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2009/05/24

週刊 お奨め本 第343号『不正な処理』

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週刊 お奨め本
2009年5月24日発行 第343号
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『不正な処理』 吉原清隆
¥933+税 集英社 2009/2/10発行
ISBN978-4-08-771291-9
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愛知県の大型団地で暮らす母子家庭の少年、誠は散歩をしてはイヌを探した。野
良犬だが、美しいイヌだった。大きいイヌだった。いつの間にか、そのイヌを見
なくなった。きっと死んだのだと母は言う。だから誠が探していたのは、正確に
はイヌではなく、イヌの死体だった。

中学一年の夏休み最終日。いつもの散歩コース、団地の上の展望台で、ヒトに会
った。同い年らしいそのヒトは、理科便覧を持っていた。〔夏の雲・積乱雲〕。
そのなかの一枚の写真のキャプションに、誠が住む市の名前があった。よく見れ
ば、その写真は、いま立っているこの場所から、誠が住む団地とその上空の空を
写したものだった。
写りこんでいる建物は、団地の中でも誠が住んでいる41棟であり、灯りがつい
ている一室は、まさに誠の部屋なのである。

こうして出会ったふたりは、奇妙な因縁に結び付けられてともだちになる。
なーんてことは全然ない。中学校が違っていて、再び会ったのは高校である。

高校でふたりが親しくなったきっかけはパソコンだ。
久賀の発案で、雑誌募集のゲームを作ることになる。そのゲームのタイトルをど
うするかで思いあぐんでいた折り、頻発するイリーガル・ファンクション・コー
ルに舌打ちする誠に、久賀が叫んだ。「イルだ!」そうしてゲームの名が決まった。


その後誠はパソコンを捨て、大学に進み、市役所に就職し、無難に生活し、失脚し…。
そんな少年から中年までの人生が語られる。
淡々と。
その間、事件はあっても誠の中では冷静に処理され、主観的には平穏な日々を送る。

そういう小説。

盛り上がりはあるか? ない。
人物に魅力はあるか? ない。
誠は小学生の頃から無味無臭人畜無害な存在を演じ続けた。だれも誠の本性を知
らない。そんな男の人生。

けれど不思議な感覚を与える。

イヌを探していた少年時代。
イルを起こしては原因排除に明け暮れた高校時代。

> デバッグ。それはまるで、どこか限定された空間を、何か不明瞭なものを求め
> てさまよっている、そんな感覚であった。“イヌ探し”に似ているな。誠は、
> 思った。(45頁)

なにか惹かれるものがある。
私は好きだ。


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