2009/08/23
週刊 お奨め本 第356号『やんごとなき読者』
*********************************************** 週刊 お奨め本 2009年8月23日発行 第356号 *********************************************** 『やんごとなき読者』 アラン・ベネット(市川恵里・訳) ¥1,900+税 白水社 2009/3/20発行 ISBN978-4-560-09225-5 *********************************************** 女王陛下、読書にハマる。 本好きには共感できる場面だらけで、楽しめること請け合いの小説です。 女王は、ある日飼い犬を追いかけて、宮殿の裏庭に停まっている移動図書館を見 つけた。礼儀として本を一冊借りた。返しに行って、次の本を借りた。それを返 して、また次を…。 女王は読書にハマった。 > 女王は鼻を少しぐずぐずさせ、特に人と会う約束もなかったため、インフルエ > ンザかもしれないと言ってベッドから出てこなかった。これは異例のことであ > り、しかも本当の病気ではなく、実は本の続きを読むための口実だった。(20頁) 公務をサボって本を読む。 出会う人々(公用車の運転手とか)に、片っ端から「なにか読んでる?」と訊く。 馬車での移動中、こっそり本を読みながら、沿道の市民に機械的に手を振る。 当然まわりはいい顔をしない。女王の読書は概ね不評である。 それでも女王は読書をやめない。 > 本は何者にも服従しない。すべての読者は平等である。[…]それは無名の人間 > になれる経験、人々と共有できるもの、共同のものだ。ふつうの人と異なる生 > 活を送ってきた女王は、いま自分がそうしたものを渇望していることを知った。(41頁) > 一部の作家が書かずにいられないと感じるように、本を読まずにいられなかっ > た。作家たちが書くために選ばれるように、彼女は老境に入ってから読むため > に選ばれたのだと感じた。(61頁) > 女王は確かに読書が大好きだったが、本を開いて他人の人生に入り込むことを > 知らなかったらよかったのにと思ったことも一度ではなった。読書は彼女をだ > めにした。いずれにせよ、こうした職務では満足できない人間にしたのである。(78頁) 引用だらけで失礼。ほらほら、女王のハマり具合がわかろうというものではあり ませんか。高貴な方の読書体験のはずなのに、まるきり自分のことのようだよ! 女王の周りで、女王の読書を喜ぶ人は少ない。 個人秘書のサー・ケヴィンは読書を利己的行為と呼ぶ。あるいは自己中心的と。 わかるなあ。なにしろ読書は徹底して個人的な行為だ。同じ本を読むにしても、 それはそれぞれの独立した行為であり、映画や音楽や絵画のように、誰かと時間 を共有することはできない。 極論を言えば、映画であろうと絵画であろうと、あらゆる表現物は表現物たりえ た瞬間に表現者の手を離れ、鑑賞者のものとなる。同じものを見ようが、同じ音 を聴こうが、それは必ずしも同じ感動をひきおこすとは限らないのだけど。 とは言え、共有度はやはり読書が低い。 だからこそ、語りたくなるのでもあるのだけど。 オチについては、どうかな、日本人にとってはさほどインパクトがあるわけでも ない気がするけど。 そこに至るまでの道筋が、充分に魅力的。 読書とは別の人生を生きること。 読書は喜び。そして苦しみ。 読まずにはいられない。時を惜しんで。 ☆★☆★☆★☆★☆ Amazon ☆ 購入はこちらから ☆★☆★☆★☆★☆ 『やんごとなき読者』 アラン・ベネット http://www.amazon.co.jp/gp/product/4560092257?ie=UTF8&tag=sivabookpage-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4560092257 *********************************************** ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 発行者:siva:ksivasiva@yahoo.co.jp 読書とかいろいろ日記: http://blog.goo.ne.jp/ksivasiva/c/ae2c0c3c85c365822876c18e384024c9 ご意見お聞かせください♪ ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。 解除は http://www.mag2.com/m/0000099780.htmからできます。 ----------------------------------------------------------------------


