2007/11/26
ぷろこんエッセイ 第142号“好き”を仕事にする思考法
■□■■■■■■□■□■□ ぷろこんエッセイ ■□■□■□■■■■■□■ 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 第142号“好き”を仕事にする思考法 ---------------------------------------------------------------------- カントリーシンガーの法則を知っているだろうか。故郷を思い、故郷で過ごす ことの素晴らしさを歌うのがカントリーシンガーだが、熱をこめて歌うあまりに ヒットしてしまう。ヒットするとファンが住む都会へ演奏ツアーに出なくてはなら ない。故郷を想い故郷を歌うほど、故郷から離れていくという哀しい法則が カントリーシンガーの法則である。 この法則には職業選択のアイロニーがある。好きな仕事を選びなさい、好き こそものの上手なれだから。これは正しい。だが好きだから選んだ職業も、 実態は自分が思い描いていたものとは違って次第に流されてしまうこともある。 好きから始めたのに、続ければ続けるほど原点から離れていく。 運よくヒットを飛ばしてもやがて原点を志向せざるをえない。運少なくヒットを 飛ばせなければなおさら原点に立ち戻らなくてはならない。田舎と都会を 行きつ戻りつするカントリーシンガーの姿は、原点乖離と原点回帰が、 職業選択の根底にあるのを示している。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 『13歳のハローワーク』という本が売れたのはしばらく前である。就業ができず ニートが増え、ドロップアウトする若者が増えたのが背景だった。13歳で職業 の原点を考えようというこの運動は、本だけではなくウエブサイトやイベントで 根強く続けられている。 2007年8月の夏休みに「13歳のハローワークマップで仕事探しの旅に出よう!」 というイベントが六本木ヒルズで開かれた。そこに中学生とその保護者ら300名 が来場して、好きなゾーン(料理・お菓子、テレビ・映画・音楽、ファッション・ ビューティ、デザイン・アート)を選んで、グループに分かれた。 その道で職業に就いている人が自身の体験からの講義をして、職業のおもしろ さを子供たちに伝えた。職業のイメージを膨らませてから各グループで「ハロー ワークマップ」づくりを行った。 参加者はグループごとに1枚の紙を渡され、自分が最も興味・関心を 持っている物事と、その興味・関心事を活かせる職業を星型の付箋に 思いつく限り書き出し、1枚の紙に見栄えよくレイアウトしていった。 出典 http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/09/04/hellowork/index.html 模造紙の真ん中に「テレビと映画と音楽」という大きなくくりがあり、その周りに それに関係しそうな職業をどんどん書き出して貼ってゆく。好きなことにまつわる 職種を考えることで、職業への具体的な考えが深まっていく。自分が何をしたい かを図解することで、自分の関心の場所がほんとうはどこにあるのかを考えさ せる、素晴らしい手法である。 家でもハローワークのマップには触れることができる。13歳のハローワークの ウエブサイトでは、簡便に「音楽が好き」「旅が好き」など“好き”から職業を紹介 している。“好き”にまつわる職業がどんなものか、おもしろおかしく解説している。 その中に『何も好きなことがない子のために』という項目もあり、クリックすると 『エッチなことが好き』というサブ項目があった。思わずクリックしたら『セックスの ことやエッチなことを考えると興奮してしまって、他のことが何もできなくなると いうこと。こういう子は、意外に多い(ハイ)。程度の差はあれ誰だってエッチな ことは好きなのだ』とあり笑ってしまった。 さらに職業へののガイド文は『エッチなことが好きな子は、想像力が豊かな場合 が多い。そういう子は表現することに向いている。(中略)だがエッチだけでは 小説家や芸術家にはなれない』とあった。ハイそうです。 ハローワークマップづくりとは“好き”という原点と社会の職業を結びつける、 「好奇心、好き発見、仕事の想像」である。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ ベストセラー『ウェブ進化論』の著者梅田望夫氏の新著『ウェブ時代をゆく』は、 副題が「いかに働き、いかに学ぶか」である。 この本の眼目は「ロールプレイ思考法」である。それは自分の好き/志向性を 発見する思考方法である。自分が好きなこと、好きな場所、好きなアイドル、 好きな本などの真ん中にあることを読み取って、自分の志向性を発見する。 梅田さんは長らく経営コンサルタントをしている。そのきっかけは「シャーロック ホームズ」だったと書いている。自分はどんな職業が向いているのだろうと考え たとき、自分の仕事観は「探偵業ホームズ」であるのに気づいた。 探偵業とは何か。「ある専門性が人から頼りにされ、急に忙しくなり、依頼が 片付くと急にヒマになる」。自分はそういう仕事を志向しているのだということに 気づいた。その仕事は経営コンサルタントであった。氏は自分自身の「好き」 を構造的に分析するようになった。どんな本が自分に信号を発しているか、 それを構造化できれば、自分の“好き”の原点、本質がわかる。わかれば成功 しやすい。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 自分の深層心理を構造化するこの思考法は素晴らしい。さっそくわたしも 今の職業(コンサルタント)をどのように観ているのか、考えてみた。 わたしの経営コンサルタントのイメージは『夕陽のガンマン』である。若い人は 古い映画をまったく知らないのに驚くが、クリント・イーストウッドの西部劇で、 スゴ腕のガンマンが流れ着いた先で、どうしても懲らしめるべき悪漢を仁義で 倒して、銃口の煙をフッと吹いて、何を誇ることもなく、苦虫を噛み潰した顔で、 静かに立ち去るのである。 流れ者のイメージとは、さまざまな地をさすらうこと。仁義とは契約だけで働く こと。銃口とは本質を射抜くこと。フッと煙を吹いて立ち去るのは、依頼主と 密着したくないこと。何も誇らないという高楊枝ぶり。わたしのコンサルタント 仕事観である。 この「コンサルタント=夕陽のガンマン説」を、あるクライアントにぶつけたこと がある。言いたかったのは「コンサルタントとはお客さんにしがみつかずに、 やることをやったら、さっさと立ち去ります」だったが、その会社の専務曰く、 「じゃあ郷さんは(仕事を引継ぎなく)いなくなっちゃうんですか?」と切り替え されてしまった。 John Grisham氏の法律スリラー小説『路上の弁護士 The Street Lawyer』 も理想像である。お金の持ち合わせがなくて高額なフィーを弁護士に支払う ことができず泣き寝入りをする庶民のためにひと働きをするという弁護士の 話である。安いフィーで働く清貧さを強調するのは偽善的だが、大企業より 中小企業、あるいは個人ビジネスを助けたい、うれしい顔の見える仕事が したいのは、わたしのコンサルタント観である。そんなんで喰っていけるのか とも思うし、きれいごとと言われかねないけれども。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 若年層にとってハローワークの夢は広がっているのだろうか?慶応幼稚舎の 一貫学校設立のニュースに触れ、それを好意的にとらえるメディアの論調 に接すると、むしろ学歴で収入格差を約束することを是とする傾向が強まっ ているように思える。 だが頭だけで働こうとすると、身体が嫌がるのである。出社拒否や病気や ウツや脱力感やキレたりする。そうならないようにするためには、自分の “好き”の原点を知り、原点と現在の距離を測り、どう縮めるかだと思う。 2007年11月26日発行 【新著『顧客視点の成長シナリオ』 経営を考える秋の夜長に!】 http://www.firstpress.co.jp/ 【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/ 【Business Media 誠 新連載 “うふふ”マーケティング】毎週木曜掲載 http://bizmakoto.jp/ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 発行者 郷 好文 連絡先 gowild@gol.com ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000096057.htm からできます。 ----------------------------------------------------------------------


