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2008/04/27

週刊 お奨め本 第287号『戦争する脳』

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週刊 お奨め本
2008年4月27日発行 第287号
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『戦争する脳 破局への原理』 計見一雄(けんみ・かずお)
¥760+税 平凡社(平凡社新書) 2007/12/8発行
ISBN978-4-582-85402-2
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著者の計見は、精神科救急医療の第一線で長く臨床に携わってきた精神科医。
精神科医の視点から、「戦争が始まるメカニズム」を分析する。

まずは「否認」のメカニズム。
否認(ディアイナル)とは、都合の悪いリアリティに目をつぶること。
希望的観測(ウィッシュフル・シンキング)とはまた、いかにもポジティブ・
シンキングな響きであるが、つまり、計画を立てる際に、自分に都合の良いよう
に良いように考えること。
たとえば、敵軍には大砲がないという情報があれば、それを信じる。無い方がい
いから。「もしあったらどうするんですか?」「そんなこといちいち考えてたら
何もできないだろう!」こんな将軍の立てる作戦では、兵隊は犬死にである。

人間の脳は、「あれをやろう」と意識する前に、準備的な脳活動が開始されている。
やろうと決心したときには、実行までの間の制御は「行為をしない」というネガ
ティブ・コントロールのみ。
意思が強い人って言うのは、つまり脳の働きが弱い人だったんですね。

戦争を材にとっているのだが、ここに挙げられた問題は、そのまま現代日本社会
の病理に当てはまる。
都合の悪いものを「ないこと」にする企業上層部は、太平洋戦争に突き進んだ日
本、断固としてイラク侵攻したブッシュ政権に通ずる。
戦中戦後のPTSDに苦しむ兵士と同じように、労働戦士たちは疲弊している。

東京のビジネス街の真ん中で開業している精神科医の言葉。

> 「年の暮れ、ギリギリまで診療所を開いていて、次々に私の診療所の前に列を
> なして、助けを求めてきたのは、まさに戦闘疲労症候群の患者たちでしたよ」
> (211頁)

この世は戦場だ。

> 労働という戦線で疲弊しきって私の前に現れた人々に、抗うつ剤を処方はする。
> 睡眠薬の処方もする。しかしながら、[あなたはうつ病ですよ。うつ病を克服
> した人の本を読みなさい]とは滅多に言わない。[…]「あなたは心の病気、
> 精神の病気で精神科に来たということを、きっと恥じているに違いない。ここ
> には確かに精神科の看板がかかっているけれど、あなたの病気は実はからだの
> 病気なのですよ」という説明をする。(212-213頁)

これを読んで、私は感動した。
世に溢れている、鬱を克服した云々という本、鬱になったらこれを読めという本。
あれが必要な人たちもいることは分かるけど。でも。
「実はからだの病気なのですよ」
この言葉で安心する人たちがどれだけいることか。

> ヒトの脳は宇宙で一番良くできた思考機械であるが、重大な弱点が三つある。
> 一つは、一日七〜八時間の睡眠を取らないとちゃんと働かないこと。四十八
> 時間完全に断眠した脳は全く当てにならない。二番目の欠点というか、取説上
> の注意点とでもいうべき特徴は、連続して単独運転させるなという点である。
> […]コミュニケーションというやつが欠けると、フィードバックのない孤立
> 回路となってしまう。時々、他の脳に相談させないとへんてこな結論を出す
> おそれがあります、というご注意。(77頁)

ちゃんと睡眠を取りましょう。
ひとりで考えてばかりいるのはやめて、誰かに相談しましょう。
ってことですね。

発行人は「脳」が好きです。今までにも散々、脳関係の本を紹介してますね(笑)。
戦争についてはさておき、脳についての切り口に興味を持って本書を手にしたの
ですが、いやもう、期待以上の面白さ!
戦争部分もたいへん興味深く、現代社会に転じた考察は更に。
文章がまた、絶妙のくだけ具合で読みやすくて面白いんだ、これが!


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ほぼ週刊 お奨め本(ID:0000099780) 
発行者:siva:ksivasiva@yahoo.co.jp
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