2009/09/09
◆ごかいの部屋 No.169『「肯定」とはどういうことか』
2009.9.9 [No.169] □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ : ご か い の 部 屋 : ~ 不 登 校 ・ 引 き こ も り か ら 社 会 へ ~ ────────────────────────────────── 元 当 事 者 の 教 育 相 談 員 が 語 る 体 験 的 不 登 校 ・ ひ き こ も り 論 と 解 説 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□ 以前お知らせしましたように、第1回が中止になった「家族学習会・ ひきこもり編」の振替を先月15日に実施しました。終了後には、1シ リーズ(全3回)を毎年1度しか開催しないことを残念がる声も出まし た(「ヒュースタ日誌」↓に報告)。 http://blog.goo.ne.jp/husta/e/843d8b6cc86fdfc550f8c270c1553924 そこで、12日(土)に青少年サポートプラザで開催される「フリ・ フリ・フリマ」に当スタジオと共同参加する「SSW神奈川研究会あん さんぶる」の出し物「BGMの小部屋(ピアノ演奏付き休憩所)」で、 今後の学習会のあり方についてうかがうことにしました。 「BGMの小部屋」は、当日午前11時~午後12時半に開かれてい ます。昨年度と今年度の家族学習会に1回でもお申し込みまたはご参加 くださった方は、時間内にご来場のうえ担当者を囲んで近況や学習会の あり方に関するご意見を交換くださいますようご案内いたします。 詳細は当スタジオにお問い合わせください。 ヒューマン・スタジオ ── ◆ 今 月 の メ ニ ュー ◆ ─────────────────── ■ コラム:「肯定」とはどういうことか □ カコラム:137号『角をためて牛を殺すな〔中〕』 ■ 来月のスタジオ: □ ごあんない ━━・● コ ラ ム ●・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「肯定」とはどういうことか ─────────────────────────────────… 前号のなかで、不登校児やひきこもり青年に満たされていない感情と して「自己肯定感」を例に挙げました。 そして、親御さんが「それでいいんだよ」「否定することないよ」な どと本人に言っても、それで自己肯定感がよみがえることはまれだから、 言葉で伝えるのではなく「常に家族の一員として認め、大切に思ってい る」という態度と接し方に徹すること、言い換えれば“肯定オーラ”を 送ること、と提案しました。 では、なぜ言葉で肯定しても自己肯定感をよみがえらせることが難し いのでしょうか。 ご存知のとおり、不登校児は「学校に行けない自分」を、ひきこもり 青年は「社会に出られない自分」を、それぞれ否定します。 「自分はおかしい」「悪いことをしている」「ダメ人間」「何やって も無駄」「どうせ自分は○○だから」等々。 このような青少年への対応のあり方のひとつとして「肯定する」と言 われることがあります。 つまり「自己否定している本人を周囲が肯定することによって、本人 の自己肯定感を取り戻す」というわけです。 そこで、親御さんなど周囲の人が、自己否定感にさいなまれている本 人に対して「そんなことないよ」「あなたは大丈夫だよ」「考えすぎだ よ」などと励まします。 これらの発言をひと言でまとめると「自己否定するな」ということに なります。そしてその意味は「本人の自己否定感を否定する」であるこ とにお気づきいただけると思います。 つまり、対応としての「肯定」とは「本人が否定しているものを否定 してあげる」という考え方です。 もちろん、そう言われることで自己肯定感を取り戻す青少年もいます が、往々にしてそうは受け取らないのが、彼らの傾向でもあります。 なぜなら、先ほど例に挙げたような彼らの言葉は、彼らの「自己認識」 であり、否定的なのはその内容であるにすぎないからです。 言い換えれば、彼らは自分の現状や先の見通しをまじめに考えて言っ ているのであって、それを否定されると「まじめに考えていることを軽 んじてちゃんと聞いてくれない」と感じてしまうのです。 そのため、彼らは「だってそうじゃないか」「何を根拠にそうではな いと言えるんだ」などと反発するわけです。 周囲の人がかけてくれる肯定の言葉も、彼らには“気休め”や“他人 事”にしか聞こえないのでしょう。 では、彼らの自己認識は正しいのかと言えば、もちろんそうとは言え ません。 165号でお話ししたように、不登校やひきこもりそれじたいが否定 されるべき生きざまなのではなく、社会の価値観からの影響によって否 定されるべきことだと思わされている、というのが本当でしょう。 「だからそういうことを伝えて、自己肯定感を取り戻してほしいんじ ゃないか」というわけですよね。 「わが子が否定的な言葉を漏らすと、肯定的な言葉を返したくなる」 というのが、親御さんの心情だということもわかっています。 しかし一方、彼らの自己認識は、それまでの人生で培われてきた感じ 方や考え方から出てきたものです。誰でも自分の感じ方や考え方は大切 であり、簡単には否定されたくないものですが、彼らはなおさら、自分 の感じ方や考え方を否定されたら立つ瀬がなくなるわけです。 では、どうすればいいのでしょうか? 私が考える「肯定」とは「否定しない」ということです。 たとえば「本人の自己否定感を否定する」ことは、そのとおり「否定」 なのです。否定の否定は「肯定」ではなく、やはり「否定」です。 それなら、本人の自己否定感を肯定するのか。 もちろん肯定はしません。でも、否定もしないのです。「今の本人は そういう感じ方考え方しかできない」ということを認めるのです。 すると、親御さんは「わが子が否定的な言葉を漏らしても肯定的な言 葉を返さない」ことになりますから、返答に窮して「そうかなあ?」と いう“疑問”か「自分には何とも言えないなあ」という“逡巡(しゅん じゅん)”か、そのあたりのことしか言えなくなります。 本人からは「はっきりしろ!」と言われるかもしれません。ただ“気 休め”や“他人事”にしか聞こえない肯定的な言葉よりは、はるかに肯 定的に伝わりますし、何より「聞いてはもらえている」という安心感が 芽生えるのではないでしょうか。 ただし、このように“気のきいたことしか言えない”というのは、親御 さんにとってたいへん苦しいことでしょう。 そこで、前号でお話しした「“肯定オーラ”を送る」ということが重 要になってくるのです。 つまり「言葉」ではなく「態度」「接し方」によって、本人を肯定し ていることを伝える、ということです。 これは、本人の存在じたい――“不登校・ひきこもりの部分以外”で はなくすべて――を肯定することによって、常日頃から一般の家族と同 じような関係とコミュニケーションを続ける、ということです。 もちろん、本人の状態がそれをやりにくくさせている面もあり、徐々 に進めていく根気が必要です。ただ、その積み重ねの日々は、いずれ本 人の表情に、態度に、よい変化をもたらすことでしょう。 :筆者:丸山 康彦(まるさん) スクールソーシャルワーカー(訪問子ども援助職)。高校時代、 不登校と留年の末、入学7年後に卒業。高校講師・ひきこもりを経て、 1999年4月に個人事務所「教育対策研究所」を開設。2001年10月に 当ヒューマン・スタジオを設立し代表に。 ━━・● カ コ ラ ム ●・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 角をためて牛を殺すな〔中〕 ─────────────────────────────────… 家庭生活を楽しむことから もともと、不登校やひきこもりというのは、親御さんをはじめとする ご家族には容認できない行動ですから、当初は本人とほかの家族が対立 関係になることが多いのが当然です。 この段階では、家族は本人を肯定的に見ることができませんから、前 号で述べたような自己肯定感も生きる喜びも、本人は決して感じること はありません。これでは、状態が良くなるはずもありません。 このような状況で「わが子の現状を受け入れ、まずもとの家族関係を 取り戻すことから始めよう」と考えるようになる親御さんがいます。 わが子を「学校や職場に通う」以前の「一緒に生きている」「生活を 共にしている」存在すなわち“家族の一員”として再認識し、そういう 最も基本的なレベルでのつきあいに専念するようになるわけです。 すると、本人は家庭のなかで自分の存在が肯定されていることに気づ いて気持ちが安定し、家庭は平穏を取り戻します。すると、家族は本人 が不登校やひきこもりになる前の良好な関係に戻っていきます。 ――137号(2007.2.7)から抜粋 ━━・● 来月のスタジオ●・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 活動を順次新設 ─────────────────────────────────… ◎新ホームページと電話相談の運用開始、そして・・・ 本欄で再三お知らせしている「ホームページのリニューアル」と「電 話相談の準備」は、遅くとも来月には運用開始にこぎつけます。 そのあと、民家内のフロア「悠生館」での新装開業1周年ということ で、当事者またはご家族の居場所や庭づくりなど、同館の環境を活かし た業務を順次新設するスタートの月にする予定です。 ◎「ヒュースタ通信」第25号発行 当メルマガのコラムを連載している「不登校・ひきこもりを変えるっ て?」もいよいよ佳境。第6回を掲載します。ほかにも「青少年支援セ ミナー」などの告知や、久しぶりに「他団体耳より情報!」を掲載予定。 代表の都合により来月中に発行します。ご関心ある方は年間予約購読 をどうぞ。 ━━・● ご あ ん な い ●・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ────────────────────────────────… ◎ 当メルマガ執筆者丸山が代表をつとめる教育相談機関・・・ 「ヒューマン・スタジオ」は、 スクールソーシャルワークという援助法にもとづき、面接のみならず、 相談員自ら家庭や学校を訪問し、本人を支えつつ周辺状況を改善する ことで、当事者主体の問題解決をめざしています。 詳細は「ヒューマン・スタジオ」のホームページでご覧ください → http://homepage3.nifty.com/Husta/sodan/ ──────────────────────────────── …─── ★ 次回発行は2009年10月14日です。お楽しみに ★ ────… ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ : ご か い の 部 屋 ~ 不登校・引きこもりから社会へ ~ : 2009/9/9 NO.169 (発行:第2水曜 月1回) ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ □発行・執筆者:丸山 康彦 □発行元:ヒューマン・スタジオ http://homepage3.nifty.com/Husta/ □ご感想ご意見お便り http://homepage3.nifty.com/Husta/mail_cc.html □メールマガジン購読解除 http://homepage3.nifty.com/Husta/maga.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ == (C) 2007 Yasuhiko Maruyama@Human Studio, All Rights Reserved.== 当メールマガジンは『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/より配信しています バックナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000098424


