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2009/09/18

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●真景累ヶ淵・其の拾伍

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 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

  平成弐拾壱己丑年長月拾捌日 其の弐佰玖拾伍號 (2009/09/18 No295)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

●真景累ヶ淵・其の拾伍

 観音寺の道恩和尚は、兄姉の敵討ちのために、還俗した惣吉に小遣いを与
え、音助に出発の用意をさせて、惣吉を送り出します。五日目に羽生村へ帰
って来た惣吉は、土手の下で一人暮らしをしている多助のところへ参ります。

多助「大きくなったねえ。お袋様は小金原で殺され、お前様は坊様になった
  と聞いていたが、良く来て下せぇやした。」

 惣吉は、新吉・お賤夫婦、お熊尼の懺悔と、三人とも自害した事を告げ、
村の者が集まって因果塚を建立したことを話します。隠れて泥棒をしている
安田一角には、同類も多かろうと、多助と惣吉は江戸へ行き、花車をたずね
てこの話しをします。義に依っての頼みに、花車の師匠、源氏山も得心し、
めでたく出立ちいたし、日を経て五助街道へかかりましたのが、十月の半ば、
もう日暮れ近く、空はどんよりと雲っております。三人が藤ヶ崎の明神山を
登ってまいりますと、破れ果てたる社殿が有り、石の玉垣(※)が見え、五、
六本の高い木のあるところでたき火をしている様子ゆえ、あすこが隠れ家で
はないかと思いながら、脇の方を見ると、白いモノが動いております。三人
がかの白いモノの所へ近づいてみますと、大杉の根元に一人の僧が素っ裸に
されて、縛られていまして、脇の方に笠が投げ出してあります。

花車「おい、多助さん。坊様だが、泥棒に縛られて災難に逢わしゃったと見
  え、素っ裸だ。」
僧「はい、災難に逢いました。馬方がここが近いからと言うて、ここを抜け
 てまいりますと、悪漢が出ましたものじゃから、馬方は馬を放り出して逃
 げてしまう。私は大勢に取り巻かれて着物をはがれ、この木の根方へ縛り
 つけられました。お前さんたちも、先へ行くと大勢ではがれるから、後へ
 お帰りなさい。」
花「なにしろ、縄を解いてあげましょう。あなたはどこの人だえ?」
僧「私は藤心村の観音寺の道恩と言うものです。」

 と、聞くより、惣吉は駆け寄り。
惣吉「え、旦那様か、とんだ目にお逢いなされました。」
僧「おおおお、宗観か、お前、この山へ敵討ちに来たか。」
花「なににしても、風邪をひくといけないから、私の合羽に、多助さんの羽
 織を和尚にお貸し申そう。多助さん、人家のある所まで、和尚様を送って
 あげなさい。」
多助「俺はここまで来て、仇も討たずに後へ引き返すのか。なんだって、こ
  の坊様は、おっ縛られいたんだなぁ。」

 ブツブツ言いながら、山を下りると、木立の間から二人の悪者が出て参り。
悪者「手前たちは何だ?」
花「わしは花車と言う相撲取りでございますが、安田一角先生がここにいな
 さる事を聞いて来た。尋常にこの惣吉さんの兄さんの仇と名乗って下せい。
 わしは義によって助太刀をしにまいったものだから、何十人でも相手にな
 るから、出ておくんなせい。」

 悪者どもは、かねて先生から話しのあった相撲取りは、こいつだと思いま
したので、すぐに一角に告げる。
一角「手前たち、先へ出て腕前を見せてやれ。」
 と、言われ、四人ほどそこへ出ましたが、怖いと見えて、斬りかかってこ
ない。花車は傍らにあった杉の木をモリモリと捻りきって、杉の幹を振り回
し、二人を叩き倒す。一人が逃げにかかるところを踏み込んでぶっ倒す。一
人が林の中へ逃げますから、後を追ってまいると、安田一角が種子島(※)
を持って、花車に突きつけました。

花「手前も立派な侍じゃないか、飛び道具を持つとは卑怯だ。」
 花車は進むも退くも出来ず、進退窮まる。多助は、かの道恩を送っていき、
いきせき切って帰って来ましたが、この様を見て震えております。すると、
天の助けでございます。時雨空の癖として、今まで晴れていたのが俄に、車
軸を流すばかりの雨になりました。木の葉にたまった雨水が、ダラダラと落
ちて、一角の火縄に当たり、火が消えたから、一角は驚いて逃げにかかる。
花車は火が消えれば百人力と飛び込んで、一角を無茶苦茶に打ち据えました。
これを見た悪者は、花車の勢いに驚いて、木立の間に逃げ込む。惣吉と多助
は走りより、兄さん、姉さんの仇と、二人で無茶苦茶に突き、一角の息が止
まると、二人ともペタペタと座って口がきけません。村方の名主へ訴え、取
り調べると、全く兄姉の仇討ちに相違なく、花車は江戸へ帰り、惣吉は十六
歳の時に名主となり、惣右衛門の名を相続し、多助を後見といたしました。

 花車が手玉にいたしました石へ花車と彫りつけ、これを花車石と申しまし
て、今に下総の法恩寺中に残りおりまする。これでまずめでたく累ヶ淵のお
話は終わりました。



●能書き

玉垣=神社などの周囲に設ける垣。
種子島=火縄銃。



●跋

 全十五週に渡り、真景累ヶ淵をダイジェストでお届けいたしました。いか
がでしたでしょうか?お楽しみいただけましたでしょうか?「面白かった」
と言うメールを頂けたら、来年は「怪談乳房榎」を・・・なんて公言して大
丈夫だろうか。ご意見・ご感想、お待ちしております。頂いたメールは、お
断りのない限り、メルマガの中で紹介させていただく場合がありますので、
よろしければ、HNを。江戸時代、あこがれます・・・

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