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2009/04/05

絵のない画集 第425回 バージル 家族の集まり

 絵のない画集 第425回  2009年4月5日号

  フレデリック・バージルは、南フランスの裕福な家に
 生まれ、若くして絵画の道に進みました。親は彼が薬学
 を修めることを条件に、美術学校に行くことを認めたの
 ですが、結局、薬学の修士試験には落第し、絵描きにな
 りました。美術学校ではルノワールやモネと知り合い、
 一緒にマネの絵を讃美し、彼らにアトリエを貸したりし
 て経済的に支えたのでした。1870年7月、プロイセ
 ンとの戦争が勃発すると、志願して出征しその年の11
 月28日、29歳で戦死しました。

   さて、今回の作品は・・・
 ──────────────────────── 
     バージル 家族の集まり
 ────────────────────────

  画家の家族、両親や兄弟姉妹とその配偶者たちであろう
 と思われる正装した男女が、庭のベンチや椅子、大きな木
 の下に腰をおろしたり立ったりしている。
  画面中央には、鉄棒の曲線でデザインした椅子に腰掛け
 て、こちらを振り向いたお嬢さんがいる。きれいな水色の
 スカートを大きくひろげている。
  その前の小さな丸テーブルの横には、ベンチに腰をおろ
 して遠くを眺めている父親と思われる年長者がいて、その
 横には、青いドレスを着て黒いショールを方にした婦人が、
 こちらに顔を向けている。母親であろうか。
  そのうしろには若い男が立っていて、さらにその横から
 顔をのぞかせているのは、画家本人のようだ。画面の左端
 に申し訳程度に出演している。署名のつもりだろうか。
  そのほかにも、立っている若い男女のカップルや、庭の
 端に腰をおろしているグループなどがいて、画家を含めて
 十一人の姿がある。

  遠くには、緑の野山が広がっていて、その上には白い雲
 が浮かんだ青空がある。
  人物の顔かたちは写実的に描かれていて、背景も遠くま
 でくっきりと見える。
  木の枝には豊かに葉が茂っているので、ひとびとは葉陰
 にいて、日の光はまだらに地面に落ちている。
  あかるい夏の昼間、涼しい木陰で憩う家族、そんなテー
 マだろう。
  しかし、この家族の表情は異様に硬く冷たい。家庭内不
 和や家族紛争の存在を表現しようという意図は見られない
 が。
  初見の印象を遠慮なく言わせてもらえば、バージルさん
 には因縁も恨みもないけれど、このご家族には、親しみを
 感じない。むしろ、ちょっとこわくさえある。
  実際のひとびとはちがうのだろうが、この絵に見るかぎ
 り、みなさんと親しくなりたいとは思えない。
  異様に冷たい印象なのである。

  画家の意図はどうなのだろう。
  堅く冷たい家族の肖像画を描こうと考えたわけでは、も
 ちろんあるまい。めざしたのは、陽光のもとでの人物表現
 だと思う。
  屋内の暗くとぼしい光ではなく、ゆたかな外光の中で、
 自然と釣り合う、あるいは自然と対抗できる人物表現をし
 てみたい、ということではなかったか。
  そのために人物は一人ではなく集団にしたかった。その
 方が、自然の諸要素の集合、木や地面、空や野山に対抗で
 きるから。
  そこで自分の家族を選んだのだが、みんなをいちどに庭
 に集めて長い時間ポーズをとらせるのは不可能なので、個
 別にその肖像をスケッチして大きな画面(横幅が2メート
 ル以上)に配置した(のではないか)。
  出来上がった画面の印象のかたさは、ほとんどの人物が
 一様にこちらを見つめている、そのせいかも知れない。
  家族らしい雰囲気は、ベンチに腰をおろし足を組んで横
 を向いた父親に、見られるだけである。

  当時の画壇の権威者たちの意見は、しかし、というかも
 ちろんというべきか、筆者とはちがった評価だったようで、
 1868年の国選展覧会(サロン)に、この絵は入賞した。
 画家本人は、その結果がむしろ意外だったようで、何かの
 間違いでしょう、と言ったとか。

  初見の印象にもどって、異様な感じがする、ということ
 を考えると、たとえばこんな想像になる・・・
  ちょっと画面から目を離してふたたび視線を戻すと、画
 面の人物がみんな、狐のお面をかぶっている・・・
  そんなことがあってもおかしくないような気がする絵で
 あり、そこがこの絵の面白さである。

      *  *  *

 1867年作
 オルセー美術館所蔵
 "Family Reunion also called Family Portraits"
http://www.musee-orsay.fr/en/collections/works-in-focus/painting.html?no_cache=1&zoom=1&tx_damzoom_pi1%5BshowUid%5D=1803

 フレデリック・バージル(Frederic Bazille)
 1841年生、1870年没

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  次回は、

 『ルノワール フレデリック・バージル』

  を予定しています。 

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