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2008/10/12

週刊 お奨め本 第311号『145gの孤独』『七月のクリスマスカード』

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週刊 お奨め本
2008年10月12日発行 第311号
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『145gの孤独』 伊岡瞬 
¥1,600+税 角川書店 2006/5/30発行 
ISBN4-04-873692-2
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『七月のクリスマスカード』 伊岡瞬
¥1,900+税 角川書店 2008/6/30発行
ISBN978-4-04-873853-8
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『145gの孤独』
硬球の重さは約145グラム。150グラムにも満たない、小さい、白いボールが、
人の運命を変える。
プロ野球投手として活躍していた倉沢脩介は、試合中の死球事故が原因で現役を
引退した。
人の紹介で便利屋を始めた倉沢に、「付き添い屋」の仕事が紹介される。胡散臭さ
のかたまりのような商売。依頼してくる客は、事情を抱えている…。
働かない従業員はかつて死球をぶつけた相手。一応社長である倉沢に遠慮会釈な
く毒舌をぶつけてくるのはその妹。
減らず口を叩きながら、気の乗らない仕事をこなす日々。
小学生の息子のサッカーの試合観戦の付き添いを依頼されれば、こどもと心を通
わせ、依頼人である人妻の事情を察する。フィリピーナの踊り子を本国へ送り返
すための空港までの付き添いを頼まれれば、踊り子に頼まれるまま前橋まで車を
走らせ望みをかなえる。倉沢に便利屋&付き添い屋を紹介した恩人から個人的に
依頼を受ければからだを張って守る。……それが倉沢の望みかどうかは別として。
過去の栄光。未練を断ち切る白いボール。
諦めきれない夢を抱えて、自分をごまかしながら、それでも生きていかなければ
ならない人間の悲しさ。
現実と夢が交錯する。
長い夢。終わらない夢…。


『七月のクリスマスカード』
アルコール依存症の母と、幼い弟と三人暮らしの、小学六年生の美緒。
もう一人、弟がいた。穣は十ヶ月で死んだ。乳幼児突然死症候群ということにな
っているが、酔った母はいつも、当時五歳だった充に対して「おまえが充の頭を
押し付けて殺した」と言いつづけた。充の顔を見たくなくて、父は出て行ったの
だと。
母も弟も愛せない。どす黒い絶望と憎しみだけを胸に生きる美緒。
ある日、母の従妹である薫さんが、元検事の永瀬丈太郎を紹介した。
昔、幼い娘を誘拐されて、そのまま失った永瀬は、当時娘と幼稚園でともだちだ
った薫と、今でも親交が続いていた。
妻は癌で亡くなり、広い屋敷にひとり暮らしの永瀬。
美緒と永瀬は奇妙な友情で結ばれた。
永瀬の娘の誘拐事件、そして穣の死の真相が、時を経て美緒の前に現れる。…


著者の伊岡瞬は『いつか、虹の向こうへ』で2005年に第25回横溝正史ミステリ
大賞とテレビ東京賞をダブル受賞してデビュー。
このとき読み逃したまま、未読の作家だった。
某書評誌で第三作の『七月のクリスマスカード』が誉められていたので、初めて
手に取りました。ついでに第二作の『145gの孤独』も読んでみたところ、アタ
リだったのは『145g…』の方。
軽口と減らず口に隠した負い目と脅え。心理描写がいい。
『七月…』も、わるくない。
ちょっとストーリーに凝りすぎて整理し足りないところはある。読者が混乱しそ
う。なんだけど、美緒の心情がすごく伝わる。子供の美緒には手に負えない、だ
けどなんとかしなくてはならない事態に必死で立ち向かう。前向きじゃない、そ
うするしかないぎりぎりの姿勢。

なかなかいいです。



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