2009/06/05
絵のない画集 第437回 江見絹子 作品 R
絵のない画集 第437回 2009年6月5日号 稲草の丈がだいぶん高くなりました。かんかん日照り の時には立ったまま死んだように静止していますが、 いったん風が起きると、葉先がいっせいに波打ち風の 形に動きます。田んぼのあぜ道に立って風に吹かれて いると、少年の頃の思いが浮かびます。一面の波打つ 稲草のそのうえに少女の姿が見えます。白いスカート と長い髪を風に流して、稲の葉先を飛んでいきます。 葉の先をバネにして軽やかな足つきで、飛び跳ねて。 少女のからだに重さがあるなんて、考えることもでき なかった少年の日のまぼろし・・・ さて、今回の作品は・・・ ──────────────────────── 江見絹子 作品 R ──────────────────────── めさわりのよい絵、と言いたい。 めざわり(目障り)ではなく、目触り、眼触と言い たいのです。肌触りや舌触り、とおなじように。 コバルトブルーと茶色が、焼物の表面にあるように、 無作為と思える形で塗られています。そのまわりは、 くすんだ黄緑色がぼんやりと取り囲んでいます。とこ ろどころに、うすい青と濃い青が重なっています。 茶色が裸のひとの形で、それが草の中に横たわって、 地面や草と溶けあったところ、とも見えますが、なに が描かれているのか、それを思う必要がありません。 描画技巧や描かれているものを見極める必要もあり ません。 目にやさしく、ここちよい色と形なので、めさわり がよいと言いたいのです。 この絵の色彩とかたちのやさしさは、また、料理の 味を思わせます。 といっても、色彩からの連想で、赤青白はフランス 料理で、緑赤白はイタリア料理、というようなことで はなく、めさわりのよさというのが感覚的においしい 料理につながると、言いたいのです。 どの色がどの味というわけではなく、調味料の配合 の絶妙さが、絵のここちよさ、ということです。 たとえばそれは、酒・醤油・みりんの組合せ、チー ズとにんにくとオリーブオイル、紹興酒と・・・なん でしょうか、あまりおいしいものを食べた経験がない、 あっても料理の面での探求心がないので、うまく言え ません。 うまいものを食べたいな、と思っているときに見た から、こんな感想なのか・・・ いや、そうではなく、めさわりのよさを説明したい がために、料理の話を持ち出しているのです。 どの素材やどの調味料が体にいいからとか、味覚が どうのといった分析を視覚の話に対応することはでき ないのですが、ひとことで視覚にとっておいしい絵、 と言えるものがあってもよいでしょう。 * * * 1960年作 国立国際美術館所蔵 http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=50078&edaban=1 江見絹子(えみ きぬこ) 1923年生 ────────────────────────── 次回は、 『長谷川潔 コップに挿した枯れた野花』 を予定しています。 ────────────────────────── いつもお読みいただき、ありがとうございます。 読者のみなさんの存在が、なによりの励みです。 これからもよろしくお願いいたします。 お好きな絵や、面白いと思われる絵などありましたら、 こちらから、お知らせ下さい。 http://form.mag2.com/thaitraete よろしければ取りあげさせていただこうと思います。 絵のない画集は、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ から 発行しています。 購読の登録と解除は、 http://www.mag2.com/m/0000108215.htm または、川谷香蘭のホームページ、 http://hw001.gate01.com/kko-ran/enonai/ から、お願いします。



