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2008/06/10

「落語に見るオモシロ江戸風俗」 ●二十四孝

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━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

   平成弐拾戊子年水無月拾日 其の弐佰参號 (2008/06/10 No203)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 孝行をしたい時分に親は無し
  さればとて墓石(いし)に布団も着せられず

●二十四孝

 長屋の乱暴者、熊五郎。今日も親子喧嘩、夫婦喧嘩。大家が、親孝行をし
ろとお説教、親孝行をしないと、長屋を追い出すと言う。

熊五郎「うちに大きな葛籠(つづら)があるから、あの中へはばあを入れて、
   まわりに古綿でもつめて、質屋に預けよう。」
大家「お前、親孝行を何と勘違いしてるんだ?親孝行と言えば、有名なのが
  二十四孝だ。」
熊「ああ。」
大「知っているか。」
熊「知らない。」

大「知らないで、返事をするやつがあるか。もろこし、と言うから、今の中
 国だ。二十四人の親孝行な話しを集めた。そのうちから、いくつかお前に
 聞かせてやる。王祥(おうしょう)と言う方は、寒中、母親が鯉が食べた
 いと言う。釣り竿を担いで裏の池へ行ってみると、一面に氷が張っている。
 しかたがないので、裸になって、氷の上に寝て、体の暖かまりで氷を溶か
 すと、そこから鯉が飛び出したので、母親に与えた。」
熊「冗談じゃねぇ。氷が溶けりゃ、鯉より先にその野郎が池へ落っこっちま
 うだろう。」
大「それが、孝行の威徳によって天の感ずるところだ。」
熊「天が感じて、テンカンだな。テンカンなら、頭に草鞋でも乗っけりゃよ
 かったのに、腹に氷を当てたところを見ると、腹に熱があって、腸チフス
 かな。」

大「孟宗(もうそう)と言う方がいる。寒中、母親が食べたいと言う。」
熊「もろこしのはばあは、食い意地が張ってやがら。鯉が食いたい、タケノ
 コが食いたい・・・」
大「黙って聞いてろ。クワをかついで、竹藪へ行ったが、寒中の事、タケノ
 コなぞない。タケノコ無くしては、母に孝をつくせないと言って、天を仰
 いでハラハラと落涙をした。」
熊「間抜けな野郎だ、タケノコを探すなら、藪の中をにらめば良い。天をに
 らんだってタケノコなんざありゃしめぇ。あ、そいで見当違いの事をやぶ
 にらみってんだな。」
大「すると足下の雪がこんもりと高くなった。クワで払いのけると、ころあ
 いのタケノコが二本出たので、母親に与えたと言う孝行。」
熊「冗談じゃねぇや。天をにらんで涙を流しただけで、タケノコが出るんな
 ら、八百屋なんざ、藪へ行って、手放しでワーワー泣けば、タケノコがニ
 ョコニョコ出て来るだろう。」
大「寒中タケノコを得ると言うのも、孝行の威徳によって天の感ずるところ
 だ。」
熊「タケノコをばばぁに食わせたら、うめぇもんだから、ばばぁが、もっと
 くれって言ったら、もうそう(孟宗)は無ぇ、って言ったか?」

大「呉猛(ごもう)と言う方は、貧乏で夏になっても、蚊帳を吊ることが出
 来ない。なんとか、母親だけでも蚊に食わせたくないと、酒屋へ行って、
 したみと言う安い酒をもらい受けると、裸になって、自分の体へ吹き付け、
 心ある蚊なら、母を刺さずに、我を刺せと、そこへ寝た。」
熊「蚊ってぇヤツは、酒が好きなんだ。その晩、もろこし中の蚊が集まって、
 その野郎は刺し殺されたか。」
大「いや、その晩に限って、蚊が一匹も出なかった。」
熊「蚊の公休日か?」
大「蚊が出ないと言うのも、孝行の威徳によって天の感ずるところだ。」

 大家に意見された熊五郎。家へ帰ると、母親に鯉か、タケノコを食えと言
うが、川魚は臭くて嫌い、歯が悪くて、タケノコは食べられないと、却下さ
れてしまう。それなら、親孝行の始まり始まりと、体に酒を吹きかけようと
したが、吹きかけるより、体に染みこませた方が効くだろうと、ガブガブ呑
むと、酔っぱらって、そのままそこへ寝てしまった、明くる朝・・・

熊「ううん、ああ、おっかぁ、親孝行はたいしたモンだなぁ。俺が酒を呑ん
 で、すっ裸で寝たのに、ぜんぜん、蚊に食われてねぇぜ。」
母親「何言ってるんだい。あたしが夜っぴで、あおいでいたんだ。」



●能書き

 元ネタは、安永九年(1780)刊の「初登」にある「親不幸」。『親不孝者に
友達が、二十四孝では、寒中にタケノコ得、氷の中より鯉を取って親の望み
をかなえた人もある、孝行をしろと意見する。なるほどと感心して家へ帰り、
母親にタケノコを食べるかと聞くと、「この寒中にタケノコがあるか」「そ
んなら鯉を食べるか」「お前がそれだけ思ってくれるなら、甘酒を一杯飲ま
せておくれ」と言うと倅は腹を立てて「二十四孝のうちに甘酒を食らった親
があるものか」』と言うものです。

 こんな笑話をもとに、寄席落語が始まったころから、高座にかけられたと
思われる噺。江戸の寄席は、庶民に礼儀、作法、教養を教える場でもありま
した。落語の大家さん、隠居さんを通じて、わかりやすく、面白く、そして、
それとなく世の中の条理を理解させていたのです。徳川幕府は、儒教を国民
道徳の規範としましたので、教訓・説論としても、広く推奨、普及された名
作落語です。

 今回は、二十四孝事情について、五十音順にお話しします。

01王祥・本文参照

02王ホウ(おうほう)の母は雷が怖い人であったが、その死後も雷が鳴ると
王ホウは母の墓に急ぎ行った

03郭巨(かくきょ)の妻に子供が産まれた。「我が家は貧しく母の食事さえ
も足りない。子を埋めて母を養おう」と。子を連れて埋め穴掘ると、“孝行
な郭巨に天からこれを与える”と刻まれた黄金の塊(かま)が出た。

04姜詩(きょうし)と妻は、いつも長い距離を歩き、母に綺麗な水と魚を与
えた。するとある時、姜詩の家のすぐ傍に綺麗な川の水が湧き出、毎朝その
水の中に鯉がいた。

05恒(こう)は漢の文帝であるが、母の薄太后に孝行を尽くし、食事の際は
自ら毒見をする程であった。皇帝の身分で孝行を行った事は神の如き志であ
り、文帝の世は豊かになり民衆も住みやすくなった。

06黄香(こうこう)はよく仕えた。夏の暑い時には枕や椅子を団扇で扇いで
冷やし、冬の寒い時には布団が冷たいのを心配し、自分の身体で暖めた。

07黄庭堅(こうていけん)は、宋の詩人で、使用人も多く妻もいたが、自ら
母の大小便の便器を取り、汚れている時は素手で洗って母に返し、朝から夕
方まで母に仕えて怠けた事はなかった。

08呉猛・本文参照

09蔡順(さいじゅん)は母の為に桑の実を採り、熟していない物と熟した物
に分けていた。盗賊が「何故桑の実を二つに分けるのか」と尋ねた所、「熟
した物は母親に、熟していない物は自分に」と言った。盗賊も蔡順の孝行の
心を知り、米と牛の足を与えた。

10朱壽昌(しゅじゅしょう)は、七歳の時に父母が蒸発し、五十年も会えな
かった。朱壽昌は職も妻子も捨て、自らの血でお経を書いて天に祈っている
と、秦と言う所に母がいると告げられ、遂に母に会う事が出来た。

11舜(しゅん)の、父は頑固者、母はひねくれ者、弟は能無しであったが、
舜は、ひたすら孝行を続けた。舜が田を耕しに行くと、象が現れ田を耕し、
鳥が来て田の草を取り、耕すのを助けた。時の皇帝は舜の孝行に感心し、娘
を娶らせ皇帝の座を舜に譲った。

12ゼン(炎にリ)子(ぜんし)の両親は眼を患っていた、鹿の乳が眼の薬に
なるので、ゼン子は鹿の皮を身にまとい、鹿の群れに紛れて入た。猟師が間
違えてゼン子を射ようとすると「私は、親の願いを叶えたいと思いこうやっ
て鹿の格好をしているのです」と言った。

13曾参(そうしん)の母が留守番をしている所に曾参の友が訪ねて来た。母
は“急いで帰って来てくれ”と、指を噛んだ。曾参は山で薪を拾っていたが、
急に胸騒ぎがするので家に帰った。指を噛んで願ったのが、遠くの曾参に響
いたのは孝行の心だ。

14張孝(ちょうこう)と張禮(ちょうれい)の兄弟が、木の実を拾いに行っ
た所、盗賊が現れて張禮を食おうとした。「まだ母が食事をしていないので、
少しだけ時間を下さい」と言って、母親の食事を済ませて盗賊の所に戻って
来た。張孝はこれを聞いて「私の方が弟より太っています。私を食べて、弟
を助けて下さい」と言う。張禮は「これは最初の約束なので、私が食べられ
ます」と言って死を争った。

15丁蘭(ていらん)は母が亡くなると、その母の木像を作ったが、丁蘭の妻
が、母の木像の顔を火で焦がしてしまうと、木像は腫れて血が流れ、妻の髪
の毛が全て無くなってしまった。丁蘭は驚いて木像を大通りに移し、妻に三
年間詫びをさせた。すると、一夜のうちに木像は元の場所に戻った。

16田眞(でんしん)、田廣(でんこう)、田慶(でんけい)の三兄弟は、親
の財産を三等分したが、庭の木も三等分しようとすると木が枯れていた。田
真は「切られのるがいやで枯れたのであれば、人間では尚更だ」と言い切ら
ずにおくと、木はまた元の様に戻った。

17董永(とうえい)は、父が亡ったが、貧しいのでお金が無い。そこで、身
売りをしてその金で葬式をした。身請け主の所へ行こうとすると、途中で一
人の美女が「私は董永の妻となるべく、絹を織って身請け主に届け許されま
した」と言い、董永の妻となった。そして「私は天の織姫ですが、貴方の孝
行な心に感じて天が私にお命じになりました」と言うと、天に帰って行った。

18唐夫人(とうふじん)は、姑の長孫夫人に仕えていた。ある時、長孫夫人
が患い、もう長くないと思って一族を集めて「私の嫁の唐夫人の、これまで
の恩に報いたいが、今死のうとしているのが心残りである。私の子孫達よ、
唐夫人の孝行を真似るならば、必ず将来繁栄するであろう」と言った。

19閔子騫(びんしけん)、父が再婚して異母弟二人が出来た。継母は実子二
人には綿入りの着物、閔子騫には蘆の穂を入れた着物を与えた。閔子騫が寒
さに凍えているのを見て、父が継母と離縁しようと言うと閔子騫は「母上が
去られては、三人の子供は凍えます。私一人が凍えていれば、弟二人は暖か
いのでどうか離縁しないで下さい」と言った。継母はこれに感激し、以後は
実母の様に閔子騫を可愛がったという。

20孟宗・本文参照

21ユ黔婁(ゆけんろう、ゆきんろう)は南斉の人で、地方に着任して十日も
経たないうちに、胸騒ぎがし、役人を辞めて家に帰ると父親が患っていた。
医師に尋ねると、病人の便を舐めて甘く苦ければ良かろうと言うので、舐め
てみると、味が違ったので父の死を悟り、北斗七星に身代わりになる事を祈
り続けた。

22楊香(ようこう)が、父と山に行くと虎が現れ、二人を食べようとした。
楊香は父が食べられないように「どうか私だけを食べて、父は助けて下さい」
と懸命に願った所、今まで猛り狂っていた虎が尻尾を巻いて逃げた。

23陸績(りくせき)は六歳の時に袁術(えんじゅつ)から一つの蜜柑を与え
られたが、三つ取って帰ろうとして、袖から蜜柑がこぼれて、袁術に「泥棒
の様な事をするのか」と言われ「あまりに見事な蜜柑なので、持ち帰って母
に食べさせようと思いました」と言った。

24老莱子(ろうらいし)は、七十歳の年寄りになって、息子もこんな歳にな
ったのかと親が悲しむのを避けるため、子供の格好になって遊び、子供が泣
くように泣いた。

 二十四孝を読んだ江戸の浮世草紙作家井原西鶴(寛永十九年(1642)〜元禄
六年(1693))は、「もろこしには親孝行が二十四人しかいないのか。日本に
は親不孝が二十人いるが、それ以外は全員親孝行だ」と皮肉をこめて、「本
朝二十不幸」と言うお話しを書いています。02、03の話しは、落語家さんの
演出によって、落語中に取り上げられる場合もありますね。けど、03郭巨の
カマ掘りの話しですが、「きんのかま」を「金の釜」と勘違いしている方が
大勢いらっしゃるようです。子供向けの絵本でしたか、本当に金色に輝く
「ご飯を炊くお釜」を掘り出している絵を見て、吹き出してしまった事があ
ります。カマは「塊」と書きます、「きんのかま」とは、金塊の事です。



●跋

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 前号のタイトル部分につきまして、「も」の字が欠落している。と、ご指
摘下さいました、SUMITA様、ありがとうございました(話しがわから
ない方は、前号のタイトル部分を、もう一度よく見てください)。全然、気
がつきませんでした、ご指摘ありがとうございます。

 毎年、夏になると、お化けが出てくる落語を「夏のお化け噺シリーズ」と
してお届けしておりますが、今年の夏は、ちょっと趣向を変えて、「真景累
ヶ淵」か「怪談牡丹灯籠」の様な長編怪談噺をお届けしようかな、と思って
います。けど、かなりの長編なので、いくらダイジェストにしても、四週や
五週ではご紹介しきれません。そこで、読者の皆様にアンケートです。今年
の夏だけ、特別企画として、火・金の週二回発行にして、火曜日は通常どお
りの落語と江戸のお話し、金曜日は長編怪談噺を十週程度に分けてお届けす
るとしたら、読んでいただけますか?「読みます」「やってくれ」と言う読
者さんからのメールが syosuke@mbn.nifty.com に三通以上来ましたら、
特別企画実施!来なかったら、それほど要望はないのか・・・と悟り、週一
火曜日発行のままにします。

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