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2009/05/20

絵のない画集 第434回 桂ゆき(ユキ子) ゴンベとカラス

 絵のない画集 第434回 2009年5月20日号

  カラスという鳥はあまり人には好かれないようです。
 体の色と鳴声のせいでしょうか。たしかに、道ばたの
 生ゴミに群がっている黒い集団は不気味です。でも、
 それはゴミを放置するほうがわるいでしょう。むかし
 の女性で、カラスが「かぁ」と鳴いたのを「カレシが
 来た」と聞き間違えて「来てないじゃないのさ、カラ
 スのうそつき鳥!」と言った歌がありますが、これは
 りっぱな逆恨みですな。


  さて、今回の作品は・・・
 ────────────────────────
   桂ゆき(ユキ子) ゴンベとカラス
 ────────────────────────

  横長の黒い円盤を四等分したその一片が、画面の大
 部分を占めていて、それがカラスです。少し右下がり
 になって尖ったところがくちばしで、円弧の盛りあが
 りが、背中と羽でしょうか。
  下の直線辺から、二本の足が出ています。足には、
 三本の前指と一本の後指があります。
  えんどう豆のような黄色い目の中に、黒い目だまが
 あって、上のほうを向いています。
  その視線の先には、画面上端から、ほうかむりをし
 た人間の顔がのぞいています。青い着物も少し見えて
 います。
  それがゴンベさんでしょう。
  こちらも大きな目に、黒い目玉です。
  カラスとゴンベさんの視線は、画面の中で、ハッシ
 とぶつかっています。

  カラスはゴンベさんがまいたばかりの麦の粒を食べ
 に来たのですが、ゴンベさんに見つかったのです。
  このところ毎日、種をまくたび、カラスがやって来
 て、それをついばむのを知ったゴンベさんは、おこり
 ました。おまけに、うちでは赤ちゃんが風邪をひいて
 熱を出しているので、いっそう頭にきました。
  今日こそとっつかまえて絞りあげ、カラスのカーコ
 の唐揚げにして食ってやるぞ、と意気込んで畑にやっ
 て来たのでした。

  見ると、カラスが来ています。
  カラスがのっている半円形の大理石模様が畑でしょ
 うか。
  二本の足でふみつけて、ここは私の領分だからね、
 とその所有を主張しているようです。ゴンベさんが来
 ても負けないよ、と言う姿勢です。
  そんなに穀粒に執着するには、理由があります。
  それは大きな体の下のほうにいる、子ガラスの存在
 です。
  小さい船のような形の、黒い断片で表された三つの
 子供のカラスに食べさせてやらねばならないのです。
  だから、お母さんガラスは、ゴンベさんをにらんで
 いるのです。
  でも、その目つきは威嚇だけではなく、申しわけな
 さもあります。ゴンベさんがせっかくまいた種だとい
 うことがわかっているのです。
  ゴンベさんの方も、子ガラスのいることがわかると、
 とっさに出かかった声をのみこんで、およよっと言っ
 た目つきになっています。

  人間とカラスの対決の場面ではありますが、緊張と
 いうよりも、どこかほのぼのとした交感がにじみ出て
 いて楽しくなります。
  それに、よく見ると、画面の左上はしに、四個の小
 さな黒いかけらがあります。やっぱり、カラスの子は、
 三つではなく、七つでなくっちゃ、と思った作者の気
 持ちがうかがえます。  

      * * *

 1966年作
 東京国立近代美術館所蔵
http://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=4799

 桂ゆき(ユキ子)(かつら ゆき(ゆきこ))
 1913年生、1991年没

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 次回は、

 『磯辺行久 作品60−16』


 を予定しています。

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