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2007/02/03

四万十通信 253

(四万十通信)253

 大野晃教授の地下足袋に・・・

         (原 剛:「農から環境を考える」(集英社新書)より)
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■衰退するスギ山集落

  大野晃教授の地下足袋に踏まれて、林床の落枝、落葉がポキポキ、
パリパリと乾いた音をたてた。

 山並重量たる四国山地の谷あいに、平家の落人集落がひそむ高知
県長岡郡大豊町奥大田。南国土佐の、まばゆい夏の陽もスギ林には、
ほとんどさしこまない。陰気で暗く、生き物の気配すらない。
  
 隣り合うクヌギ、カシの広葉樹の森に踏み込む。足元は分厚い腐
葉土に音もなく包まれ地下足袋の指先にたちまち水がにじんでくる。

 スギの植林地の向こうには、息詰まる光景があった。放棄された
畑が連なり、廃屋群がスギ木立にのみこまれつつある。

  
 伸び伸びる 床突き抜けて 孟宗の
     人去りし廃屋(いえ) むら絶えし山村(やま)

  
 高知大学文学部(94年当時)大野晃さんの短歌に危機感がにじ
む。戦時中に伐採された山林を緑化しようと、林野庁は膨大な補助
金をあて、生長が早く加工しやすい、高値のつくスギ、ヒノキを全
国で一斉に植林するよう指導してきた。

 とくに高度経済成長策がとられた1960〜70年代には、広葉
樹の天然林を大面積で切り払い、スギ、ヒノキを植える「拡大一斉
造林」が行われた。

 いま日本の森林約2,500万ヘクタールのうち約1,000万
ヘクタールがスギ、ヒノキの植林地だ。世界でもまれな画一的で、
地方収穫型の森林モノカルチャー(単一種の栽培)である。

 65年に木材輸入が自由化されてからは、安価な外国産材に市場
を奪われ、日本の林業と山村は再起の見通しすら立てられない。
  
 60年に1万8,000人だった大豊町の人口は、90年に
7,700人に半減した。65歳以上の高齢者の比率は、9.7%
から33%へ。2,005年には52.8%と人類史上前例のない
超高齢化社会になる。

 すでに高齢者が平均して23%に達している日本の山村にとり、
大豊町のたたずまいは他人事ではない。

 防犯防災の協力も、道普請、水路維持の共同作業も祭りも、でき
なくなり、集落は消えていく。都会の過密の裏側の光景である。


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【編集・発行】 四万十通信ネットワーク
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