2009/04/30
絵のない画集 第430回 斎藤義重 作品2
絵のない画集 第430回 2009年4月30日号 絵の題名についての話の続きですが、先回「もともと 画家は絵に題などつけず、いやいや命名している」と いうようなことを言ってしまいましたが、全ての人が そうだということは、まったくなくて、題名を作品の 一部として、きちんとつけている、と思われる作家も 多くあります。たとえば、パウル・クレーは作品の外 縁に必ず自筆で題名を書き入れています。その味わい のある文字は、作品の画像と一体不可分に見えます。 さて、今回の作品は・・・ ──────────────────────── 斎藤義重 作品2 ──────────────────────── ジャガイモは怒った、ハンバーガショップの厨房で。 誇り高いふたつのジャガイモは、細長い棒に切り出さ れて、ハンバーガーの添えもののフライドポテトにさ れることに、憤慨したのだ。 怒りはジャガイモを真っ赤にした。 そのあげく怒った赤いジャガイモは、ひとの頭ほど の大きさになった。 そして、 ハンバーガーの添え物なんて、いやなこった! と叫んで、ひとりの店員を両側から、はさみこんだ。 大きな赤いジャガイモにはさまれた店員は、驚きと 恐怖でまっさおになった。 そしてジャガイモは、店員をはさんだまま、そばに あったたるの中に逃げ込んだ。 店員の頭もちょうどジャガイモと同じ形だったので、 赤と濃紺の色の違いが無ければ、どちらがどちらだか わからない。 ひとばん、彼らは容器の中で静かにして過ごした。 ・・・というか、疲れてみんな眠ってしまったのだが。 次の日、目が覚めると、なんだかあたりが騒がしい。 店頭でおおぜいの人がわめいたり、戸を叩いて騒い でいるようだ。 そのうち、その騒動は厨房の中までやってきた。 鍋やフライパンがガチャガチャとひっくり返さされ ている音がする。 たるの上の方にいたジャガイモが、頭で蓋を押し上 げてみると、そこでは人間たちが争っていた。 最初は、ハンバーガーのまずさとフライドポテトの 少なさに怒った客と、従業員の間のいさかいだった。 しばらくは客の文句に対抗していた従業員だが、そ のうち自分たちの待遇の悪さを思い出したのか、客と 一緒になって、店主をつるし上げ始めたのだった。 困った店主は、警察に連絡するわ、やくざな用心棒 を呼んで来るわ・・・店は、彼等の争いでしっちゃか めっちゃかになってしまった。 たるの中から、見ていたジャガイモと店員だったが、 そのうち、荒れ狂った店主が押し寄せる暴徒に向かっ て、そのたるを蹴りつけたのだ。 蹴り出されたたるはそのまま、ごろごろと店の外に 転がり出た。 ハンバーガショップの騒動を後にして、たるはどこ までも転がって行く。 こうして、二つのジャガイモと一人のおとこのたる に入った旅が始まった。 * * * 1965年作 京都国立近代美術館所蔵 http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=156242&edaban=1 斎藤義重 (さいとう よししげ) 1904年生、2001年没 ────────────────────────── 次回は、 『秋岡美帆 ゆれるかげ』 を予定しています。 ─────────────────────────── いつもお読みいただき、ありがとうございます。 読者のみなさんの存在が、なによりの励みです。 これからもよろしくお願いいたします。 お好きな絵や、面白いと思われる絵などありましたら、 こちらから、お知らせ下さい。 よろしければ取りあげさせていただきます。 http://form.mag2.com/thaitraete 絵のない画集は、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ から 発行しています。 購読の解除は、 http://www.mag2.com/m/0000108215.htm または、 http://hw001.gate01.com/kko-ran/enonai/ から、お願いします。



