2009/10/25
週刊 お奨め本 第365号『許されざる者(上・下)』
*********************************************** 週刊 お奨め本 2009年10月25日発行 第365号 *********************************************** 『許されざる者 (上・下)』 辻原登 各¥1,700+税 毎日新聞社 2009/6/20発行 (上)ISBN978-4-620-10735-6 (下)ISBN978-4-620-10736-3 *********************************************** 紀伊半島、那智の連山を背後に望み、熊野川が流れ落ちる熊野灘。 森宮(しんぐう)の町を舞台に、激動の時代を生きた人々の物語。 西洋医学を学ぶため、アメリカへ渡った青年は、帰国後故郷でドクトルの看板を 揚げ、さらに四年後、インドへ向かった。 明治36年。森宮にドクトル槇がインドから帰ってきて、物語は幕を開ける。 脚気の研究と治療という貴重な実績を引っさげて。 時代は大きくうねっている。富国強兵の合言葉の下、近代化に突き進む日本。 > 「グレート・ゲームは、今ヨーロッパではやりの言葉ですよ。何か思い切った > ことをやるときの合言葉のように使われます。一丁やるか! We will play > the Great Game!」(41頁) 森宮では、槇の甥姪をはじめとする親類たち、患者たち、町の有力者、新聞記者 やらなにやらが、総出で槇を出迎えた。 出迎えのひとり、姪の千春が物語のもうひとりの主役である。 十六歳にして祖母から財産を譲られ、新聞紙上を「十六歳の一万町歩の大山林地 主!」と騒がせた、美しい少女。 千春に心を寄せる男たち。 従兄の若林勉。槇が帰国途中で出会い、その後勉と交流を深めた上林道助。若き 近衛騎兵団員、馬渕晴彦。 あるいは千春をたぶらかそうと策を練る男。背後で操る女。 恋模様が物語を彩る。 物語の通低音はもう一つの恋物語。 森宮第十代藩主の息子、世が世ならお殿様である永野忠庸には、美しい妻がいる。 ドクトル槇はひと目見て心を奪われた。 > ……恋は他力がもたらすのか、あるいは自力で出会うのか、と槇は自問しつつ、 > 手摺りにもたれた上林の顔をうかがった。彼の若々しいあばた面を横合いから > ながめていると、恋が生まれるのは自然の為せる業だ、という思いが強く湧き > 上がる。つまり他力だ。空のどこかから、斜めにヒューッとやってきて、いき > なり心臓を鷲づかみされるのだ。抗いようがない。(180頁) 「差別なき医療奉仕団」。槇が結成し、自ら被差別地区へ往診に出かける。人々は 槇を毒取ル先生、と親しみをこめて呼んだ。 日露戦争では半ばに志願し、従軍医として満州へ。 ライフワークである脚気の研究と治療に取り組む。この時代、脚気はコッホ以来 の黴菌説を信奉する陸軍と、栄養説を唱えて麦飯やパンを支給して着実に効果を 上げる海軍が対立していた。陸軍の代表格が、ご存じ森軍医監、森鴎外ですね。 時代そのものが主役ともいえるでしょう。 日露戦争前後、まだギリギリ反戦を声高に唱えることのできた時代。 毒取ルを中心とした主人公グループは、皆、理想を掲げ、理想に向かう。 人それぞれ、理想や夢は違うけれど、それぞれの夢と理想を追う。追うことので きる時代。 もちろん、その逆に時代ゆえの締め付けや、非難や、制限や、苦難もあるのだけ れど。 硬いなかにユーモアがあって、くすりと笑える一文がまぎれていたりする。 上下巻一気に読めます。 ☆★☆★☆★☆★☆ Amazon ☆ 購入はこちらから ☆★☆★☆★☆★☆ 『許されざる者』 辻原登 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4620107352?ie=UTF8&tag=sivabookpage-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4620107352 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4620107360?ie=UTF8&tag=sivabookpage-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4620107360 *********************************************** ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 発行者:siva:ksivasiva@yahoo.co.jp 読書とかいろいろ日記: http://blog.goo.ne.jp/ksivasiva/c/ae2c0c3c85c365822876c18e384024c9 ご意見お聞かせください♪ ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。 解除は http://www.mag2.com/m/0000099780.htmからできます。 ----------------------------------------------------------------------


