2008/09/10
絵のない画集 第385回 ココシュカ ポルペロー
絵のない画集 第385回 2008年9月10日号 ポルペローは、イギリス・ブリテン島の南端が大西洋の 方に出っぱった大きな岬の根元にある港町です。歴史は 古く、13世紀頃からあったと言われています。ナチ・ ヒトラーにより、退廃芸術家のラベルを貼られたオスカ ー・ココシュカは、迫害を逃れて、戦争中イギリスで暮 らしました。そのとき、各地を旅行して多くの風景画を 描いたのでした。 さて、今回の作品は・・・ ──────────────────────── ココシュカ ポルペロー ──────────────────────── 初めてこの入り江を見たときの印象は、とげとげしい、 いらだった場所・・・だった。 天気は良いし、遠くにはおおきくひろがる明るい海も あるのに、その印象はなぜだろう。 それは、多分、すぐ目の前に横たわる岩の列のせいだ。 海岸の丘の岩が海の中に細く伸びて、外海を切り隔て ている。 波と風に打たれ吹かれて、鋭くギザギザになったのだ ろうか。 手前では、二羽の海鳥が羽をひろげて、向かい合って いる。なにやら、いさかいの真っ最中の様子でもある。 しかし、本当は、いらいらとし、とげとげしいのは、 この風景を見ているわたしのせいだ。 わたしがそれらをかかえて来たのだ。 爬虫類のような視線と毒虫の吐く毒液のような言葉に 充ち満ちたビジネスの世界で疲れ果てたわたしは、気が つくと鉄道に乗っていた。 とにかくロンドンから離れて、わびしいところ、静か なところへ、との思いで列車を乗りついで、その果てに やってきたのが、この海の村だった。 入り江を見下ろす岩の上に腰をおろして、わたしは、 うつろな目で水面を眺め、波と風の音が耳に流れ込み、 流れ出て行くのにまかせている。 入り江に寄せてくるやさしい波を見ているうちに、 すこしは自分のことを冷静に見られるようになったの だろう、最初とちがって、風景から、とげとげしさが 消えた。 ゆっくりと揺れる水の表面を見ていると、白いあわが 人間の形をしてくる。 外海から、人魚たちが、泳ぎ疲れた体をやすめに来て いるのだろう。 知らず知らず、わたしはつぶやいていた・・・ 「この入り江を、わが魂の休憩所と名づけよう」、と。 * * * 1939〜40年の作 コートールド・ギャラリー所蔵(ロンドン) " Polperro " http://www.artandarchitecture.org.uk/images/gallery/0ae139c3.html?ixsid=aXM0Yy7Bffp オスカー・ココシュカ(Oscar Kokoschka) 1886年3月1日生、1980年2月22日没 ────────────────────────── 次回は、 『クレー 灰色男と海岸』 を予定しています。 ─────────────────────────── 絵のない画集は、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ から 発行しています。 購読の解除と登録は、 http://www.mag2.com/m/0000108215.htm または、 http://hw001.gate01.com/kko-ran/enonai/ から、どうぞ。 -----------------------------



