食品工場の工場長の仕事  RSSを登録する

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2009/09/28

45回 笛を吹く人を育てるために

==================================食品工場の工場長の仕事とは==
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■■    45回 笛を吹く人を育てるために
■■■                            2009年9月28日発行 
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 45回 笛を吹く人を育てるために
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フォイスルブロワーとは 

 欧米で内部告発者のことをフォイスブロワーといいます。直訳すると「笛
を吹く人」と言うことになります。
 フォイスルブロワーの本来の意味は、サッカーなどの審判の事になりま
す。サッカーの審判はルール違反を行った選手を見つけると試合中であっ
てもその場で笛を吹きます。審判が笛を吹くと選手のプレーは止まり、審
判の判断に従ってプレーが再開されます。
 ルール違反の内容によっては、イエローカード、レッドカードが審判から
だされ、ゲームに続けて出ることが出来なくなってしまいます。
 ルール違反を見つけたらその場で笛を吹いて、注意し、改善を求める
ことが内部告発者、フォイスルブロアーの本来の意味になります。
 日本での内部告発者は、会社に在職している間は、不正に目をつぶっ
て、会社を退社した時点で告発を行うというイメージがあります。
 牛肉のひき肉に、豚の心臓を混ぜている時に本来は笛を吹く事が大切
なのです。
 外国産の牛肉を、国産の箱に詰め替える作業を行っているときに笛を
吹く事が大切なのです。
 私も、賞味期限が切れた肉団子の段ボールを詰め替えたいという営業
にその場で注意したことがあります。しかし、営業は段ボール箱の新品を
手配して、賞味期限の改ざんを行っていました。
 「白い恋人」の賞味期限改ざんも、現状の「白い恋人」のように内装袋に
賞味期限の表示があれば簡単に改ざんは出来なかったと思います。
 肉団子も段ボールだけに賞味期限を打っていたので改ざんが簡単に行
えたのだと思います。(図1参照)


笛は誰が吹くべきか

 ルール違反をしたときに笛を吹くのは誰の役割なのでしょうか。サッカ
ー、テニス等のスポーツは笛を吹く方、審判が明確に役割として定めら
れています。
 セルフジャッジでテニスの試合を行う時は、自分自身で公正にジャッジ
を行う事が必要です。相手のサーブがコートに入っているかどうかは自
分自身で判定する必要が出てきます。
 どうせ判らないからと言って微妙なサーブをすべて「フォルト」にしてし
まうわけにはいかないのです。
 工場の中には様々なルールがあります。ルールの中で一番大切な
ルールは、納品先、お客様との約束です。商品の原料として国産の椎
茸を使うと約束すれば、中国産の椎茸を使ってしまえばルール違反に
なります。
 国産の表示を行っている袋に中国産の椎茸を包装してしまえばルー
ル違反になります。
 椎茸などの野菜は、包装材料、表示を変えてしまえば、中国産が国
産に変わってしまい、原料価格の差額で大きな利益が生まれます。
 一度、産地偽装を行って、利益を手にしてしまうと、産地偽装の行為
は止めることが出来なくなります。
 産地偽装のルール違反に気が付いた時は工場の中の誰が笛を吹く
べきなのでしょうか。
 サッカーの用に審判が笛を吹くべきなのか、テニスセルフジャッジの
ように作業者自体が笛を吹くべきなのでしょうか。
 私は、テニスの審判である品質管理が笛を吹くべきであり、作業者
自体も笛を吹くべきだと思います。
 食品工場の危害は、図のように傘で守られています。食品危害を守
るべき傘に穴が開いていたり、傘が壊れていたり、傘自体を持ってい
なかった時に工場で製造している製品に雨(食品危害)が当たってし
まいます。
 工場で製造している商品に、危害がある事は作業者本人が気が付
いているはずです。
 テニスでのサーブがフォルトかどうかはプレーヤー自身が一番わか
っているはずです。


ルールを明確にすることの大切さ

 作業者自身が笛を吹くためには工場の作業ルールを明確にする
必要があります。しかも、細かい、こんな細かいことまでと言われる
くらいの細かさが必要です。
 テニスのサーブでフォルトかどうかは、細かくルールで決められて
います。コートに引かれているどの線の何処にボールが当たれば
フォルトかどうかと言うことが非常に細かく決められているのです。
(図2参照)
 マスクをして帽子をかぶって入る包装室でも、ハエが飛んでいる
作業室があったとします。
 ハエが飛んでいるところを見た作業者は何をすべきなのでしょう
か。
 一匹のハエが飛んでいたときにどうしたらいいのか、二匹のハ
エが飛んでいた時はどうしたらいいのか細かくルールを決めるこ
とが必要なのです。「異常があった場合は社員の判断を仰ぐこと」
とルールが定められている工場もあります。しかし、判断する社
員によって判断がばらついてしまっては従業員は混乱してしま
います。社員によって判断が異ならないようにルールを定める
事が必要なのです。
 洗浄作業に使用するタオル、ブラシのルールも必要です。アレ
ルゲンが含まれる作業に使用するタオルの色は何を使用したら
いいのかが明確に定められている必要があります。(図3参照)
 大手コーヒーチェーンでは、乳成分が含まれるカップを拭く時に
使用するタオルの色と乳成分が含まれていないカップを拭くとき
のタオルの色を区分しています。
 図のように、床を擦るブラシと作業台を擦るブラシ、生食(加熱
することなく直接食べることのできる食品)に使用するまな板な
どの調理道具を洗浄するブラシは区分するルールが必要なのです。
 工場の中の作業は、ルールブックを作り、作業者によって判断
が異ならないようにします。



教育の大切さ

 図4の笛を吹く方が乗っている台を大きくすることが大切です。
この台が大きければ大きいほど、作業台に多くの作業者が乗
ることができます。大きな作業台を支えるのが三本の足になり
ます。
 三本の足は、すべて教育であり、定期教育、新入社員教育、
異常時の教育の三本柱になります。
 台を三本足で支える場合に、足がなるべく作業台の外につい
ていて、三本脚の間隔が広いほど安定します。
 逆に、三本足の間隔が狭ければ、不安定になり、倒れやす
くなります。
 作業台の大きさを決める事、三本足の間隔を決める事が工
場長の仕事になります。
 私が講演などでよく使う言葉に「ある組織の倫理観はその
組織の責任者の倫理観を越えることは無い」という言葉があ
ります。教育に対する考え方も同じです。
 新人の作業者が入社してきて、何も教育することなく作業に
付かせる工場もあります。ひどい工場は、直ぐに現場に入れ
て、「細かいことは、隣の人に聞いて」と言って何の説明も無
い工場もあります。
 テニスをまったくしたことがない方に、ラケットを持たせて、
テニスの試合をさせているようなものです。しかもルールを
知らないようでは、テニスにはならないことが明白です。
 テニスを行うための最低の教育が必要なことは説明するま
でも無いと思います。まったくの新人にラケットを持たすだけ
でなく、素振りを何度も行い、ボールがネットを越えるように
なるまで、最低の練習が必要になります。
 どれだけの大きさの台を作り上げるか、三本の足の間隔を
どのくらいにするかは、まさしく工場長が考えるべきことにな
るのです。
 派遣従業員を作業者にあてて、作業者の教育も派遣会社
に頼っている工場も多いと思います。しかし、教育することは
派遣会社に頼っても、教育する内容、教育する頻度、教育の
達成度などについては、工場長が把握しておく必要がありま
す。


新人教育

 工場に入社してくる方は、いい商品を造ろうと思って入社
してくる方がほとんどだと思います。中には、自分が好きな
製品を作りたいと思って入社してくる方もいると思います。
 入社仕立ての従業員の方は、乾いたスポンジのように新
しい工場の事を吸収していきます。
 乾いたスポンジの状態の新人にきちんとルールを教え込
むことが必要です。
 図の新人教育に必要な事項のうち特に服装、工場内で
行ってはならないこと、手洗い方法などについては、行って
はならない理由を含めしっかり教育することが大切です。
 新人教育は、作業現場で作業を行う前に、座講で教育を
行います。座講に使用する教育資料はなるべく絵、写真を
多く使用し、外国籍の方でも理解できるような資料を作成し
ます。
 新人教育を行った場合は、1週間後、一ヵ月後などにフォ
ロー教育を実施します。
 フォロー教育では、新人教育で行った内容と、現場で先輩
従業員が行っている作業で相違が無いかどうか、教育内容
で質問、疑問が無いかを質問しやすい環境で行います。
 新人教育が終了するまでは、誰が見ても新人である事が
わかるような「見える化」画必要です。帽子の色を変えるな
どの「見える化」で新人の現場での教育が行えるような工
夫が必要になります。


定期教育

 教育は継続して行うことで効果が上がります。日本の企業
で行われている会議は教育の一場面かもしれません。大手
流通では、毎週、毎週全国の関係者を本部まで集めて、代表
者の考え方伝えています。
 代表者の考え方を伝えるということは、会社の方針、会社
が目指すべき方向性を毎週教育していることになります。
 会社の方針などは、紙に書いて渡せばいいと思っている
方もいると思います。しかし、紙に「世界一の品質を目指す」
と書いても、会社の代表者の方が世界一の品質を目指すた
めに何を考えているのは、話を聞いてみないと判らないの
です。
 しかも、同じ言葉を吐いても、身振り、語調によって伝わり
方は異なります。笑いながら伝えたのか、真剣な顔で伝え
たのかは、同じ場所にいないと伝わってきません。
 定期教育で行うことは、図に示した内容になります。
 定期教育は出来れば外部講師の方から行ってもらうと効
果的になります。
 毎日顔を見ている方から、改めて話を聞いても聞く方とし
て真剣身が薄れるものです。
 外部講師の方から世間の変化の状況を聞くことで教育効
果が上がります。
 定期教育は、必ず全員が受ける事が必要です。理想的に
は、同じ会場で、全員が受ける事ができればいいのですが、
生産の都合もありますので、講師の都合が付く限り、何回か
に分けて開催するといいと思います。
 私も同じ話を、同じ事業所で7回行った経験があります。
 受講した方は、簡単な感想文を書かせるようにします。感
想文の内容としては、一番印象に残った事、直ぐに自分の
仕事に生かせること、次回の教育で受けたい内容などを盛
り込みます。
 教育の内容を理解したかどうか、テストをする場合もありま
すが、私は、感想文を書かせた方が、従業員の方に教育内
容が伝わったかどうか明確になると思います。


異常時の教育

 クレーム発生時、工程内トラブル発生時、労災発生時など
の異常時の教育になります。社外で発生した事故なども随
時教育を行う事が大切です。
 地震が発生した場合、火災が発生した場合、水害が発生
した場合など、工場の存続に問題が出るような時にどうした
らいいかを常に考え、教育することが大切です。


正確に正直に情報を公開すること
 クレームが発生したときは必ず正面と向かい合うことが求め
られます。
 三菱自動車のクレーム隠しの様にリコールが必要なクレーム
までも、ロッカーの中に隠して、事実を公表しなくてはお客様
から信用が得られるはずもありません。
 起きてしまったクレームから正直に、素直に学ぶことが必要な
のです。「クレームはお客様からのプレゼント」と思って、製品
を更に良くすることが必要です。
 食品の市場回収事故は、新聞の三面記事の下の社告を見て
いても毎日の様に発生しています。
 工場の内部発見クレーム、内部発見トラブルも小さい物まで
含めると工場内では毎日の様に発生していると思います。
 クレーム情報は、フイルターを通さずにトップに伝えることが
大切です。クレームが多すぎるからとか、こんな小さな情報ま
で伝える必要は無いとかでフイルターを都合良く変更して通
す場合がありますが、情報は全て正確に公開する必要があ
ります。
 社内の情報の他に「他山の石」の情報として、世の中の話題
が必要になります。原材料はグローバルで手配している場合
がありますので、鶏インフルエンザの流行でも工場に影響が
出る場合があります。
 社内クレーム、世の中の情報を纏め、従業員全員に正確に
公開する必要があります。
 図5のワイングラスの用にワイングラスのもち手のところが細
くなって情報が詰まってしまわないようにすることが大切です。


工場の状況を数字で公開し、数字を素直に教育します

 クレームのデーターを昨年比、先月比などで、現在の工場の
置かれている状況を従業員全員に公開し教育します。
 自分たちの工場が従業員に置かれている状態が悪くなってい
るか、昨年より良くなっているかが教育する大切な点になります。
 結果として良くなっていれば安心できますが、結果として悪く
なっていれば、従業員教育を行う必要があります。
 教育は層別で行った方が、効果が上がりますので工程毎、
入社年度などで、現在の工場の状態に応じて品質に関する
教育を行います。


自分の倫理観で笛を吹く

 従業員の方がしっかりした三本足の台の上で自分の倫理観に
基づいて笛を吹く教育を実施することが大切なのです。
 図6のように工場で製造する製品を危害から守る傘を支えている
のは教育の三本柱に支えられた土台に乗っているのです。
 三本柱の底辺をいかに大きく広くするかが、工場責任者の教育
に対する考え方だと思います。

図表はHPで確認をお願いします。


私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。
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御意見 ご質問は http://form.mag2.com/rouvoviami に お願いします
日経BPネット連載「売り切れゴメン―日常の食事を大切に―」
           http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090430/150091/
月刊HACCPに「中小食品工揚の品質・安全性管理のポイント」連載中
                   http://www.keiran-niku.co.jp/haccp.html
著書 河岸宏和(かわぎし ひろかず)
『スーパーの裏側 安全でおいしい食品を選ぶために』東洋経済新報社
『“食の安全”はどこまで信用できるのか 現場から見た品質管理の真実』 
『ビジュアル図解 食品工場の点検と監査 』 同文舘出版
『ビジュアル図解 食品工場の品質管理』 同文舘出版          
『ビジュアル図解 食品工場のしくみ』 同文舘出版
『図解入門ビジネス 最新食品工場の衛生と危機管理がよ~くわかる本』
『食品販売の衛生と危機管理がよ~くわかる本』 
                                        秀和システム 
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食品工場の工場長の仕事とはhttp://homepage3.nifty.com/ja8mrx/koujyou1.htm
メルマガのバックナンバー  http://archive.mag2.com/0000100977/index.html
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