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日本再発見!チョイト小粋なダイジェスト落語と江戸のオモシロいお話しを雑談ふうに語ります。

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2008/05/20

「落語に見るオモシロ江戸風俗」●松引き 

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━━ら━く━ご━と━お━え━ど━の━━━━━━━━━━━━━━━━━

 3分で読める! 「落語に見るオモシロ江戸風俗」

   平成弐拾戊子年皐月弐拾日 其の弐佰號 (2008/05/20 No200)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━お━も━し━ろ━ば━な━し━━

 馬鹿につける薬はない とも 馬鹿は死ななきゃなおらない とも
    けど 馬鹿とはさみは使い様 とも

●松引き

 あるお城のお殿様、御家来の田中三太夫さんともども、大変にそそっかし
い。ところが、同類相哀れむとやらで、この三太夫さんがお殿様のたいそう
なお気に入りと言う・・・

殿様「こりゃ、三太夫。庭の築山のそばにある、梅・・・ではない、桜では
  ない、松。あれを泉水の脇へ引きたいと思うが、どうじゃ。」
三太夫「あの松は、先代の殿のご秘蔵なれば、それを引いてもし、枯れるよ
   うな事がございますと、ご先祖様を枯らすようなものと心得まする。」
殿「枯れるか、枯れぬかは、引いてみねばわからんであろう。」
三「下世話に申しますたとえに、餅屋は餅屋とか。これへ餅屋を呼んで、松
 が枯れるかどうか、とくと正してみればいかがかと。」
殿「ほう、餅屋に聞けば、松が枯れるか、枯れぬかわかるのか。」
三「餅屋と言うのは、たとえでございまして、呼ぶのは植木屋でございます。
 幸い、今日は植木屋が入っております。さっそく、手前が問い正します。」

三「これ植木屋の八五郎とやら、あの築山の杉・・・ではない、松をじゃ、
 殿が泉水の脇へ引きたいとおっしゃるが、引いたために松が枯れては一大
 事、枯れるか枯れぬか、その事を申しあげるように、御前へまかりはじけ
 ろ!言葉はぞんざいではいかん。慇懃(いんぎん)に申しあげろよ。」
八「いんげん豆をどうするんで?」
三「いんげん豆ではない、丁寧に申し上げろというのだ。」
八「申し上げたてまつります。お築山のお松様を、お泉水のおそば様へお引
 きたてまつりまして、お松様が枯れるか枯れぬかと言う仰せでござりたて
 まつりますが、手前様の方で、お松様をお掘りたてまつって、根におする
 め様をお巻きたてまつって、お引き遊ばせば、お枯れ遊ばす気遣いはござ
 りたてまつりませんと、存知たてまつりますんで・・・」

殿「さっぱりわからん。苦しゅうない、朋友と話すように申せ。」
八「ほうゆう、って何です。友達?ああ、さいで。そんなら、こっちもやり
 やすいや。ござりたてまつる抜きで、ざっくばらんにやっつけやす。こっ
 ちも商売だ、枯らすような事はしません。一月も前から、油っカスの五、
 六升も入れて、小太いところをするめで巻いて、泉水のそばへ引けば、大
 丈夫です。けっして、枯らすようなことはありません。」
殿「そうか、枯らさずに引けるか。では、その方に申しつける。その方、ど
 うじゃ、ささを食べるか?」
八「あっしは、植木屋ですが、まだ、笹っ葉は食べたことがございません。」
殿「いや、酒を呑むかと聞いておるのじゃ。」
八「酒は大好物です。」
殿「その方、一人ではあるまい。残りの職人も呼んで、酒を馳走してやれ。」

 なんてんで、植木屋を集めて、にわかのご酒宴。そこへ、三太夫さんへ、
急なお迎え。三太夫さんが、自分のお小屋へ帰ると・・・

下僕「お国表から、お飛脚でご書面が届きました。」
三「どれ、これは、変だ。何が書いてあるか、さっぱりわからん。」
下「手紙が裏返しでございます。」
三「なになに、前文ご免くだされたく候、国表において、殿様お姉上様御死
 去遊ばし・・・これは、大変なこと・・・・殿っ、恐れながら、このたび、
 お国表において、殿様お姉上様、ご死去遊ばされました!」
殿「これは、したり!姉上ご死去に植木屋を呼んで、酒宴を催していたとは、
 して、姉上は、いつ何時、亡くなられたのじゃ?」
三「そこまでは、読まずにまかりこしました。」
殿「たわけめ、そうそうに調べてまいれ。」

三「書面を持ってまいれ・・・やや、これはいかん、お国表において、貴殿
 お姉上様と書いてある!さっきは、殿様お姉上と読んでしまった。いまさ
 ら、言い訳のしようもない、この腹、かっさばいて、お詫びをするしかあ
 るまい・・・殿、誠に面目次第もございません、ただいま、小屋へ立ち帰
 りまして、書面をつくづく見ましたところ、殿様お姉上ではなく、貴殿お
 姉上としたためてありました。」
殿「何!!無礼者、他のことではないぞ、不覚千万、許しがたし、手討ちに
 いたすも刀の汚れじゃ、切腹を申しつける。」
三「早速に、小屋へ立ち帰り、切腹つかまつります。」
殿「・・・いや、三太夫、待て待て、あわてて切腹するにはおよばん。よく
 考えてみれば、余に姉はなかった。」



●能書き

 古くから、高座にかかる古典落語ですが、残念ながら、元ネタは不詳です。
けど、前半の「松を引く」部分と、後半の「姉上死去」は、最初は別々のネ
タだったものを、ひとつにつなげて演じるようになったのではないかと推測
します。

 今回は、江戸の馬鹿殿事情について、お話しします。江戸の名君と言えば、
07/09/11あくび指南の跋で書きました「上杉鷹山公」をはじめ、徳川二代将
軍秀忠の隠し子・「保科正之公」、八代将軍「徳川吉宗公」、江戸初期の岡
山藩主「池田光政公」などが上げられますが、馬鹿殿もいっぱいいました。

 長州藩主「毛利敬親(ただちか)公」は、家臣が何か進言すると「そうせ
い」としか言わないので、「そうせい公」と陰口をきかれました。幕末、家
臣に幕府討伐を進言されると「そうせい」と言って、尊皇攘夷派になり、
「幕府に従った方が良い」と言われると、「そうせい」と言って、倒幕派の
家老三人を斬首してしまい、高杉晋作に再び倒幕を持ちかけられると「そう
せい」と言って、また尊皇攘夷派になってしまい、とうとう幕府を倒す一因
となります。そして、倒幕後、家臣に「わしはいつ将軍になるんだ?」と聞
いたと言うおバカぶりです。殿様がなまじ政治内容を理解してしまうと、自
分の好き勝手に内政を動かそうとするので、面倒なことになります。そうな
らないように、回りの家臣が子供の頃から、藩の事情や政治がわからないよ
うな、バカ殿に育てるのです。

 他にもいろいろおバカなエピソードを持つお殿様がいっぱいいるのですが、
江戸での馬鹿殿と言って、まず思いつくのが、志村けんのバカ殿のモデルと
まで言われる、徳川九代将軍・家重公ではないでしょうか。「徳川実記」に
よると、家重公は「御多病にて、御言葉さわやかならざりし故、近侍の臣と
いえども聴きとり奉ること難し」と書かれ、病弱で言語障害があったと書か
れています。家重公の「言葉」を翻訳?できるのは、大岡忠光と言う側用人
だけと言う状況でした。御家来を連れて、江戸城内を散歩している家重公が、
突然何か叫びました。まわりの御家来は何を言っているのかわからず、あわ
てて、大岡忠光のところへ行くと、「それは、寒がっているご様子だから、
羽織を差し上げるように」と言う指示で、あわてて、御家来が羽織を着せる
と、満足して散歩を続けたと言いいます。また、江戸城内で釣りをしていた
家重公が、突然、釣り竿を放りだして「へさし!へさし!」と叫びました。
そばに大岡忠光はいませんでしたが、幸い「上様は『え』を『へ』と発音す
る」と言う忠光の言葉を思い出し、これは、釣りに飽きて、鳥を捕まえよう
と「餌差し(鳥もちのついた竿)」を欲しがっているのではないかと推察し
て、餌差しを渡すと、喜んで鳥を追っかけて行ったと言う、もう、処置無し
です。また、「続三王外記」によると、家重公は、歩行が困難で、首を左右
に振って歩いた、とあります。

 では、家重公の肖像画を見てください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Toku09.jpg
 両眼が内斜視を示し、眉毛を寄せて、首を前につきだしています。唇がま
がって、頬には筋肉の硬直が見られます。将軍の肖像画ですから、本人より
良く描くのが当然ですから、実際はもっと重症だったと思われます。この肖
像画や書物に書かれた記録、さまざまなエピソードから推測されるのは、家
重公は、「脳性麻痺」ではなかったかと言うことです。脳性麻痺の方には、
医学用語でアテトーゼと言われる、自分の意志とは別の部位の筋肉が動いて
しまう、不随意運動が見られます。家重公が描いたと言う書画が一点も残さ
れていないのも、アテトーゼで両手が不自由だったからではないでしょうか。

 しかし、脳性麻痺の方は、出産時の障害で、運動神経にダメージを受けて
も、知能は正常なのです。家重公は、将棋が得意だったと言いますから、正
常な判断は出来たと思われます。ただ、言語障害のために、自分の考えを他
人に正確に伝えられなかったため、バカ殿呼ばわりされたのです。

 その他、四代将軍・家綱公は、敬親公と同じく「そうせい様」と呼ばれ、
発達障害が推測されます。五代将軍・綱吉公は、パラノイア(偏執狂)が疑
われ、十三代・家定公もアテトーゼと見られる麻痺症状があります。しかし、
幕府は障害者を排除せず、将軍の座につけました。障害者を差別することな
く、受け入れたことは、世界史的に見ても、特筆すべきことだと思います。

 

●跋

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 落語では、すっかりお馴染みの「田中三太夫」さんですが、頑固で融通が
きかず、それがかえってユーモアを醸し出す、田舎侍の見本みたいな、おじ
いさんで、落語ワールドの名脇役ですよね。今回お届けした、三太夫さん、
落語家さんの演出にもよるのですが、御前に出ることを「まかりはじけろ」
と言います。これは、仙台弁なので、この噺の三太夫さんは、仙台出身と言
うことになり、そそっかしいお殿様は、仙台公!?伊達政宗公の子孫と言う
ことになります。

 ここで江戸時代クイズ其の参拾伍です。徳川将軍は「公方(くぼう)様」
と呼ばれましたが、庶民が、何々公方と、ちょっと皮肉って呼んだ将軍がい
ます。では、次の将軍達は、それぞれ何公方と呼ばれたのか、選んでみてく
ださい。
 壱  五代綱吉公   伊 鷹公方
 弐  八代吉宗公   呂 小便公方
 参  九代家重公   波 芋公方
 肆 十三代家定公   仁 犬公方

 さて、このメルマガもとうとう二百号です。平成十六年四月に、私がこの
メルマガの筆者になった時、「まあ、二百回書けば義理ははたせるかな」と
思いました。最初は十日に一回だった発行が、途中で週刊になり、その当初
目的の二百号に到達しました。けど、まだまだお話しすることはいっぱいあ
ります、読者様のご要望が続き、私が車にはねられる!などのアクシデント
が無い限り、最低、四百回は続けたいと思っています。で!!こんな落語の
能書きと、江戸のうんちく、もうも二百回も書いているんですよ。このメル
マガを本にしてくれる出版社さん、いませんか!?私の能書きとうんちく、
買ってくれる雇用主さん、いませんか!?いらっしゃいましたら、
 syosuke@mbn.nifty.com までメールください。お待ちしております。
ご意見・ご感想、お待ちしております。頂いたメールは、お断りのない限り、
メルマガの中で紹介させていただく場合がありますので、よろしければ、H
Nを。江戸時代、あこがれます・・・

━━は━ん━も━と━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■お話:千葉落語同好会 福々亭 笑助
■ご意見・ご感想は syosuke@mbn.nifty.com
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■発行元 :マンモス通信 info@manmos.tv
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