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2009/06/25

絵のない画集 第441回 辰野登恵子 Untitled 91-21

 絵のない画集 第441回  2009年6月25日号

  ドクダミの花がきれいな季節です。きれい、と言った
 十字型の小さな白い四枚の花びらは花ではなく「総包」
 というものだそうで、花は十字の真ん中から飛び出して
 いる棒に付いている黄色のツブツブです。ドクダミの名
 は「毒を矯める=直す」からきたという説があります。
 たしか子供の頃、手足の御出来に貼り付けた記憶があり
 ます。お茶に含まれる殺菌成分を「カテキン←勝て菌」
 と名づけたようなものですか。

   さて、今回の作品は・・・
 ──────────────────────── 
     辰野登恵子 Untitled 91-21
 ────────────────────────

  何かまがまがしいものが、目の前をふさいでいる、
 立ちはだかっている。
  それは黒い羽を大きく広げた大ガラス、だろうか。
  大ガラスといっても、ネヴァモアと鳴いてはいない、
 ひび割れてもいない。が、――
  よく見ると、やはりカラスのようだ、その証拠に、
 三角のくちばしがいちばん上に付いている。三角のと
 んがりの付いているあたまと、左右の羽そして尾羽が、
 四枚の黒い四角になっている。

  このカラスは、私の目の前に立ちはだかって、どう
 しようというのだ。私の運命を邪魔するつもりか・・・
  と言いながら、自分で苦笑してしまった。私には、
 だれかに邪魔されるような運命も人生もありえないの
 だから。
  私の人生がああなろうと、こうなろうと、だれも困
 りはしない。私の思い通りにならなくても、だれも怒
 らないし、喜びもしない。
  そもそも私には、人生の思惑はないし、詐欺に遭う
 ような財産も名誉もない・・・はず?
  あるかないか、自分でもよくわからない・・・。

  そうか!このカラスは、私の前に立ちはだかってい
 るのではない。私の前を進んでいるのだ。私を道案内
 してくれようとして。
  そう思うと真っ黒の色も凶兆ではなく、いっそりり
 しく、すがすがしくさえ見えてくる。
  しばらくは、この背中を導師としてついていこう。
 その向こうには、オレンジ色の光があふれているし。
 きっと、のどの渇きをいやすうまいジュースが飲める
 だろう。

       *  *  *

 1991年作
 国立国際美術館所蔵
http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=50289&edaban=1

 辰野登恵子(たつの とえこ)
 1950年生

────────────────────────── 

  次回は、

 『泰テルヲ 夜勤の帰り』

  を予定しています。 

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