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2009/04/19

週刊 お奨め本 第338号『僕の読書感想文』

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週刊 お奨め本
2009年4月19日発行 第338号
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『僕の読書感想文』 近田春夫
¥1,800+税 国書刊行会 2008/12/12発行
ISBN978-4-336-05089-2
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ゆるい。
この本を読んでの感想は、このひとことに尽きる。
まず、書評じゃなくて読書感想文というところからして、ゆるい。
そのゆるさが心地よい。

近田春夫といえば音楽の人だが、意外や読書家だったのですね。
とくにフィリップ・K・ディックの大ファンで、ディックの本はコンプリートし
ているらしい。一冊だけなくしてしまった本を古本屋で見つけたときには「古本
屋には通うものである」と大喜びしている様子はほほえましい。
そしてそれをちゃっかり紹介しているところが、これまたゆるくてイイのである。
     (56頁:『時は乱れて』フィリップ・K・ディック サンリオSF文庫)

ゆるくとも、見るべきところは見ている。
きちきちに理屈で締めるのではなく、感性で、直観で、感じ取る。
たとえばヘンリー・ダーガーを紹介するときには、「絵のことに不案内ゆえ、手法
について語る資格もないが」と断った上で、ダーガーの生涯にも特別の興味はな
いと切って捨てた上で、「知らぬ間に絵に見とれていた」「この絵たちは見る者を
どこかへ誘おうとしている」「ダーガーは絵のなかに何かを永遠に封じ込めてしま
ったのでは」と呟く。
ああ、この感性がアーティストのものなのだなあ。
(137頁:『ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で』ジョン・M・マクレガー 作品社)

『私は闘う』では、「政局」という言葉を分析してみせる。
「たとえばバンドをやっているとメンバー間に政局はおとずれる。だとしてステ
ージにそれを持ち込んだら客は怒るだろう。/政局は職業としての政治ではなく、
人間関係一般のどこにでもある“政治的”な問題だろう。それを政治家は勝手に
仕事に見せかけているのである」
拍手。すばらしい、この言に異を唱えることのできる政治家がいるか。
                (140頁:『私は闘う』野中広務 文春文庫)

この調子でひとつひとつ挙げていくとたいへんなことになるので、この辺でやめ
ておきますが、適当に選本しているようでいて、読んでいるとなんだか近田春夫
らしさを感じてしまう、不思議なラインナップです。
そしてけっこうな読書家であるかと思えば、あとがきではあっさり、この連載を
始めるまでは本など読まないほうだったという(本書は『家庭画報』での10年
間の連載をまとめたもの)。
冊数はたしかに、そんなにたくさんは読んでないのかも。むしろ気に入った本を
繰り返し読む人みたいです。そして、なにより、読書が好きなんですよね。きっ
と。小難しいこと言ってないで、読書の世界に遊ぶことが。

昭和五年に出た本について、こう語る。内容は難しくてテキトーに味わっている
だけだ、と言いながら。

> ちゃんと読めなくともその本と向き合うことは出来る。旧仮名遣いや、現代の
> あまりに平易なものとは違う文体、そうしたものの醸し出すニュアンスにひた
> ること自体の楽しさ――[…]こんな本を古本屋で探して、仕事のあいた日な
> どにゆったりと読むでもなし眺めていると、少し時間の進む速度が変わったり
> すると思う。それはとても素敵なことではないか?
              (175頁『「いき」の構造』九鬼周造 岩波書店)

それはとても素敵なことだと、私も思うのです。



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