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2009/04/26

週刊 お奨め本 第339号『河童芋銭』

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週刊 お奨め本
2009年4月26日発行 第339号
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『河童芋銭(カッパうせん) 小説小川芋銭』 正津勉(しょうづ・べん)
¥2,200+税 河出書房新社 2008/12/30発行
ISBN978-4-309-01896-6
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日本画家の、小川芋銭(うせん)。
芋銭に惚れこんだ正津勉が、その生涯を小説仕立てにまとめ上げた。
正津の本業は詩人。流れるような謡うような文章は、講談語りを聞くかのよう。

体に心地いいリズムで刻まれるその生涯は、しかし平穏ではなかった。
「三つまで生きられるかどうか」と医者にいわれるほど虚弱だった芋銭は、虚弱
なまま臥したり起きたりを繰り返しながら画作に励む。

朴訥とした人柄は誰にも好かれた。
「平民新聞」の幸徳秋水やその同志たち。詩人の山村暮鳥。画壇の巨人横山大観。
支持者たち。後援者たち。
とくに山村暮鳥との交流は涙なしには読めない。
ある雨の晩、突然訪れてきた若者。
「いつかお目にかかりたいと思ってからすでに久しいのです。自分は恋人に逢い
にでも行くような気持ちで今晩は雨の中を参りました」(86頁)
以後、直接の対面は果たせず、再会は八年ののちとなる。
ふたりの交友は十年。この間、二回しか会っていない。けれどふたりは深く理解
しあい、尊敬しあっていた。芋銭の画で暮鳥の詩集をつくる。抜き刷りを見て病
の床の詩人は喜んだ。そして刊行を待たずに逝った。
友を見送った芋銭は「おう暮鳥よ」と碑に揮毫を刻んだ。…

横山大観との出会いは旅先の宿である。既にしてその名を轟かせていた大観に対
し、芋銭はあまりに無名であった。けれど次に会った芋銭の展示会において、大
観はいきなり日本美術院の会員に推挙する。
芋銭の画を「漫画的だ、芋銭的だ」と問題視する同人も、大観の「こりゃなかな
か面白いじゃないか」のひと言で黙るのだ。巨人の目は見るべきものを見ている。
芋銭の画は認められ、名を知られるようになったのである。

芋銭は妻にも恵まれた。働き者の妻は、画業にうつつをぬかす息子をしかる義父
に「私がふたり分働きますから」と頭を下げる。じっさい朝から晩まで働きづめ
の嫁に、さしも厳格な武家出身の父も一目おくのである。
妻の助けで家業の農作よりも作画に専念できるようになり、結婚後芋銭の活動は
活発になる。妻こうがいなければ、画家芋銭はいなかったかも知れぬのだ。


正直言って、画家小川芋銭を、私はろくすっぽ知らなかった。
知ってしまえば心はとりこ。画集買っちゃいましたよ。マジ。
知れば知るほど、見れば見るほど、引き込まれていく。

生まれ故郷の牛久には、河童の言い伝えがある。
芋銭の河童か、河童の芋銭か。
河童を愛し、河童の画を多く残した芋銭。

表紙は「夕風」。夕雲巻く空、玉蜀黍、祭の白馬、笑いさざめくこどもたち、村人
たち…。見ているだけで幸せな気分にさせてくれる。
化粧扉には「畑のお化け」。野菜たちが行列している。笑いながら踊りながらどこ
かへ向かおうとしている。浮かれて転がり落ちるかぼちゃ、跳びはねる人参、す
まし顔の蕪…。かわいくて、けれど怪しい。
裏表紙には「水虎(かっぱ)と其眷属」。眼光鋭い親河童と、周りには子河童が騒
ぐ。迫力。

ああどの画にも芋銭がいる。河童を愛し、雲を愛し、石を愛し、酒を愛した芋銭
の、飄々と仙人のような透明な思いがある。
故郷を愛し、旅を愛し、自然を愛して友を愛した。

芋銭じい、何処いった、カッパになって沼へ帰っていった……
  芋銭じい、何処いった、カッパにもどって沼へ帰っていった……

牛久の沼で、河童になった…。



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