2009/07/26
週刊 お奨め本 第352号『弩(ど)』
*********************************************** 週刊 お奨め本 2009年7月26日発行 第352号 *********************************************** 『弩(ど)』 下川博 ¥1,700+税 小学館 2009/5/16行 ISBN978-4-09-386248-6 *********************************************** 時は南北朝時代。 鎌倉幕府が元寇により衰えて滅び、南北朝動乱は真っ盛りで結末が見えず、国を 挙げて新しい国の形を模索していた時代。 すべての農村がそうではないにしても、地域によっては支配者の空白状態が発生 し、村が力を蓄えることができた。 経済作物の栽培と交易に成功した農民たち。村の危機に際し、彼らは侍を雇った。 百姓が侍を雇うと聞けば、連想するのは黒澤映画「七人の侍」。 さすがに帯でも映画に言及している。 > 黒澤明監督「七人の侍」から55年。今度は百姓が武器を取った! > 悪党の襲来に備え、侍を八人雇った村が実在した。おそるべき騎馬の猛者ども > を相手に、弓兵器「弩」を手にした百姓たち。 物語の中心は、吾輔という小作人である。 小作であるが、村の誰よりも目端が利く。知恵があり腕っ節も強く度胸も天下一 品と村内では自他共に認められているのに、小作であるがゆえに寄合で発言権も 決定権もない。しかし、昨今の非常事態により、小作の吾輔は特に発言を許され て、最近は実質上寄合を仕切っている。 非常事態とは即ち、村の所有に関してである。 村の領主は長く東盛義であったが、実は九年も前から鎌倉弥名寺という寺に所有 が移っていたというのである。 いま、寺から雑掌(領主代官)が村に向かっている。本来の雑掌が道中に倒れ、 同行した僧は鎌倉に逃げ戻り、貧乏くじを引いた若僧、光信が青い夢を抱いて 赴任した。光信は寺に育てられた捨て子である。無類の書痴、そして筋金入りの 善人、夢想家でもある。この地に桃源郷を作りたい。 > 「最初から智土師郷では貢など取り立てねば良い。百姓どもにとってこれに勝 > る桃源郷はないはずじゃ」 > すべてを衆生に還元する、これぞ性全の唱える捨身飼虎の実践である。この地 > でのわが道は定まったと光信は思った。(52頁) 吾輔には夢がある。 商いがしたい。できれば塩を扱いたい。塩を扱えるようになれば村は一気に豊か になる。塩は身体生理的に必要なだけでなく、この時代食料の長期保存のために も重要だったのである。 > 「商人が面白え。品物と品物、銭と品物を交換して、どっちも得をしたって思 > うから商売が成り立つ。武士はどっちかが得をすりゃどっちかが損をする生業 > だ」(35頁) 人と人が出会う。 波紋が広がる。 村が栄え、人が増える。 そして村の外では、時代が動いていた。 > 「元々、智土師郷は、鎌倉幕府の命により無理矢理取り上げられた土地じゃ。 > だが、いまや幕府は滅亡しその命は無効となった。となれば、あの土地は本来 > の持ち主である東家に返却されねばならないのだ」(184頁) 東盛義は四十騎の騎馬武者を擁している。 武力を盾に、塩商いの売上の七割を献上せよと、村の絶対服従を迫る。 悪党から村を守る。 そのために…。 血を見るたびに卒倒していた光信が、村を守るために弩を持って立った。 いやはやじつに読み応えのある小説であった。 気に入った。 ☆★☆★☆★☆★☆ Amazon ☆ 購入はこちらから ☆★☆★☆★☆★☆ 『弩(ど)』 下川博 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4093862486?ie=UTF8&tag=sivabookpage-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4093862486 *********************************************** ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 発行者:siva:ksivasiva@yahoo.co.jp 読書とかいろいろ日記: http://blog.goo.ne.jp/ksivasiva/c/ae2c0c3c85c365822876c18e384024c9 ご意見お聞かせください♪ ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。 解除は http://www.mag2.com/m/0000099780.htmからできます。 ----------------------------------------------------------------------


