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2009/12/13

週刊 お奨め本 第372号『ふたり旅』

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週刊 お奨め本
2009年12月13日発行 第372号
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『ふたり旅』 津村節子
¥1,900+税 岩波書店 2008/7/25発行
ISBN978-4-00-024642-2
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津村節子の自伝です。
夫は吉村昭。
夫婦ともに、「小説」を書き続けた。
ただ、書くこと。ひたすらに追い求め、高みを目指す。
どちらかがどちらかに尽くしたというのではなく、犠牲になることなく、庇いあ
いもせず、手に手を取ることもなく、それぞれに一個の人間として、進むことを
選んだ。目指したものが同じだから、結果として、ふたりはともに歩んだ。
それは同士というより、夫婦というより、戦友のようだ。


> 候補はあくまで候補であり、注目を浴びるのはその時だけであることを、私た
> ちは知っている。あとが続かなければ、忽ち忘れられてしまうのである。吉村
> が必死になっているのは明らかにわかった。彼も私の焦燥を感じ取っているだ
> ろう。八木さんが、夫婦で小説を書くなんて、地獄だなあ、と痛ましそうに言
> われたのはこの頃である。(142頁)

この頃、芥川賞、直木賞は、同人作家にとっての登竜門であった。文壇への足が
かりとなるかもしれないチャンス。
そもそも同人文芸誌がとんと姿を消し、いまどき同人誌っていったらコミケだも
のねえ。創作というジャンルはあっても、文芸というより…むにゃむにゃ(笑)。
今よりもずっと、「文学」「文芸」という言葉が重みを持っていた時代。


> 「氷中花」は、近藤啓太郎氏が日本文藝家協会の懇親会の帰りに、あれはおも
> しれえや、とお茶に誘ってくださったが、八木さんは、節子さん、小説はあん
> なに面白く書いてはいけないよ、といわれた。同じ十五日会の先輩でも、意見
> はまったく反したのが印象的であった。(152頁)

八木先生がいまどきの小説界を見たらなんとおっしゃるでしょうね。
面白いことが第一義のエンタメ隆盛。発行人は正直言って面白くなきゃ小説じゃ
ない、と思ってたりするんですけど(^^;ゞ。


恥ずかしながら、津村節子の作品を読んだことがない。吉村昭も短篇を数篇読ん
だきり。「少女架刑」は衝撃的! 『名短篇、ここにあり』(北村薫・宮部みゆき編
 ちくま文庫)で読めます。よろしかったらこちらもご一読を。
津村節子ならびに吉村昭のファンの方が読んだら、いっそう楽しめると思うけれ
ど、そうでなくても私のようにじゅうぶんに楽しめます。
戦時中の少女時代の思い出から、吉村昭の闘病記まで、なまじっかの小説よりも
よほどドラマティック。



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