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日本再発見!チョイト小粋なダイジェスト落語と江戸のオモシロいお話しを雑談ふうに語ります。

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2009/05/12

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●つよがり


━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

  平成弐拾壱己丑年皐月拾弐日 其の弐佰陸拾弐號 (2009/05/12 No262)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 金も暇もある若旦那
    この若旦那は 何に手を出して 騒動を起こすのかな

●つよがり

三孝「向こうから若旦那が来たぞ、一八、声を掛けてみな。」
一八「今日は、若旦那。」
若旦那「この節では、若旦那を廃して、弓馬槍剣(きゅうばそうけん)の道
   を勉強して、国のために力をつくそうと思っている。」
三「どのくらいお稽古をなすったんで?」
若「丁度、三廻り(三週間)。」
三「温泉でも行くようだね、二廻り三廻りで、腕が決まりますか。」
若「この間も秋葉の原を真の闇に歩くと、目の前に黒いものがツカツカ進ん
 できたから、その怪物の腕を取ってドーンと向こうへ・・・」
三「投げたんですか。」
若「私が投げられた。」
三「三廻り稽古した腕前でしょ?」
若「上には上があるもので、向こうは夜回り(四廻り)。」
三「冗談言っちゃいけません。」

若「おい、桜川三孝さん。この鉄扇は南蛮鉄で十三貫二百目(約53Kg)あり
 ます。これを片手正眼につけると、私の体が見えまい。」
三孝「良く見えます。」
若「これでどうだ(踊る)。」
三「踊りを踊っても、良く見えます。」
若「それじゃ、こう扇を開いて、顔を隠せば見えまい。」
三「それじゃ、誰だって隠れちまいます。」

若「私が先だって、堀の内に行った時、淀橋にて二人を投げたのを君らは知
 らんか。」
三「また、あなたが投げられたんでは?」
若「どっこい、かかってきた二人の男を東西へ投げた。」
三「へぇ、年寄りですか、若い人ですか?」
若「三つに四つ。」
三「それは子供で。」

若「一八、この扇で私を打ってごらん。」
一「殴ってもよろしいんですか?」
若「ああ、腕前が違うから殴れまい。」
一「いくら体を動かしても、そーら、ポカリ!!」
若「頭へズーンと来た、目がグラグラ回った。」
一「へへ、ご免なさい。弾みで行きました。」

若「いや、流儀の中にあるんだ、頭で受け止めるのは。私の胸ぐらを取れる
 ものなら、取ってごらん。そうやって、胸ぐらを取ったところへ、私が指
 を二本かけると・・・ほら・・・これ・・・放さんか!おのれ、放さんの
 なら、バリバリバリ(引っ掻く)。」
一「引っ掻いちゃ、痛いや。これは何てぇ流儀で?」
若「甲州の野猿流(やえんりゅう)。いよいよの時は食い付く。」
一「ひどいもんですね。」

若「今度は本当の『活』をお見せしよう。死んでいる人の、脇骨あたりに、
 ウンと活を入れると、息を吹き返すのだ。」
三「活を入れると、きっと生き返りますか?」
若「上手く行く時と、行かない時がある。」
三「けんのんだね。」
若「生きない時はそれまでの事。弔いは仏の遺言次第に。」
三「心細い術で。」
若「さあ、両人とも遠慮をするな。」
三「遠慮はしませんが、引っ掻いたり、食い付いたりするお腕前では。」

若「そのカゴの中に入っているのは何だ?」
三「これはコマネズミで、七円五十銭で買った黒毛の変わり物でげす。」
若「ネズミでも人間でも同じだ。一匹貸してみろ、私が手の内につかめば、
 一握り。」
三「だれでも、一握りです。」
若「こう、うんと力を入れて手を開けると、死んでいる。おや、駆けだした、
 もう一度握って・・・うんと握れば動かなくなる。この動かなくなったネ
 ズミに、矢声もろとも、やーっ!っと活を入れれば、やーっ!やーっ!」
三「動きませんね。」
若「さ、歩け、歩かない。やーっ!歩かない。いやいや、ご両人、こう歩か
 ないのは、ああ、わかった、このネズミは眠いのだろう。」



●能書き

 別題「胸肋鼠(きょうろくねずみ)」「生兵法(なまびょうほう)」。明
治期に、初代(三代)三遊亭円遊師が高座にかけた記録が残るだけの、現代
では演じられない噺です。

 なるべく、残酷にならない様に演出しましたが、原書では、ネズミの尻尾
をちぎったり、目玉が飛び出したり、血だらけになったり、けっこう「グロ」
な場面がありますし、内容も低調なので、以降、演じる方がいなかったもの
と思います。

 話中に、二廻り三廻り。それじゃ温泉だ。と言う会話がありますので、今
回は、少し強引ですが、江戸の温泉事情についてお話しします。

 世界に名だたる「日本人の入浴好き」は、日本の気候風土が影響していま
す。夏場は高温多湿になる日本では、体が汗ばむために、入浴の習慣が生ま
れます。そして、それに付随するように、浴衣や団扇などの、湯上がりに涼
を取るためのアイテムも発達しました。中央アジアや西アジアは、空気が乾
いていて、汗で体がべたつく事がないので、貴重な水を使って体を洗う必要
がなく、入浴も水浴びもほとんど発達しませんでした。東南アジアや南アメ
リカなどの国々も高温多湿ですが、常夏で「冬」と言う季節がありませんの
で、「湯に入る」と言う習慣は発達せず、水浴だけです。

 日本には、寒い季節の「冬」もあるため、水浴ですませる訳にはいかず、
通年的に利用できる「入浴」が発達したのです。日本と同じ気候帯の中国や
韓国にも、古くから、湯や水を浴びて体を洗う習慣はありましたが、日本ほ
ど「入浴文化」は発展しませんでした。これは、日本が世界有数の火山列島
だった事が要因です。火山の副産物として、温泉が湧き出ます。現在の日本
で、温泉法によって認定されている温泉は二千八百を越え、温泉を有する国
々の中で、けたはずれに多くの温泉が日本に集中しているのです。

 昔は「人が浸れるくらいの量の湯を沸かす」と言う行為が容易ではなかっ
たため、温泉は、そこへ行けばいつでもたっぷりの湯に浸れる、と言う便利
さがあります。そんな温泉が、徒歩でも一日以内で行ける場所にあれば、人
々は温泉に行くようになります。それが日本人を風呂好き、温泉好きにさせ
たのです。ましてや、温泉には、体をきれいに洗う他に、「湯治」と言う、
病気や怪我を治してくれる効能まであります。ドイツのバーデンバーデンや、
フランスのエビアンなどにも、湯治のための温泉がありますが、水着を着て、
水中歩行をする、と言った、日本人の入浴とは異なった湯治です。見ず知ら
ずの老若男女が裸になって(江戸期までは混浴が当たり前)、一つの温泉に
浸る、と言う文化は、外国ではほとんど発達しませんでした。

 江戸時代の湯治は、徒歩で温泉まで行くのですから、一泊や二泊で帰るこ
とはありません。何日も温泉宿に逗留して、朝昼晩と温泉に浸かります。湯
七日、湯十日は当たり前で、七日間の逗留を、今回のお噺にある様に「一廻
り」と呼び、温泉に行けば「三廻り」するお客が多かったと言います。幕末
の有馬温泉では、入浴料、宿泊費、食費、雑費を含めて、三廻りで三両(現
代価格約四十五万円)かかりました。長逗留の宿では、食事は自炊ですし、
見知らぬ同士が一つの部屋で寝泊まりします。みんなが打ち解けてくれば、
質素ではありますが郷土料理を出しあったり、お酒を呑んで、お国自慢の民
謡や踊りを披露しあうなどのコミュニケーションも生まれ、楽しい時間が過
ごせたのです。



●跋

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 前号の人形買いにつきまして、「神宮皇后」ではなく「神功皇后」と、誤
字の指摘をしてくださいました、上方落語大好き人間様、ありがとうござい
ました。指摘されて読み返してみましたが、そのとおりで、神宮じゃ、神様
がお住まいになっている宮殿になっちゃいますよね。ワープロで「じんぐう」
と入力し、変換された漢字を、よく確認しないまま使ってしまいました。読
者様からのご指摘、ご質問は、戯作者としても嬉しい限りですので、皆様、
どんどん突っ込みを入れてください。

 「神様が地球を作って、七日目に休んだ」と言う西洋の迷信に基づき、七
日を一週間として、週末の同じ日にみんながいっせいに休みを取る、と言う、
現代社会のルールが出来上がる以前の江戸時代でも、温泉では七日間を基本
単位としていたのですね。ちょっと不思議な感じがします。けど、この日曜
日にいっせいに休むと言う習慣は、なんとかならないのでしょうか?日曜日
はどこへ行っても満員で・・・江戸には、曜日と言う考えはありませんから、
各自が休みたい日が休日。観光地でも、行楽地でも、名所・旧跡でも、特定
の日だけ混雑すると言う様な異常事態はありませんでした。ご意見・ご感想、
お待ちしております。頂いたメールは、お断りのない限り、メルマガの中で
紹介させていただく場合がありますので、よろしければ、HNを。江戸時代、
あこがれます・・・

━━は━ん━も━と━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■お話:落語とお江戸のフリーライター・福々亭 笑助(千葉落語同好会)
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