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2009/05/03

週刊 お奨め本 第340号『虎と月』

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週刊 お奨め本
2009年5月3日発行 第340号
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『虎と月』 柳広司 
¥1,400+税 理論社 2009/2月発行 
ISBN978-4-652-08631-5 
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言葉の魔術師・柳広司。

誰もが知る名作『山月記』(中島敦)がベース。
誰もが知るストーリーを説明するのも野暮だけど、簡単に言えば…。

ひとりの役人が山中で虎に出会う。虎は危ういところで襲うのをやめた。虎は、
役人の古い友人、李徴であった。李徴は、虎となった身を縷々嘆いたあと、一篇
の詩を贈った。以後、虎となった彼の姿を見たものはない。

虎になった男、李徴。その息子が、本書『虎と月』の主人公。
父が虎になったのなら、息子である自分も虎になってしまうのだろうか?
14歳。まだ子ども。けれど体が大きく、14には見えない。
ぼくは、ある日、旅に出た。十年前に山中で父に会ったという袁參氏に会うため
に。父が虎になった理由を知るために。

袁參氏と会えなかったぼくは、次に、虎となった父と袁參氏が会った叢(くさむ
ら)の近くの村へと向かった。
そこで横暴な徴兵役人たちとトラブルを起こし…。

まあ、ぶっちゃけ大まかなストーリーはたいしたことないです。←をい。
問題は、詩です。
言葉です。

再び言おう、言葉の魔術師・柳広司。


偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃  
今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高 
我為異物蓬茅下 君巳乗輙気勢豪 
此夕渓山対明月 不成長嘯但成[口皐] 

思いがけず、狂気にみまわれてけだものとなってしまった。
災難と病が重なって逃れることが出来ない。
いまや俺のこの爪や牙にかなうものはあるまい。
思えばあのころは、君も俺も秀才として誉めそやされたものだ。
ところが、今や俺はけだものとなって草むらにいて、
一方君は、役人として立派な車に乗る身分だ。
今夜、野山を照らす明るい月の下で君に会ったというのに、
俺は詩を歌うこともできず、ただけだものとして[口皐](ほ)えるばかりだ。

有名なこの詩。
この詩を、たった一文字変えるだけで、柳広司は物語をまったく違うものに変え
てしまった。
どう変えたかは本書をお読みください。
もうひとつの山月記が立ち上がる。
『贋作「坊ちゃん」殺人事件』以来の感動! 柳広司、こーゆーのうまい! 
そして私はこーゆーの大好き!

あー、なんかもう、走り回って叫びたくなってきた。虎のように。 



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ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 
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