TRANQUE −夢と病気と恋愛事情− RSSを登録する

バイセクシャルで元精神障害者の佐藤充範がマイノリティな生活の実情を語ります。自己検閲無しで書くので若干アブナイ部分もあるかもしれませんが、日々生き難さを感じる方、心の病に悩む方、また興味本位の方も是非お試しください。

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2008/10/15

TRANQUE 第83号

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 TRANQUE                       第83号

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ご購読ありがとうございます。

今回も発行が遅れてしまいました。すみません。
前回、「次号は9月中」と言いましたが、本当は9月上旬には配信するつもり
でした。
それが、またまた予想外の事が色々と有り、ここまで延びてしまいました。

言い訳ついでに理由を言うと、8月下旬からちょっと身体の具合が悪くなって
一週間以上何もできなかったこと、その後PCがトラブって処置に数日かかっ
たこと、9月中旬から仕事が一つ増えて時間が無くなったこと、などで、メル
マガがなかなか書き進められなかったのです。

今後についてですが、先ずは年内に必ず一度発行します。
それで、来年からは月刊配信に戻して、新しい連載も追加します。
その内容の予告は次号でします。
ということなので、これからも是非お付き合いくださいますよう、何卒お願い
致します。

--
またブログ始めました→ http://noveltreacle.blogspot.com/
ホームページはここです→ http://www.geocities.jp/noveltreacle/

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最近の事

・違い
女にバカにされたりナメられたりしても、多少ムカつくことはあるにせよ割と
気にしないでいられて、時と場合と相手によっては喜びさえ感じてしまうの
に、男に同じ事をされるとかなり頭にくるのは何故だろう。
俺は性別によって人を差別(区別すら)していないつもりだ。一体何が違うの
か。
ただ、女性(生物学的のというより寧ろ社会的な性の)に対してしか感じない
感覚、あるいは男に対してしか感じない感覚、というのは有る。でもそれは俺
自身の問題ではなくて、相手がどういうスタンスで俺に接しているかによっ
て、俺が感じ取っているものだろうと思う。
故に恐らく、俺を蔑むそういう人が、俺に対して仮令僅かでも愛(人間愛)が
有るか、敵意や嫌悪感しか無いか、によって俺がその蔑みを受け入れるか拒絶
するか、ということなのではないだろうか。
しかし女は愛情を、男は憎しみを抱き易い動物だ、などとは思えない。
きっと俺個人に対する、相手個人の態度に、たまたま性別による傾向が有った
のだろう。
考えてみると、俺の周りにいる、俺に愛情を抱いてくれている(と俺が感じら
れる)男達が俺をバカにするような事をしても、俺は大して怒りは感じない。
やはりそういう事だ。性別の違いではない事がまた一つ証明された。

・ボケ
部屋で、携帯電話が見当たらなくなった。何処へ置いたか全く思い出せない。
探すために固定電話から携帯番号にかけたが着信音が鳴らず、電源が入ってい
ないか電波が届かないかとかで留守電サービスにつながってしまう。そんな筈
はないのでまたかけてみるが、同じだ。何度もやってから、ようやく、番号を
間違えていたことに気付いた。正しい番号にかけ直してみたら、携帯電話は目
の前の机の上で鳴った。
大事な書類が無くなった。本棚やファイルの間や箱の中やあちこち探したが
何処にも無い。また作り直しかとがっくりきて視線を落としたらゴミ箱の中に
捨ててあるのが見えた。そういえばさっき何かをゴミ箱に入れたな、と自分で
やったことを思い出した。
コーヒーを飲もうと思ってカップを持ってきたのに、気付いたら、その横に
置いてあったグラスの方にコーヒーを入れていた。
何かをしようと思って立ち上がった途端、何をしようとしたか忘れる。
そういう事がこのごろ数え切れないほど有る。これは危なくないだろうか。

・料理
俺は料理ができない。
米を炊飯器で炊くことはできる。パスタを鍋で茹でることはできる。食パンを
トースターで焼くことはできる。レトルト食品を温めるとか缶詰を開けるとか
加工食品を電子レンジにかけるとか、そういうこともできる。
だが材料を用意して調理するということができない。
そのくせ舌が肥えているから(多分バブルの時期に贅沢な食生活を続けたせい
で)、どうしても外食をしたり宅配を頼んだりすることが多くなる。
だから、料理ができる人を俺は尊敬するし、料理ができるということが、俺が
恋愛感情を抱く大きなポイントにさえなっている。
昔、料理の腕がプロ級(実家は和食屋さんだった)の女性と付き合ったことが
ある。喧嘩してどんなに腹が立っても、美味い料理を作って出されたら、もう
何もかも許す気持ちになったものだった。ワケ有って結果的には別れてしまっ
たが、彼女の料理の腕が、俺を長い間彼女から離れられなくしていた要素で
あったのは確かだ。
今は残念ながら、できたての美味い手料理を食わせてくれる人が身近にいな
い。食費が嵩んでしかたない。

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過去の話

 ノリコ

--- 前号からの続き
(81号の内容 http://www.geocities.jp/noveltreacle/tranque81.html )
(82号の内容 http://www.geocities.jp/noveltreacle/tranque82.html )

文化祭バンドの練習に明け暮れた夏休みが終わり、メンバーの演奏もかなり
まとまってきた二学期の或る日、ノリコに誘われて俺は彼女の家に遊びに行っ
た。
家族が皆出かけてしまって家に誰もいなかった日曜日にノリコは俺を招いたの
だが、俺はそれを全く偶然のこととしか思っていなかった。だから彼女の部屋
で普段通りの会話をしながら、レコードを聴いたり彼女にピアノを弾いて貰っ
たり二人で雑誌を眺めたりして遊んでいる時に、不意に彼女が発した言葉に、
俺は驚いたのだった。
ノリコはなんとその日、俺に抱いて欲しいと言ったのだ。
今にして思えば、そんな事はとっくに察していなければおかしいのだけれど、
当時の俺にとっては、ノリコが実際に俺に身体を許すなど、ある筈のない、否
あってはいけない事だったのである。

俺は混乱した。こういう状況を俺は期待してはいなかった。自分がノリコを
恋愛の対象として本気で好きになっていることは、その頃は既に明白だったけ
れども、彼女を「抱く」ことは、別に実現しなくても構わなかったのだ。
それに俺は上手くやれる自信も無かった。この時までに女性との経験は、ジョ
ニーを通じて知り合った涼子さんという五歳年上の人とのたった一度だけで
あった。涼子さんとの行為で学んだ事は多かったとは言え、まだ二回目なのに
相手が処女、つまり相手にリードして貰えないというのは、とても不安であっ
た。
しかしノリコはもう決意している。彼女に恥をかかせるわけには行かない。
コンドームは以前鞄に入れておいたのがそのまま入っていた。
やるしかなかった。

ベッドに入った時は、外はまだ日が暮れる前で、二階のノリコの部屋は明かり
を消してカーテンを閉めてもあまり暗くはならなかった。
ノリコは多少恥ずかしそうではあったが然程緊張はしていないように見えた。
その様子から、安心して俺に身を任せてくれているのだろうか、などと思って
俺の方にはプレッシャーがかかったが、彼女が時々くすぐったがって小さく
悲鳴を上げたり笑ったりする声を聞いているうち、俺もリラックスし、そして
興奮もしてきたのだった。
ノリコとのキスは、それまでに交わしたことのある誰ともまた違った感じだっ
た。涼子さんとも似ていない。経験はまだ数人だけではあったが、俺はこの
時、これは女はこうで男はこうだということはなく、一人一人が違うのだなと
思った。

事が済んでからノリコは、初めての相手は俺にしようと実はかなり前から決め
ていたのだと明かした。それから、やっぱり俺を選んで良かった、思った通り
だったと言ってくれた。
俺はほっとしたのと同時に、彼女への感謝の気持ちやいとおしさ、彼女を放し
たくないという自分の思いなど、様々な感情が込み上げ、何も言えずただ彼女
を抱き締めた。

そんな事があった後はやはり、俺とノリコの仲はいっそう親密になったが、俺
もノリコも特に態度を変えたりしなかったので、周りの殆どの人は恐らく何も
気付かなかったのではなかろうかと思う。
バンドの練習も順調に進行し、文化祭までには、どの曲もまあまあ人に聞かせ
られるくらいのレベルに仕上げることができた。

当日の演奏は、それまでで一番の出来となった。お客さんが大勢入って、しか
も思いのほか盛り上がってくれたので、メンバーも皆テンションが上がったの
だ。
打ち上げは、クラスメイトだけではなく、他のクラスの人達や、このバンドを
見てメンバーのファンになってくれた外部の人達も加わって大騒ぎになった。
何かをやり遂げた後というのは実に気分が好く、俺も心から楽しむことができ
た。
俺個人のファンになってくれた人も何人かいて、その人達はその後、俺のバン
ドのライブに来てくれるようにもなった。
無論それは俺だけの事ではない。多分メンバーの全員が、それぞれ新たなファ
ンを獲得したのではないかと思う。そういう点を見れば、この文化祭は良い
プロモーションになったとも言える。

こうした成功は言うに及ばずノリコと彼氏が中心になって大活躍したからであ
るが、この二人は、文化祭が終わって僅か数日後に、突然別れてしまう。
これには皆、驚いたようだった。二人は公認の仲であったし、別れそうな雰囲
気も全然無さそうに見えていたろうからだ。俺も、ノリコから愚痴をを聞かさ
れてはいたが、本当に別れるなんて、と意外に思ったのだった。
けれども理由は俺には分からない。彼女が俺に話していたような事が原因なの
かもしれないし、他の事かもしれない。ノリコは、自分が振ったというわけで
はなく二人で話し合って決めたのだと言っていたから、そうだとすれば彼の方
にも何か思うところが有ったのかもしれない。

俺自身は、二人の破局を嬉しいとは思わなかった。それよりも、それが俺のせ
いでないことを願った。俺は彼のことも人間的に大好きで尊敬していたし、傷
付けたくなかった。二人の間を引き裂く要因の一つをもし俺が作ったとしたら
俺はいたたまれない。
だが、そんな心配は無用であったかもしれない。
ノリコは、それから約一ケ月後には別の男と交際を始めるのである。そして新
しい彼氏ができた後も、以前と変わらず俺と付き合ってくれた。性的交渉を持
つことさえ二度三度と有った。
思うに、ノリコが俺を「愛して」くれていたのは間違いないが、その「愛」は
彼氏に対するのとは別の種類のもので、且つ、彼氏への愛と両立できる程度の
ものであるらしく、自分で気にするほど俺は彼女に負荷をかけていなかったよ
うなのだ。
どうやらノリコにとって彼氏は、結婚をも前提にした真面目な付き合いをする
相手、俺は、遊びで恋人ごっこをする相手のようであった。
俺はノリコのそういう所に、俺の「アイドル」らしい強かさを見たような気が
して頼もしく感じたのだった。
勿論俺は彼女の遊び相手でいられればそれで満足だった。と言うより、その方
が嬉しかった。とにかく俺は、俺のような問題の多い人間は彼女に深く係わっ
ては絶対にいけないと思っていたから。

ノリコの新しい彼氏は、平山という大学生だった。確か、ノリコが受験勉強で
何処かに講習を受けに行った先で、バイトをしていた彼と知り合った、とかい
う話を聞いたように思う。
平山は、前の彼氏とタイプは似ていた。外見はもう少しいい男だったけれど、
性格的には彼もまた、優しくて心が広くて面倒見の良い「頼れるお兄さん」
だった。
俺が平山をそこまでよく知っているのは、時々一緒に遊んだりしたからだ。ノ
リコが学校の帰りに近くで彼と待ち合わせをしているような日に、俺も加わっ
て少しの間、三人で過ごすことが何度か有り、気の良い彼が、俺を邪魔者扱い
するどころか歓迎さえしてくれたので、三人でいる時間がだんだんと増えて行
き、翌年、俺とノリコが高校を卒業してからもそんな付き合いが続いて、その
うち、ノリコが都合が悪くて来られなくても二人だけで遊びに行ってしまうほ
ど俺と平山は親しくなったのだった。

だが俺は、ノリコと平山の間に割り込むような真似はしていない。平山に対し
て特別な感情は持っていなかったし、ノリコのことは好きでも、彼と別れて欲
しいと思ったことはない。
第一、俺はそれほど頻繁に二人に会っていたわけでもなかった。その頃もノリ
コよりコハラとツルんでいる時の方がずっと多かったし、既にジョニーと付き
合ってもいた。バンドもバイトもやっていて何かと忙しかったのだ。
だからノリコと平山には二人だけの時間が充分に有った筈で、俺は断じて二人
の仲を妨害したりはしていない。

ところが、その年(1982年)の秋頃から、平山が妙な事を言いだした。
自分はホモかもしれない、と俺に打ち明け、ノリコがいない時には必ずと言っ
ていいほどその手の話をしてくるようになったのだ。
彼は、自分自身に女っぽい所は無いと思っているが大学やバイト先で女性より
男に目が行ってしまい、特に後輩の男子などが可愛く思えて仕方がないのだと
言う。
更に、言うに事欠いて、自分がそういう風になったのは、俺と知り合ったこと
がきっかけだと、まるでそれが俺のせいでもあるかのように言ったのである。

俺は自分のセクシャリティについて彼に話したことは一度も無い。しかも俺は
彼の彼女であるノリコに恋していて、何度か彼女と寝てもいる(当然彼には隠
していたが)。つまり俺は彼を同性愛に導くような事は一切していない。
それなのに俺が影響を与えたように思われたのは、俺にとって大きなショック
であった。また、ノリコに申し訳ない気持ちにもなった。
平山は俺を同性愛者だと疑っていたわけではなく、だからこそ平気で俺にそん
な事が言えたのだろうが、だとしても俺の罪悪感が消し去られることはなかっ
た。

1983年、春、結局二人は、彼のその性癖のせいで別れてしまう。
俺は、その後も暫くは、平山との付き合いもノリコとの関係も続いたが、仕事
が変わったり引越しをしたりするうち、平山とはいつしか音信不通となり、ノ
リコとは、俺の気持ちは変わらなかったものの次第に疎遠になってしまった。

ノリコと平山は、婚約もしていた仲だった。もし俺が係わり合わなかったら
二人は無事結婚していたかもしれないと、当時、俺は心が痛んだりもしたのだ
が、俺に関係無くどのみち平山はいつか同性愛に目覚めたに違いないから、
早いうちにノリコから離れてくれて却って良かったのだ、と今では思うように
している。

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TRANQUE 第83号       2008/10/15配信(毎月1〜2回発行)
   発行者:佐藤充範 noveltreacle@gmail.com
   ホームページ: http://www.geocities.jp/noveltreacle/
Copyright 2003-2008 Mitsunori Satoh All Rights Reserved. *禁無断転載
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