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2009/05/17

週刊 お奨め本 第342号『光』

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週刊 お奨め本
2009年5月17日発行 第342号
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『光』 三浦しをん
¥1,500+税 集英社 2008/11/30発行
ISBN978-4-08-771272-8
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美浜島ほどうつくしい場所はほかにない。中学二年の信之はそう思う。森に椿の
花が咲き、漁船は大漁旗をひるがえす。海から届く潮騒、港に集まる人々のざわ
めき。完全な調和がある。
深夜、島は突然の津波に襲われ、島民のほとんどが死んだ。
生き残ったのは、信之と美花、小学生の輔(たすく)、輔の父の洋一、灯台守の老
人、釣り客の山中。六人だけだった。逢瀬のために夜中に家を脱け出して難を逃
れた信之と美花。信之は美花のためにならなんでもする。
死体だらけの島で、信之は美花を守ろうと思った…。

時は流れ、団地の一角に平凡な家庭がある。夫は市役所勤めの公務員。妻は専業
主婦。幼稚園に通う娘の名は椿。
椿を幼児教室に送り、南海子は古いアパートへ向かう。男と抱き合うために。

> 「あんたは見たことないだろうな。真っ暗な空に、白くて大きな月が出てると
> ころを。夜の海に月の光で白い道ができる。本当にきれいだ」
> 男の目は南海子を素通りして遠い夢の世界を映している。黒い目が男の語る夜
> の海と空そのままに輝きを帯びる。(97頁)


島にいたころから、輔は父親に暴力を受けていた。津波に襲われたとき、こども
たち三人だけが生き残ったと思った輔は、跳びはねて喜んだ。けれど父親は生き
ていた。客と夜釣りに出ていたのだった。
暴力に支配された輔は、成長してからも父親に逆らえない。
工場を転々としてきた輔の前に、十年ぶりに父親が現れた。金をせびり、酒をせ
びって、暴力をふるう。
運命がうねる。

> 「輔は自分で思ってるよりも優しい。だからみんな心配してるんだよ。工場の
> ひとたちも、私も」(171頁)


大災害の夜の犯罪。その点だけは東野圭吾の『幻夜』を連想させる。
女が男を利用しつくす『幻夜』と違って、信之はむしろ自分から美花に尽くした
くてしかたがない。幸せな家庭をこわしても。

幸せな家庭。
そんなものがあるんだろうか。
だれもが秘密を抱えている。
闇を抱えている。
見ないふりをして、気付かないふりをして、幸せなふりをする。


> 「ゆき兄」
> 再会してはじめて、輔はなつかしい響きで信之を呼んだ。「あんたの言葉を信
> じられたら」(239頁)


三浦しをんに関しては、個人的には小説よりもエッセイが好きなのだけど、今回
の『光』のようなものを読むと、小説もどんどん書いて欲しいと思う。



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