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2009/08/02

『なぜ正直者は得をするのか―「損」と「得」のジレンマ』 2009/08/02

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□ 今日の一冊 □

 書名:なぜ正直者は得をするのか―「損」と「得」のジレンマ
 著者:藤井 聡 著
 税込価格:¥777(本体:¥740)
 出版:幻冬舎
 ISBN:978-4-344-98137-9
 発行年月:2009.7

落ちていた財布をネコババするなどの利己主義者が実は損をして不幸になり、
正直者が得をして幸せになることを科学的に実証。利己主義者が正直者のふ
りをしても簡単に見透かされる心のしくみも解き明かす。

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□ 今日の書評コラム □

利己主義者は早かれ遅かれ、確実に敗北する

 この本の要旨を簡単に述べると、こうなる。私たちは利己的な存在だと言
われているが、日常生活を見るとそうでもない行動もしている。そして利己
的な行動を取る人ばかりだと社会は立ち行かなくなるが、なぜかこれまでの
ところ、社会はうまくいっている。それはなぜか?

 理由は、確かに私たちは利己的な存在ではあるが、利己だけを求めること
は自分の利益を最大化しないことを知っているだけ賢明なのである。だから
利己を捨てるという戦略を取ることで、長期的な利益を得ているのだ、とい
うお話。

 そして目の前の利益を追求しようとする賢明ではない利己主義者はやがて
滅びていくし、利己主義者が跋扈する集団があると、その集団は滅びていく。
そういうことを、歴史から心理学、あるいは文学や哲学からの引用で説明し
た一冊。そもそもが理想主義的な話にも取られかねないため、地道にロジッ
クを組み立てているのが面白い。というか、著者の真面目さを感じて好感で
きる。

 まさに、この真面目で好感度が高い、というところがポイント。うすっぺ
らい内容の本を、しかも他人のパクリでたくさん出してベストセラーになっ
ている人もいるが、そういう人はきっと長続きしないよね、というのがこの
本の主張だろう。

 面白かったのは、実験を行うのに、利己的な集団を集めないといけない、
さあ、どうする?ということ。答えは、経済学部の学生を集める、というも
の。「人間は純粋に利己的な存在なんだ」ということは、経済学のベースに
なっている「人間は合理的な選択をするものだ」ということと一緒なので、
そういう傾向があるのだという。

 これはちょっと怖い話でもある。「人間は純粋な利己主義者だ」と認識す
ることによって、「だから私も損をしないために利己的に振舞うべきだ」と
いうことになり、本来は長期的な成功モデルではない「利己主義者」にその
人がなってしまう、というのだ。

 そういえば、ネットワークビジネスとか、あるいはインターネットの怪し
げなビジネスなどのセミナーに出ると、こういう場面に直面することがある。
人間は容易にダークサイドに落ち易いのだ。

 この本はさらに、「互恵不能原理」「暴露原理」「集団淘汰原理」という
言葉を使って、一時的には得をする、利己主義者の末路を説明している。簡
単に言うと、利己主義者は他人と協力して富を育てることができず奪い合う
だけしかできず、また、どんなにうまく隠しても利己主義者であることはい
ずればれるようになっており、最後に結局は自分の周りの利益を食いつくし、
自滅してしまう、というもの。問題はそのとき、まわりの他の利己主義者も
他利主義者も一緒に滅ぼしてしまう、ということだという。

 そして小泉改革以降の日本が、この「利己主義者を前提とした社会」に変
化してしまったというのが著者の主張。私は個人的には、既に気づいている
人はたくさん居るので大丈夫、という楽観派ではあるけれども、確かに、怖
い話もたくさんある。

 社会的ジレンマの解決方法がなかなか見出せないのも、もしかしたら、人
間は利己的に振舞う存在である、という前提があったから、なのかもしれな
い。しかし幸運なことに、人間はもっと賢明で、利口だということだ。つま
り、前提そのものが間違っていて、「人間は利己的な存在だから、他利的に
振舞うのだ」ということ。

 考えて見れば、長く生き延びているヤクザの組織がなぜ仁義が厳しくて、
自由なはずのボランティア組織でどうして利権争いが起きたりするのか、そ
ういうことを考える上でのヒントになる一冊。これからの世界を生き抜く人
たちのバイブルになりそうな一冊である。

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□ 編集後記 □

 なかなか発行できずにすみませんでした。

 実は、この5月以降、同じ本関係のメールマガジンの発行人に就任しまし
たために、そちらの引継ぎで時間とエネルギーを取られていました。

 そのメルマガは下記の2誌です。ビジネス関連というよりは、もっといろ
いろな本と出版関係の情報が流れるコラム誌ですが、御興味ある方は是非、
御購読ください。

 [本]のメルマガ
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 [書評]のメルマガ
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 さて、この2つのメルマガは今年で10週年。ということで、読者を対象に
8月末にイベントを行います。

 出版社の方、書店の方など、出版関係の方が集まるパーティイベントです。
途中入退もOKですので、御興味があれば、是非、お越し下さい。

 詳細はこちらから
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

 ではまたお会いしましょう!

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