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日本再発見!チョイト小粋なダイジェスト落語と江戸のオモシロいお話しを雑談ふうに語ります。

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2009/04/07

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●楊貴妃


━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

  平成弐拾壱己丑年卯月漆日 其の弐佰伍拾漆號 (2009/04/07 No257)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 在天願作比翼鳥   天にあっては願わくは比翼の鳥となり
  在地願為連理枝   地にあっては願わくは連理の枝とならん

●楊貴妃

 所は中国、時は唐の時代、時の帝が玄宗皇帝。広い領土を治めていた大王
ですから、その奥方の数も一人や二人じゃない。なんとその数三千人、いわ
ゆる後宮(こうきゅう)三千人と申します。これだけ大勢いたんじゃ、名前
なんて覚えきれない、玄宗皇帝も番号で呼んだんでしょうな、情熱的ですぐ
燃える女は119番、盗み癖のある女は110番、スパイの疑いのある女は
007・・・

 ところが、この三千人の美女をポイッと捨てて、ぞっこん惚れ込んだ美女
が現れる、これぞかの名高き楊貴妃でございます。実は玄宗皇帝の王子の妃
だったのですが、その美貌に魅せられて、自分の妃にしてしまった。子供の
レーシングカーを取り上げる親父みたい。王子も相手が皇帝ですから、コウ
テイかなわないとあきらめた。

 玄宗に召された楊貴妃が、始めて帝にまみえた所は、都長安の郊外、驪山
(りざん)と言う温泉地の宮殿。まず温泉で体を清めます。白絹のような肌
に、温泉の湯がピチャピチャとたわむれかかる。真っ白な胸元にピチャピチ
ャ、ふくよかな乳房がぶるんぶるん、ピチャピチャ、ぶるんぶるん、いくら
やってもあきません。つやつやと磨き上げ、ドレスアップしてやって参りま
す。ニコッと笑う、そのほほえみのなまめかしい事。私がほほえんだんじゃ
そうはまいりません、今日はこらしめのために、私のほほえみをお目にかけ
ます(ニコッと笑う)、人生がつまらなくなった方が増えた事でしょう。

玄宗「そなたは琵琶の名手と聞く、ひとつ余に聞かせてくれ。」
楊貴妃「はい、つたなき技ながら。」
(指で鼻をはじいて、琵琶の音)♪炎の様に燃えようよ〜、恋をするぅなら、
恋するなぁらぁば〜
楊「中国名物、鼻琵琶でございました。」

 さあ、玄宗皇帝、すっかり楊貴妃に参ってしまって、我愛ニィ、ウォーア
イニー、おー兄ぃ、何でぇ兄弟、やくざの呼び合いみたいで・・・

 こうなると、楊貴妃の親戚の羽振りがよくなる。中には訳の分からない変
な親戚まで、おこぼれをもらいに来ます。
親戚壱「私も楊と言う苗字で、ヨウ、チエンと申します。」
親戚弐「私はヨウ、ローイン。」
親戚参「私はヨウ、ジンボウ。」
親戚肆「私はヨウ、言ウワ。」

 その中で一番の出世頭が、楊貴妃のいとこの楊国忠と言う男。町のやくざ
上がりだったのが、トントン拍子にのし上がって総理大臣。ワイロは取る、
汚職はするで、今の政治家から見るとうらやましいかぎり。こうして国の政
治は腐敗して行きますが、玄宗皇帝は楊貴妃に夢中で気がつかない。ついに、
北の守りを固めておりました、将軍安禄山が謀反を起こした。

 悪徳大臣、楊国忠の討伐を名目に兵を挙げた安禄山、十五万の軍勢を率い
手、東南西北(トンナンシャーペー)から都に向かう、対面(イトメン)の
敵ポンポンと、ハコテンコテンに攻め立てれば、白板(パイパン)、紅中
(ホンチュン)、ゾロゾロと、チョンボチョンボ逃げる政府軍、マンズ勝利
は我がものと、つもる思いを一息に、いまこそマンガンかなう時、ニコニコ
笑う大三元・・・戦争だか麻雀だか分かりません・・・

 玄宗皇帝は、楊一族を伴って都落ち、馬嵬(ばかい)と言う所まで来ると、
空腹に耐えかねた近衛兵がクウデター、何も食わないのにクウデターとは妙
な話。「みんな、あいつが悪いのよ。」と悪徳大臣楊国忠を血祭りにあげて
しまいます。老臣、高力士が血相を変えて、玄宗皇帝の元へ。

高力士「陛下、兵どもは、楊一族の命をうばいましたが、まだ騒動は静まり
   ませぬ。」
玄「なぜじゃ?!」
高「まだ、楊一族の者が一人残っていると申しております。」
玄「何?楊貴妃までも!」
楊「陛下、どうぞ、私の命をお召しくださいませ。」
 静かに両手を合わせる仏堂の前。花のかんざし、地に落ちて、誰一人拾う
者なし。その亡骸に取りすがって泣く玄宗皇帝。

高「陛下、お泣きなされますな。何もかも夢でございます。幻でございます。」
玄「幻とな。おお、そうじゃ、すべてこれ、幻想(玄宗)のなせるわざじゃ。」



●能書き

 落語作家の大野桂氏の作で、昭和四十年代、五代目柳亭痴楽師(痴楽師に
ついては、08/03/11ラブレター参照)によって高座にかけられた新作落語で
す。鼻をつまんだ琵琶の擬音や、ファンサービス(?)のために、高座から
お見せする痴楽師のほほえみなど、痴楽師ならではの個性をいかんなく発揮
している秀作です。実際にこの噺を聞いて、痴楽師のほほえみを目撃し、人
生がつまらなくなった方も大勢いたのでは???痴楽師の後継はいないのか、
痴楽師が病気で一線を退いた後、寄席でも、テレビ、ラジオでも、この噺は
聞いた事がありません。

 この噺、今から三十年以上も前に出来た噺なのに、政治家は『ワイロは取
る、汚職はする』って、ついこの間まで「西松○設」で大騒ぎしている、今
の政治家と変わりないですね。政治家って、いつまでたっても進歩しないの
か、夜明けと言われた「明治維新」以降の政府とその役人は、江戸のお役人
より優れているのでしょうか?

 今回は、楊貴妃についてお話しします。楊貴妃は、西暦にすると719年生
まれ。クレオパトラ、ヘレネ(ギリシア神話のゼウスとレダとの娘。日本で
はヘレナの代わりに小野小町。)と並ぶ世界三大美人の一人。古代中国四大
美女(楊貴妃・西施・王昭君・貂蝉)の一人ともされ、江戸でも有名人です。

 姓は楊ですが、本当の名は玉環。貴妃は皇妃としての順位を表す称号です。
今回お届けしたお噺のとおり、玄宗皇帝が寵愛しすぎたために安史の乱を引
き起こし、傾国の美女とも呼ばれます。756年7月15日、馬嵬(陝西省興平市)
で、乱の原因となった楊国忠を強く憎んでいた兵士達は、楊国忠たちを殺害
し、さらに玄宗に対して、楊貴妃を殺害することを要求します。玄宗は、
「楊貴妃は深宮にいて、楊国忠とは関係がない」と言いますが、高力士の進
言によりやむなく、楊貴妃に自殺を命じ、楊貴妃は首を吊りました。

 玄宗は後に彼女の霊を祀り、安史の乱後、長安に帰った後、改葬を命じま
すが、反対意見が多く中止となりました。しかし、玄宗は密かに部下に改葬
させ、彼女の絵を朝夕眺めていたと言います。この、楊貴妃が馬嵬で死んだ
事を題材とした中国の小噺と、それをもとに出来上がった古典落語「野ざら
し」については、04/08/01野ざらしをご覧ください。

 楊貴妃死後50年程経った、806年頃に、白居易(はくきょい。中唐の詩人。
(772〜846))が、玄宗と楊貴妃の恋物語を題材にして長編の漢詩である
『長恨歌』を作っています。前振りで書きました、『在天願作比翼鳥、在地
願為連理枝』は、その一説です。比翼の鳥とは、雄雌とも目が一つで、羽が
片側にしかなく、飛ぶときは、お互いに体を寄せて、支えあいながら飛ぶと
言う伝説上の鳥、連理の枝とは、根は別々ですが、幹と幹が連なり、一体と
なっている木の事です。ロマンチックですね。



●跋

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 ご質問のメールを下さいました「船旅大好き老人」様、ありがとうござい
ました。ご指摘のように「ぞうりを脱いだ」と言う慣用句はありませんね。
この場合は「わらじを脱いだ」と言うべきです。「ぞうりを脱いだ」と書い
たと言う落語家のR師匠とは、お酒の席で何回かご一緒させていただいてお
りますが、若いのになかなか芸熱心な師匠です。これはきっと「草鞋(わら
じ)」と「草履(ぞうり)」の漢字を、出版する時の編集者が混同して、誤
植してしまった・・・ことにしておきましょう・・・

 さてさて、四月です。前任の筆者さんに代わり、二〇〇四年四月六日に、
私が本メルマガの戯作者になって、丸五年経過。いよいよ六年目に突入とい
う事になります。これからも、「落オモ江戸風俗」どうぞご贔屓、お引き立
ての程をお願い申しあげます。それから、私、笑助に「本書け」「エッセイ
書け」「落語の解説しろ」「江戸のオモシロいお話ししろ」などなどのお仕
事ありましたら、syosuke@mbn.nifty.com までメールください。読者さん
のお知り合いに、出版、マスコミ関係の方がおりましたら、「落語と江戸に
やたら詳しいヤツがいるんだけど、使えない?」なんて、紹介してください。
筆耕、講演、解説などなど、お仕事、お待ちしております。

 ご意見・ご感想、お待ちしております。頂いたメールは、お断りのない限
り、メルマガの中で紹介させていただく場合がありますので、よろしければ、
HNを。江戸時代、あこがれます・・・

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