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ぷろこんエッセイ:現役コンサルタントによるワイルドな本音エッセイ。成功するための3つの要素「知識」「PJ運営スキル」「リーダーシップ」から、プロジェクトの成功・失敗の本質を毎号本音で語ります。

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2007/12/24

ぷろこんエッセイ 第144号 台所の女神

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現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ
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第144号 台所の女神
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 そういえば、シンディ・ローパーに会ったとき、彼女がこんな話をしてた。
「私は、迷いごとがあると、いつも使っているお皿を、“かわいいね、かわいいね”
って洗う。そうすると、ものすごく、その大切さがわかってくるのよ」って。
  土屋アンナ(モデル、女優、歌手)インタビュー 
 『自分やまわりの人を愛せない人に、いい仕事なんてできない』 
                      エココロ No.21 2008年1月号

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 女の強みは台所があることである。

 昔台所は、北側のどん詰まりにあった。たいていは家の中の通り道ではなく
動線の奥まった場所にあった(今では家の真ん中にある家も多いが)。奥まって
いる上に料理はたいていはひとりでやる。ひとりで迷いごとを考えるにはうって
つけな場所である。成績の上がらない子ども、嫌みたらしい姑、働きの悪い夫、
解けないクロスワードパズル、10円も値上がりしたワイシャツクリーニング・・・。

 迷いごとがある主婦を描くTVドラマでは、よく水道から水を出しっぱなしに
して想いにふける姿を描いたり、不吉な予感としてお皿を床に落としたり、はた
また激高した主婦が、冷蔵庫の中のものを片端から放り出す、そんな描き方が
される。迷いの表現が生活の具体的なモノで描かれる。小道具は水、シンク、
お皿、鍋、食器棚、調味料、おたま、冷蔵庫・・・。

 台所では迷いごとを持ちながらも活動し、アウトプットを出さなくてはならない。
買い物した品をしまう。調理の準備にとりかかる。洗ったり切ったりゆがいたり
焼いたり・・・。そこから家族の食料が生みだされる。悩みは里芋の皮むきでも
落ちきらないかもしれない。だが「主婦は洗い物があるから嫌よ」と日課のフレー
ズをこぼしながら、食器を洗って片付けなければならない。深い迷いや悩みが
あれば、煮つめすぎたり、コゲすぎたりして、悩みが色に表れるのも台所の特性
である。

 それにくらべると、男の書斎での悩みの表現は具体性に乏しい。「う〜ん、サブ
プライムが・・・」とつぶやく。台所から「それがどうしたのよ?」と声が飛んでくる。
「う〜ん、だから10兆円も・・・」とつぶやいても「だからそれがどうしたのよ」
と切りかえされるのがオチだ。男の活動はこのエッセイのように、思いいれだとか
思いこみだとか、とかく抽象的なのだ。説明しないとわからない。説明しても
わかりにくい。台所発のアウトプットと違って、書斎からのアウトプットはかたち
がなく、美味しくもなさそうに見える。

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 台所には迷いを忘却させる作用もある。

 料理をしていると仕事を忘れることができる、と言ったのは同僚のCherryさんだ。
それはなぜか。料理はぼうっとしていると段取りを間違えて失敗する。分量を量り
間違えてとんでもないものができる。たまに作るレシピなぞとくにそうだ。だから
集中しないとだめなのだ。

 冷蔵庫を開けたら、賞味期限間近の鶏の挽肉が500gもある。よし今夜は鶏団子
と、大根と鶏そぼろあんかけをつくろう。鍋を二つ用意して、片方で鶏団子を作り、
片方で鶏そぼろあんかけを同時に。あらら・・・片栗粉とコンソメをテレコに入れ
ちゃった!なんていうのは悩みがなくてもやりそうだが(笑)。

 料理には段取りや手順を一心不乱に考えるという精神上の効用がある。そう
しないと料理がつくれない。悩んでいるうちにどんどん火が入ってしまうから、
手順どおりにバシバシ進めないと。迷っているヒマなぞない。

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 昔の日本の台所は土間であった。土間にもまた迷いを打ち消す効果がある。

 わたしの実家は建て替える前の古屋のころ、台所は一段低かった。土間の
名残りの建築だったのだろう。昔かまどを置いた場所、つまりガスコンロの前だが、
台所全体の床から20センチ、いや30センチほど低かった。せいぜい1畳ぐらいの
スペースだった。

 そこに降りると「料理をする」という心理になるから不思議だった。とはいえ、
小学生時分だから、せいぜいインスタントラーメンやソバぐらいを湯がくぐらいだ。

最近、台所をわざわざ土間にする家もあるという。その理由は「土間だとしっかり
と動ける」からだという。台所仕事が本格的になるような感じがするという。実家の
影響もあってそれを何となく理解できる。土間に降りる。料理を作る。それだけを
“くぼみ”でキビキビやる。

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 どうも男は抽象的に悩む癖がある。女のように具体的に悩めない。

 新事業を例にとろう。男が気にするのは世の中のトレンドや集客モデル、
そして収益モデルである。見えないお客さんをひたすら想像する。顧客創造シナ
リオなどとよくわからない造語に踊る。そしてエクセルでカネ勘定だ。どうも
そんな書斎型の思考が強い。

 一方女が気にするのは、自分の気持ちである。"私”が楽しいかどうか。私が
楽しければきっと人も楽しいはずだ。楽しさの素はどこにあるのだろうか。もっと
楽しんでもらうにはどうすればいいだろうか。この楽しいを“美味しい”という文字
に変えると台所の手順に似ている。女は気持ちから入るのだ。

 生活に根ざしたニーズから起業をする女性が多いのは偶然ではない。何しろ
具体的な悩みからの起業発想なのである。男のように熱にうなされて突っ走る
ことも少ない。いくらアタマに血が上って、ガスコンロに火を点けてガォ〜っと
ゴジラのように叫んでも、すぐ手元にある水で冷やすことができるから。

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 男子厨房に入る、という言葉は好きではない。男子が非日常空間たる台所に
入り、たまに凝った料理をして、日常である仕事にヒントをもたらす、そんな男
視点の匂いがするからだ。そんなことだから洗いものをやらないのだ、男は。
そんなことだから、女と違って一心不乱になれないのだ、男は。

 あのユニークな口の歌姫、シンディ・ローパーさんのように一心不乱にお皿を
洗おう。迷いをなくして具体的なユニークなアウトプットを出すためにも。その
エピソードが土屋アンナさんという独特の存在感のある女性から語られたのも
ちょっと意外だったけれど、きっと彼女も台所の効用を知っているのだ。

抽象的な妄想に取り憑かれたら、台所から発想してみよう。最近、久しぶりに
台所で料理をしたので、そんなことを思った。

2007年12月24日発行

【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】
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【Business Media 誠 新連載 “うふふ”マーケティング】毎週木曜掲載
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