2009/05/31
週刊 お奨め本 第344号『血液と石鹸』
*********************************************** 週刊 お奨め本 2009年5月31日発行 第344号 *********************************************** 『血液と石鹸』 リン・ディン(柴田元幸・訳) ¥1,700+税 早川書房(ハヤカワepiブック・プラネット) 2008/9/25発行 ISBN978-4-15-208957-1 *********************************************** アメリカ文学の最前衛を行くベトナム系作家リン・ディン。 発行人は近代アメリカ文学というのが、実はあまり得意じゃない。ていうか、 ぶっちゃけ、苦手だ。 そもそも「文学」というものが苦手だ。 はっきりしたストーリーを持つわかりやすいエンターテインメントが好きなのだ。 ましてやアメリカ。 ましてやマイノリティ文学作家。 苦手な系譜だ。しかし食わず嫌いしてないで読んでみてよかった。 短篇というよりショートショートというほうが近いような短さ。 一ページの作品なんてのも沢山ある。 これはもう、詩と言ってもいいのではないかとすら。 詩人でもあるリン・ディン。 言葉へのこだわり、いやむしろ、言葉というものへの不信感、あるいは言葉の持 つ力と、逆説的な無意味さ。 たとえば一話目「囚人と辞書」。 ひとりの囚人が、ほかには何もない独房で一冊の辞書を見出す。何語なのかもわ からない辞書の、間違いなく判断できるのは表紙にある「辞書」という単語のみ。 これはきっと植物をさす語だろう、動物を表す語に違いない、と推測しつつ読み 進め、記憶していくが、彼の推測は当然間違っている。 それでも日一日と増していく(間違った)知識は、彼を一から新しく生まれかわ らせていくのである。… このぞくぞくするような物語を、たったの六ページで描き出す! これが一話目なのだから、早々に私はノックアウトです。参りました。すごい。 あまりに濃厚で、37編の収録作品を、長さだけなら一晩で軽く読める分量だけど、 とても読めない。まいにち数話ずつ惜しみ惜しみ読みました。 一気に読んだらきっと、リン・ディン酔いする…。 三話目の「!」もまた、外国語にまつわる話。そもそもタイトルからしていいじ ゃないですか。 ホー・ムオイという男が、偽英語教師の咎で逮捕された。 ホー・ムオイは英語を正式に習ったことはなく、戦時中に捕虜の話す言葉(多く はうわごと)をメモ帳に書き止め、そのメモから再構成した独特の英語を作り上 げたのである。教え子たちは、ホー・ムオイが逮捕されてからも、結束してレッ スンを続けているという。偽の言語を。インチキでもいいのだ、いやむしろ、本 当の英語よりもいいくらいだ。イギリスやアメリカの現実に対応していないのだ から。 ホー・ムオイの少年時代から描いているので12ページ。それでも12ページ! すごい。 言葉というものに愛とこだわりを持つ人へ、おススメする。 ☆★☆★☆★☆★☆ Amazon ☆ 購入はこちらから ☆★☆★☆★☆★☆ 『血液と石鹸』 リン・ディン http://www.amazon.co.jp/dp/4152089571/ref=nosim/?tag=sivabookpage-22 *********************************************** ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 発行者:siva:ksivasiva@yahoo.co.jp 読書とかいろいろ日記: http://blog.goo.ne.jp/ksivasiva/c/ae2c0c3c85c365822876c18e384024c9 ご意見お聞かせください♪ ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。 解除は http://www.mag2.com/m/0000099780.htmからできます。 ----------------------------------------------------------------------



