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日本再発見!チョイト小粋なダイジェスト落語と江戸のオモシロいお話しを雑談ふうに語ります。

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2009/04/01

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●引っ越しの夢


━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

 平成弐拾壱己丑年弥生参拾壱日 其の弐佰伍拾陸號 (2009/03/31 No256)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 三月は転勤による 引っ越しシーズンとか
    昇進 左遷 栄転 転職 悲喜こもごも

●引っ越しの夢

 昔は大店と申しまして、大きい所は五、六十人、男の奉公人がいる。そこ
へ若い女中をおくと、みんなが女中を口説く、一人や二人ならともかく、何
十人と団体で申し込まれた日には、応じられないから、女中が驚いて引き下
がると言う・・・そのうちに、慶庵(けいあん)から来ました、器量の良い
女中。海に千年、山に千年、里に千年、三千年の劫を積んで、今度の夕立に
は天上しようと言う、こんこんちきちき、のんこのしゃーで、男臭いとも思
わない。ところが店の者は、我出陣てんで、台所へ忍び込んで来る。

 一人目の男が口説くと、あっさり認めちまう。
奉公人壱「今晩、お前の所へこっそり行くが、良いかい?」
女中「まぁ、本当に来るの?」
壱「大行きですよ。大行き(雪)ダルマは、目が炭団で口が堅炭てぇくらい。」
女「じゃ、待ってるわ。」

 まず、この女は俺の方に落ちた、なんてんで、店へ帰ると「ふふふ、しめ
た。」なんてんで、アゴをなでている。ところが、他の者が行くと、こいつ
も請け負っちまう。店の者、四十人ばかり、こっちの端からこっちの端まで、
「へへへっ、しめた。」って、何が「しめた」んだか分からない。

 そんなに請け負っても、そこは心得たもので、台所の上の中二階へ女中が
寝る訳なんですが、二階へ上がると、はしごを引き上げちまう。はしごがな
ければ、上がれませんから、女中の方は安心して寝ている。ところが、若い
者は今晩、行こうてんですから、布団へ入るとカラいびき。他のやつが寝静
まったと見ると、そっと這い出す。と、後からもう一人、またもう一人。し
かたないから、みんなで厠へ行って用を足す。もう、みんな寝ただろうと、
一人這い出すと、あとから、ぞろぞろっと付いて来る。一晩のうちに、十五、
六度出たり、入ったり。こんな具合ですから、店に並ぶと、こっくりこっく
り、居眠りの競争で。そのうちに、坊ちゃんのお祝いがあり、店の者にお酒
が出る。みんなしたたかに呑んで、その場に寝ちまう。

壱「(目が覚めて)おお寒い。あれ?みんな良く寝てやがるね。みんなが寝
 ているところで、俺が一人だけ目が覚める、てのが出雲の神の引き合わせ
 だ。約束だけして行かないものだから、怒ってたね。『眠いから寝ちまう
 んだろ、お前さんは本当に不実だよ。』なんてね。あ、こりゃいけねぇ、
 この台所の障子ががたがた音がするんだ、油でも引いておきゃ良かった、
 ゲスの勘ぐりと猫の金玉は後から出るてぇが・・・真っ暗だな、たしか、
 ここにはしごが・・・無いぞ・・・ああ、小僧だ、いたずらして、はしご
 を引いちまいやがったな、宝の山に入りながら、手をむなしく帰るっての
 は、くやしいねぇ、痛てぇ!真っ暗だから、やけに頭をぶつけちまった、
 何だい、こりゃ?ああ、ねずみ入らずだ。待てよ、このねずみ入らずを手
 かがりにして、二階に上がれないこともない、ねずみ入らずに手をかけて、
 手を伸ばすと、折れ釘に手が届く。そうして、ぐーっと体を浮かして。」

 なんてんで、ねずみ入らずで、木が腐って釘がゆるんでいる、おまけに奴
さんが重いと来ている。ぶらさがる途端に、ミリミリミリ!!
壱「わっ、ねずみ入らずが落っこちて来た。ねずみ入らずを担いじゃったよ。」

奉公人弐「おお寒い。あれ?みんな良く寝てやがるね。みんなが寝ていると
    ころで、俺が一人だけ目が覚める、てのが出雲の神の引き合わせだ。
    ははぁ、台所の障子ががたがた音がするんで、開けておいてくれた。
    あれ?はしごが無いぞ。いや、はしごが無い時は、どうやって上が
    れば良いか、考えてある。このねずみ入らずに手をかけて。」

 なんてんで、片っ方が落っこちているねずみ入らず、反対の方から手をか
けて、引っ張る、途端にガタガタガタ!!!
弐「わっ、落っこちて来た。ねずみ入らず、担いじまった。」
壱「押しちゃいけない。佐吉っつぁんかい?」
弐「源兵衛さんかい?ねずみ入らず、担いじまった。どうしよう。」
壱「俺が先に担いでいるんだ。ダメだ、今、ねずみ入らずを落っことしたら、
 大騒ぎになる。このまま、朝まで担いで、権助が起きたら吊ってもらおう。」

 二人で担いでおりましたが、「重い、重い!」なんて声で、小僧が目を覚
まして、旦那を起こした。旦那が提灯を下げて台所へ来ると、二人でねずみ
入らずを担いでいる。
壱「わっ、旦那が来た!ぐーっぐーっぐっー。」
旦那「そんな物を担いで、いびきをかいている。何をやっているんだ?」
壱「へへぇ、引っ越しの夢を見たんでございます。」



●能書き

 上方落語「口入屋」を江戸に移した、とされる噺ですが、筋がだいぶ違う
し、どぎつくない、江戸風のサラリとした噺ですので、江戸オリジナルの噺
とも考えられます。

 今回は、江戸の慶庵事情について、お話しします。慶庵と言うのは、現代
で言う「職業紹介所」の事で、「口入屋(くちいれや、又はくにゅうや)」
とも呼ばれ、日本橋芳町に集まっていました。

 男性専用の慶庵と女性専用の慶庵と男女両方を扱う慶庵と、男性専用でも
斡旋先が武家屋敷専門の慶庵とがありました。かの有名な江戸の侠客「幡随
院長兵衛(ばんずいいんちょうべい)」さんも、履歴書上の職業は「慶庵」
になります。

 地方から「大江戸ドリーム」を夢見て上京(当時は、京都が都でしたから、
江戸に来る事を上京とは言いませんでしたが・・・)した方々は、江戸の慶
庵に登録しておくと、合った仕事がある場合、その奉公先を紹介をしてもら
えます。身元が定かでない方でも、品行方正、まじめ、うそいつわりないな
ど、慶庵の眼鏡にかなえば、保証人が必要な厳重な職場でも、慶庵が保証人
になって、職業を斡旋してくれましたし、職が見つかるまでは、慶庵の家に
有料で宿泊する事もできます。

 落語でも「元犬(05/03/01)」「化け物使い(06/07/25)」「百川(ももかわ
・まだお届けしていません)」など、慶庵が奉公人を斡旋している噺があり
ますね。

 慶庵は、「桂庵」「慶安」とも書き、承応年間(1652〜55)に江戸京橋の大
和慶庵と言う医者が、よく縁談の紹介をしたため、人を斡旋する仕事を桂庵
と呼ぶようになったと言います。

 慶庵から斡旋される奉公人が、今回お届けしたお噺のように女性の場合は、
「おさんどん」「おなべどん」などと呼ばれる、ご飯炊き、まかない担当が
主です。男性用の慶庵は、俗に「行きませんか」と呼ばれ、「男雇人口入所」
と書かれた紺ののれんを掲げています。入り口の所に番台があり「えんま」
と呼ばれる帳付人が「両替商越後屋の飯炊きぃ〜」「そば屋花月庵の出前持
ちぃ〜」などと奉公先を紹介すると、番台の前にいる「しゃべり」と呼ばれ
る男が二人で、面白可笑しく、仕事の内容をはやしたてながら紹介しました。


●跋

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 江戸の川柳に「てんば下女寝所に薪を一本持ち」と言うのがあります。も
し、夜中に男の奉公人が忍び込んで来たら、この薪で撃退してやろうと言う
下女の心意気ですね。けど、当時の下女は、房州(現・千葉県)相洲(現・
神奈川県)など江戸近隣出身者がほとんどです。現代では東京近辺で都会化
されているエリアですが、当時は田舎で、そこから来る女性は本当に山出し、
今回お届けしたお噺の様な美人は稀だったそうです。

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HNを。江戸時代、あこがれます・・・

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