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2008/10/03

詩人・小山正孝の伝言

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 詩人・小山正孝の伝言   NO.229    2008.10.2
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   第5回感泣亭例会

 時   11月15日(土)午後2時〜5時

 場所  ファルマルシェ青山(青山一丁目下車2分)

 会費  2千円

 関心のある方は、fwis7893@mb.infoweb.ne.jpまでご連絡下さい。

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 9月25日発売の「暮らしの手帖」に小山正孝の詩「山居乱信」が紹介されます。

 どうぞ、ご覧下さい。

 
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   風の音

杉浦明平の研究家 若杉美智子さんから「風の音」をいただいた。

既に七号である。

文化というのは、こうした地道な作業によって積み重ねられるという

ことを痛感する。

この「風の音」を読んでいつも思うことは、若杉さんの生活の豊かさだ。

もちろん経済的な豊かさという意味ではない。

「ご挨拶」から始まり、「ぶんがく逍遥」から食の話題、旅の話題、

図書館の話題、緑のカーテンの事など、表紙を含めてわずか16ページの

小冊子がまるで「総合雑誌」に思える。

食の話題は、鰺のたたきの話から野菜の価格の高騰にまで及ぶ。

選挙が近いらしいが、政治家諸君に読ませたいものだ。

常念岳に登った話を読むと自分も一緒に登っているような気分になってしまう。

一度読んでみたいという方がおられたら、とりあえず、感泣亭

fwis7893@mb.infoweb.ne.jpまで連絡して欲しい。


先日、小山正孝の兄の小山正忠氏に話を伺った。

正忠氏は、現在95才になるが、お元気で、かくしゃくとされている。

その正忠氏と明平さんは、一高で同窓だった。

「ああ、明平のことはよく知っているよ」

この事は初めて聞いた。かの伊藤律も同じ学年だったらしい。

正忠氏曰く、

「プロレタリア文学を読むのは、当然。フォイエルバッハ論の研究会

が公然と行われたり、それが当時の雰囲気だった。」

正孝は、弘前高校の校友会雑誌の小説を明平さんに認められるわけだが、

そのことを兄貴の正忠氏はあとで知ったと言う。

この兄弟はおもしろい。

兄は、四中・一高というエリートコースを辿るが、弟の正孝は、府立四中で

二回にわたって落第をする。

一年生で一回、四年生で一回というわけだ。

その辺りのことは、小説集「稚兒ヶ淵」に収録されている「少年時代」で

正孝自身が述べている。

「小説」だからすべてが本当というわけではないが、「非行」少年の心理を

これだけ的確に表現したものはめずらしい。

入れる学校を探して、正孝は、弘前高校へ行く。静岡を受けることも考えたらしいが、

「あそこは、体を悪くした秀才が受けるから・・・」

という理由で忌避したらしい。

四中には、「流れ流れて落ち行く先は、北は弘前、南は高知」という

言葉があったという。

どんなに落ちこぼれでも、どこかの高校に入学できるという点では、

四中はたいした中学校であったとは言えよう。


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  山居乱信

 

 1

僕の家は破れ家だが

窓ガラスは透明にみがいてある

夕刻から雪がふりはじめた

「そろそろ電気をつけませうか」

家の者が聞く

片手を振つて僕は

「しばらくかうしてゐよう」

と答へた

 

 2

僕は椅子にもたれて

机の上のテープレコーダーの方に手を伸ばしてポタンを押した

しぱらくの時間

「何も音がしないわ」

「いいんだ」

夏の夕日 波の音

風の音をテーブは現はしはじめた

僕は録音した時のことを思ひ浮かべた

かすかな砂の上の足音

少しひきずるやうな足音

それは短かい時間流されてゐたが

擦過音がして 今度は別の海の波の音

はげしく砂が吹きつける

ドドーン ドドーン

「あの時ずいぶん荒れてゐたのね」

家の者が言ふ

 「ほら犬の吠き声も入つてゐるだらう」

岩石の多い浜だつたので

波がひく時 水は青く深く沈んだ

僕はテープを止めた

窓の外の雪は ずいぶんはげしい

垂直に落ちるのは夫々が白い糸

もつれるやうにぶつかつて雪は一本の線

もし もう少しテープをつづけたら大変だ

また静かなはじめの海岸の録音が出て来て

すすり泣く女の声がきこえるのだ

 

 3

僕は椅子にもたれて

机の上のテープレコダーの方に手を伸ばしてボタンを押した

静かな音楽が流れはじめた

 「この曲はいつおいれになりました」

 「いつだつたかなあ 相当前だな」

ぷつんと切れてしづかになつた

急に けたたましい蝉の声が室内になりひびいた

みーん みーん

不思議な顔をしてゐる家の者をさげすむやうにして 僕は耳をすました 

僕は一人で砂利道を歩いてゐた 砂利を踏む僕の足音が入つてゐる 

僕が聞くと 僕にはかすかなもつれるやうなもう一つの

 足音がきこえてくるのだ

「ずいぶん啼くものね」

窓の外の雪は ずいぶんはげしい

垂直に落ちるのは夫々が白い糸

もつれるやうにぶつかつて雪は一本の線

あの時の唇の色

豊かな緑の木立

室内に満ち満ちてゐる蝉の声

捲き戻してもう一度きくことにしよう

 

 4

今は 道に立つだけでその家でどのチヤンネルを見ているのかがわかるといふ 

僕には僕の破れ家に面した道に誰かが一人立ちつくしてゐるのがわかる 

雪を浴びながら 瞳を凝らしてこちらを見つめてゐることがわかる 

さあ 電気をつけようではないか


                       詩集『山居乱信』より

         ※「山居乱信」は、同名の詩が4編ある
          「暮らしの手帖」に紹介されているのは違う詩である
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   ★ホームページ「感泣亭・詩人小山正孝の世界」
     
       http://homepage3.nifty.com/kankyutei/ 

      坂口昌明氏のページを更新しました。

   
  
   ★ 小山正孝著作集

         「感泣旅行覚え書」  3500円
         「詩人薄命」    3500円         
     「未刊ソネット集」 4000円         
      小説集「稚児ヶ淵」 4200円
     「小山正孝詩集」  1200円
     「立原道造詩集」(小山正孝編)1400円  
     
     「感泣亭秋報一」   500円  
          「感泣亭秋報二」   500円  

   ご希望の方は、管理人fwis7893@mb.infoweb.ne.jpまでご連絡ください。
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立原道造記念館
●2008.10.7-12.23 秋季企画展
 「立原道造の世界6 書簡を中心として[前期]」
  詳しくは、

  http://www.tachihara.jp/ をご覧ください。
 
  立原道造記念館の場所は、地下鉄千代田線根津駅下車7分
  東京大学弥生門の前です。電話 03-5684-8780

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