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2009/11/10

絵のない画集 第468回 糸園和三郎 鳥の壁

 絵のない画集 第468回  2009年11月10日号

 古代エジプトの文字は、動物や身の回りのものなどをかた
 どった象形文字です。その中で、鳥の形をしているのは、
 禿鷹とウズラとフクロウの三つがあります。形はみんな、
 羽を閉じた横姿で、フクロウだけは顔をこちらに向けてい
 ます。エジプト文字は、漢字とちがって表音文字で、禿鷹、
 ウズラ、フクロウは、それぞれアルファベットのA、W、
 Mに相当するそうです。どうしてそうなったのか、そのわ
 けを考えるのも楽しそうです。

   さて、今回の作品は・・・
 ──────────────────────── 
     糸園和三郎 鳥の壁
 ────────────────────────

  果てしない砂の海を旅して、あなたは古い集落の遺跡に
 たどり着く。あなたの目の前には、城砦の跡と思われる石
 の壁がある。
  壁にそって歩いていると、灰色の壁に刻まれた鳥の姿が
 見つかる。横向きになった鳥が、縦に三つ並んでいる。
  鳥はハヤブサかタカ、あるいはトビであろうか。粉をふ
 いたチョコレート色をしている。大きさは下からうえに、
 大中小となっている。父鳥、母鳥、そしてその子だろうか。
  鳥がそろって顔を向けている方には、白いクリーム色の
 壁がある。その壁にはなにもない。
  鳥たちは、灰色とクリーム色の壁の境界の縦の線に、そ
 ろって顔を向けている。

  あなたは、浮き彫りになった鳥の姿に指を触れる。壁に
 できた傷跡が鳥の形のかさぶたになった、というように、
 やさしくさわっていく。
  その時あなたは、鳥の声を聞くーー

  ーーこの壁の空白はあなたのためにある。
  ここにあなたが文字を書くのだ。それは、鳥の国の歴史
 でもいい。あなたの家族のことでも、あなたの属する組織
 がもしあれば、その隆盛と滅亡の物語でもいい・・・

   *  *  *

 1957年作
 東京国立近代美術館所蔵
http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=4394&edaban=1

 糸園和三郎(いとぞの わさぶろう)
 1911年生、2001年没

────────────────────────── 

  次回は、

 『矢橋六郎 水を飲む女』

  を予定しています。 

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