2007/11/12
ぷろこんエッセイ 第141号 セーターの呪いと大蛇マフラー
■□■■■■■■□■□■□ ぷろこんエッセイ ■□■□■□■■■■■□■ 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 第141号 セーターの呪いと大蛇マフラー ---------------------------------------------------------------------- セーターの呪いと大蛇マフラー その二、編む方も贈られる方も、「手編みのセーター」という意味深な贈与が かかわる関係を重く評価せざるをえなくなり、その重さをお互いがうっとおしさ を覚えるようになる。 『セーターの呪い 〜 モードの方程式』 中野香織 日本経済新聞 2007年11月2日 £££££££££££££££££££££ 男の兄弟は似た者同士に育つということは、ほとんど聞かない。兄弟2人を 知る他人のひと言目は「ほんとにお2人は兄弟ですか?」であり、二言目には 「まったく似ていませんねぇ・・」なのである。片方は外交的で、片方は内向的、 片方がスポーツ万能で、片方がスポーツ無能という正反対なことが多い。 わたしと兄もご他聞に漏れずで、180度違う性格である。性格よりも決定的な 違いは、兄はモテて、わたしはさっぱりモテなかったことだ。スポーツも万能で、 よく気がつく(言い方を変えれば調子の良い)兄は、モテにモテた。中学生の頃 からモテモテで、それは高校でも大学でも継続し、社会人になってもでも続いた。 うらやましかったが、それなりに‘女人事件’も起こしていたから、因果応報だと 密かに溜飲を下げたこともあった。 わたしが中学生の頃だ。兄とは2つ違いだから、彼は中学生か高校生になった ばかりの頃のことだった。季節はちょうど今頃、秋の深まる頃あいだった。 兄のビニールロッカー(ジッパーでジ〜っと引き上げる衣服入れ)の下に、 見慣れない大きな手提げの紙袋が見えたのだ。その袋から、なにやら白い モコモコが飛び出している。 兄がいないときを見計らって、ジャっとロッカーを開けてみると、それは手編み の毛糸だった。太くて真っ白な毛糸のマフラーだったのだ。 そのサイズが巨大だった。ちょうど見世物小屋の蛇づかいのオンナが首に巻く、 伸びきった大蛇のようなのである。背丈の2倍ほどはあっただろう。これを編む のに何時間かかっただろうか?いったい誰が製作したのだろうか?(当時噂の あったT女だったのだろうか?) 兄はこれを巻くのだろうか?学校に行くときに は巻けないだろうな・・・。巨大なマフラーから疑問がいくつも湧いた。 後日談だが、結局そのマフラーは一度も使われた形跡を残さず、兄は引越 したときに持ち去らず、母かわたしかのどちらかが厳かに処分したように思う。 ごめんなさい、製作女さん。 2人分は優にあろう長さだから、そのマフラーの手づくり製作者と兄が並んで、 2人で巻き合って歩いたというような、そら恐ろしい伝説も残ってはいない。 £££££££££££££££££££££ 引用した服飾史家の中野香織さんのエッセイがトリガーになって、兄の大蛇 マフラーを思い出した。 中野さんのエッセイのその一は「編む方はセーターに夢中になるあまり、肝心 の恋人へ向けるべき関心が薄れる」、その三は「セーターを贈られた方は、 小さい頃におばに編んでもらったセーターを思い出して、恋人とおばが交錯 して愛情が薄れる」である。 『セーターの呪い』はずいぶん昔から語り継がれる現象のようで、中野さんの ご指摘以外にも「編んでいるうちにタイミングを逸する」「関係修復のために 編む(だが結局は・・・)」「もらって好みに合わないと、編み手とも合わないという ように思う」さらに「毛糸にアトピーなのを知らずに編まれて破綻した」などなど、 手編みは止した方がいい、セーターを編むと恋は破れるというアドバイスが 欧米には伝わる。 参考 http://en.wikipedia.org/wiki/Sweater_curse たしかに、セーターや大蛇マフラーはちょっと・・・と思う。もらったことがない ヒガミじゃない。手袋ならいいかな、とも思ったが手袋だとむしろ意識が強く なりそう。手袋より冷たい手同士を重ねて温めあいたい、そんな淡い期待の 方がリアルなのだが。 £££££££££££££££££££££ セーターの呪いは恋人同士だけでなく、クライアントとコンサルタントの関係に もあてはまる。一品モノが、必ずしも喜ばれないのである。 「あなたの企業にだけ」という手編みのように手厚いコンサルティング・サービス と、「他の企業にも似たものを提供します」という既製品型のコンサルティング・ サービスがある。 業界の外の人にとって、コンサルティングが「手編み」なのか、「既製品」なのか わかりにくいと思うので、ごく単純に解説をする。一般に外資系コンサルは 既製品ないしパターンオーダー型である。国内系は手編みかカスタマイズに 近いところが多い。ITコンサルはほぼ既製品型である。導入システムがパッケ ージばかりだからだ。 高い料金を払うのだから、「一品モノ」が喜ばれそうだと考えがちだが、それは違う。 多くのクライアントは「ウチだけのためにやってほしい」とは言わない。むしろ 既製品でいい、ヨソでやってきた事例を聞かせてくれというのである。 それは「セーターの呪い」に似た思いがあるからなのではないか。決して費用面 だけではない。アイデアが枯渇して飽きられるからだけではない。手づくりだと 関係が重たくなり、「あなただけ・・・は重い」という心理が働くのである。 £££££££££££££££££££££ サービスする我々側は往々にして、「あなただけ」と頑張ってしまう。クライアント のことを来る日も来る日も考え、ああしたらいい、こうしたらどうかと考え続ける。 考えたことをぶつける。そのアイデアになびかないと悲嘆に暮れる。なんてこの クライアントは合理性が薄いのか!と雄たけびさえ上げる。 実はクライアントは、私達の「手づくりのアイデア」に押しつぶされているの かも知れない。大蛇のマフラーにぐるぐる巻きにされるのを恐れているのかも 知れない。私達はクライアントを見ずに、ひたすら手編みのアイデアをつむいで いないだろうか。 ならばパッケージ型のサービスがいいか。必ずしもそうではない。まず手の 長さや丈が合わない、首周りがきつい、色合いがちょっと・・・ということもある。 売り手は「これが業界標準なんです、使っているうちに馴染んできますよ」と 言うが、鏡に映った姿は「案山子にだぶだぶセーター」という事例も、高額な システム案件を中心に見られる。 £££££££££££££££££££££ 大蛇マフラーもだぶだぶセーターも編まないようにするには、どうすればいいか。 それは寸法測定の技術を高め(課題抽出)、デザインの好みの聞きとり力を高め (実現ゴールの把握)、美と用を兼ねる衣(既製と手づくりの最適なミックス)の 型紙を作ることである。型紙をクライアントに渡して、企業のかたちを、自ら引か せることが大切なのである。 型紙に引く線が曲がったら、お客さまの素肌の手に、素肌の手を添えて「曲がっ てますよ」とガイドをする。素肌とは本音である。やはり素肌のふれあいが一番 なのだから。 2007年11月12日発行 【新著『顧客視点の成長シナリオ』 経営を考える秋の夜長に!】 http://www.firstpress.co.jp/ 【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/ 【Business Media 誠 新連載 “うふふ”マーケティング】毎週木曜掲載 http://bizmakoto.jp/ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 発行者 郷 好文 連絡先 gowild@gol.com ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000096057.htm からできます。 ---------------------------------------------------------------------- ==[ ▼PR ]========================================================= 「ぷろこんエッセイ 〜 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・ エッセイ」 コンサルティング・プロジェクトの成功・失敗の本質を、さまざまな角度 から毎号本音で語ります。オモシロおかしく足掛け5年目に突入! ★http://www.mag2.com/m/0000096057.htm ☆ ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ========================================================[ ▲PR ]===


