲われ両目に涙を浮かべ、苦し
みながら仕事を続けたそうです。



2階に上がると9畳の居間があります。そこには、奥行きがわずか30センチ
しかなく何も入れることの出来ない大きな押入がありました。

さらに奇妙なのは床の間です。床の間には違い棚があるのですが意図のわから
ぬ急傾斜がつけられていました。

2枚の違い棚は角度を自由に変えることが出来たのですから、この建て主は時
々傾斜を変化させて楽しんでいたのかもしれません。さらに、床の間の上には
ナイアガラの滝の写真が飾ってあったというのです。

奇妙なのはいつもそこにいるはずの居間に電燈がないことです。この建物の主
人は暗い部屋を好んでいたようでして、いつも薄暗くしていたようなのです。




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奇妙なものがたくさん存在するこの家の中にも、水回りは存在しました。ただ
これだけ奇妙なインテリアを好む主人ですから水回りもかなり奇妙なのです。

トイレはどういう考えが至ってこのようなかたちになったのか、中庭の離れに
つくられています。竹と杉皮と丸太を材料にしたもので洒落たものであるけど
も、戸の高さが腰までしかありません。

その扉は腰から下半分しかなく、上はカーテンで仕切られています。おまけに
トイレの位置がかなり奇妙でしてすべての部屋からまる見えの状態なのです。



家の中には風呂も存在しています。和洋それぞれの浴槽があるのです。それら
2つの浴槽は溝でつながっていて、どちらかの浴槽のお湯があふれると片方に
流れ込む仕組みになっていました。

ただし奇妙なことに日本の風呂場には必ず存在する流し場がないのです。この
主人はお風呂に入ってからどうやって体を洗ったのでしょうか?

昭和初期の当時ですから湯沸かし器などなく、風呂は釜で湯を沸かして入って
いました。風呂場には必ず釜の焚口が必要なのですが複雑なかたちをしていま
して釜からは煙突が伸びていました。

和洋折衷の浴槽を作らせるくらい浴槽にはかなりこだわったのですが、上に上
るほど散漫になっていきまして、通常でしたら煙突は屋根よりも高く造るので
すがこの建て主は煙突を2階にも届かないようなところで止めているのです。
意図が全くつかめません。



その他にも、裏門に出入りの邪魔になるように置かれた菱形の枠、鉄棒をずら
りと立てて作られた塀、屋根をこえてただ単に空に伸びたはしご、土蔵の中の
床から天井に伸びる昇れないはしご、など様々な仕掛けが施されています。

建物の中には使えない部屋が無数にあったり、意味不明の仕掛けがあったりと、
到底常人にとっては使いにくく理解できない気味の悪い屋敷であったというの
です。

もちろんこれだけ奇妙な家でしたので誰も一緒に住む人がなく、家族がいたの
ですが別居して建て主1人だけで生活をしていたのです。




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この奇妙な建物の建築が着工されたのは大正15年(1926年)と言われて
います。

その後10数年を費やしこの建物に住む主人の指示のもとで増築や改築を繰り
返されて建て続けられました。

建物を建てるためには図面が必要になるのですが、それらの資料が一切残って
いないのです。なぜかといいますと、全て建主の口述で伝えられ建てられてい
ったからなのです。

建物を建てるためには大工さんなど職人さんの意見を用いるのが通常なのです
が、この建て主は大工さんの意見などをもちいず、全て自説を通して建ててい
ったのです。

図面などが残されていない上に、奇妙な注文ばかり出され、現場のその日の状
況によって仕事がコロコロ変わるのですから、出入りしていた職人さん達はた
まったもんではなかったでしょう。

とうてい実行できそうにない無茶な建築が推し進められ、建て主さんは職人さ
んの意見を聞かないのですからときおり建築は中止に追い込まれました。



二笑亭の主人は周囲の迷惑も気にせず好き放題に建物を造り続けていたのです
が、昭和11年(1936年)4月24日家族の手により建築は止められまし
て、2年後の1938年(昭和13年)4月頃に取り壊されました。

建物自体が数十年も前に取り壊されているのです。現在は数少ない資料や写真
以外には何も残っていません。



ところで、奇妙なのは建物だけではありません。建物を建てた人物について調
べてみると相当に奇妙な点が目につくのです。

これだけ奇妙な建物を好き放題に建てられた人物とは、一体どのような生活を
送っていたのでしょうか?この辺りの疑問につきまして次回号にてお話を進め
ていきます。



 ここでお話しは途中になりますが、次回のメールマガジン「ただ今大工修行
 中!」へとお話しは続いていきます。

 今回のお話しの続きは“奇妙建築について Part5 2回目”として、
 2月 27日の配信となります。




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e-mail   forbizm@nifty.com
発行者   M・KAI(エム・カイ)宛てにお願いします。




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【 編集後記 】



ブログの不具合と自分の仕事の忙しさもあり、ここしばらく自分の出来事など
を気の向くままに書き記してこなかったのですが、最近余裕が出来たので以前
から登録しているmixiで日記を書き始めました。

僕のトップページです。名前はM・KAIで登録しています。
URL は http://mixi.jp/show_friend.pl?id=16875062 です。

ちなみに書かれている内容は以前ブログで書いていたことと一緒です。mix
iを閲覧できる環境が整っていましたら、ご覧になってみてください。



次回の「ただ今大工修行中!」ですが、【 奇妙建築について part5 
2回目 】引き続き奇妙な建築物についてのお話しをしていきます。

第111号は配信日を変更しまして、2009年 2月 27日の配信で予定
しています。


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