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2007/10/15

ぷろこんエッセイ 第139号 HONDA PUYO モビリティの革新

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現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ
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第139号 HONDA PUYO モビリティの革新
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「自動車をもたない生活」「自動車のない住宅」の底にある哲学は、クォリティ・
オブ・ライフ(騒音、排気ガス、自動車の危険にわずらわされない快適な居住
空間、セイブマネー(自動車所有や駐車場にかかる費用を節約)、セイブタイム
(渋滞や駐車場さがしの時間を節約)、フリ−ダム(場合に応じて列車、自転車、
タクシー、カーシェアリングと選べる自由)だと言う。
『ドイツを変えた10人の環境パイオニア』 今泉みね子 白水社

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この車の報道を見たときは(20数年ぶりに)モーターショーに行きたいと思った。
それはHONDAのコンセプトカー「PUYO(プヨ)」である。

写真はこちら【CARVIEW】を見てほしい。
http://www.carview.co.jp/tms/2007/preview_car/honda_puyo/default.asp?p=17

この昆虫のようなスタイルの車は、全長2.8mで4人乗り、燃料電池で走行させ、
走行状態を車体の色の変化で表すという。何色あるのかどう変わるのか知ら
ないが、スピードが出てくると真っ赤、止まると緑、電池切れだと黄色かしら?

ボディはシリコン製で、押すとプヨっと沈みこむ柔らかさ。もしもの場合に他の
走行車や歩行者にやさしくするためとされる。ショーでは現物に指タッチができる
のだろうか?また紹介するコンパニオンの女性は、笑うとエクボのある人をぜひ
起用してもらたいたい。エクボには指タッチできませんが。

HONDAのウエブサイトにはPUYOの【動画紹介】がある。
http://www.honda.co.jp/motorshow/auto/index.html

それを見ておもしろかったのはステアリングホイールが無いことだ。左右への
操作は、右ドアパネルにおかれたジョイスティックでやる。スティックでオートマ
操作とハンドル操作をすべて行う。ステアイングが無いインテリア・・・それは
かつてない運転席からの解放感がある。メーター類も走るとき以外は隠れると
いう発想も新鮮である。テントウ虫のようなスタイルさながら、その場で360度
回転もできるようだから、めんどうな縦列駐車をしなくて済む。

PUYOは、スタイルにしろコンセプトにしろ、従来のクルマのありかたをすべて
否定しているから、男性のクルマニアには不評かもしれない。だがすでにピーク
オイル(世界の石油埋蔵量/生産がピークに達して下り坂に転じるポイント)を
過ぎたという説が強い昨今であり、酷暑を通じて、多くの人がこのままでは
ヤバイと感じたのが「環境変化実感元年」、2007年である。

HONDAが今回のモーターショーで主張するコンセプトワードは、「この地球で
モビリティを楽しむために」。もはや自動車とは言っていないのである。

きっと20年もたたないうちに、現在のスタイルや装備の自動車は消滅し、移動
手段(のバラエティさ)は大きく変化しているはずだ。その意味でPUYOは、自動
車業界だけでなく、買い手や乗り手の意識を変える起点になるだろう。

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まだ実車を見ぬPUYOのコンセプトを解剖しつつ、何が変わってゆくのか、変わら
ざるをえないのかを考えてみた。

まず作り手にとって「後ろめたさがない」

そもそも自動車は環境悪である。大気汚染や騒音の素、事故や不愉快な運転
者を生む素である。それでも人が自動車が好きなのは、スピードや移動する
ことが爽快だからである。だから環境を汚染しても危なくても乗るのである。
だが作り手はどこかで後ろめたさを感じている。150km出せばスカっとするかも
しれないが、安全面でも環境面でもエネルギー消費面でも、それは善ではない。

タバコ企業もガム企業も環境悪であるが、吸うと発ガンが抑制されるタバコ
(未だ無い)や、噛むと虫歯が抑制されるガム(キシリトールはガムの概念を
変えた)といった開発は、後ろめたさがないがゆえに自由な商品発想が可能
なのである。PUYOを作ることはモビリティ環境(道路や駐車場や交通法規)を
もう一度作り直すことにもつながる。後ろめたくない。

売り手にとって「訴えることがガラリと変わる」

以前トヨタ「レクサス」のカーディーラー研修のビデオを見た。お客さまを迎える
姿勢から、おもてなしやサービス、BMWやベンツとの違いの説明力など、しっか
りとレクサス研修所で教える。高級車ディーラー網を維持するのは並大抵では
ない。

だが性能や品質の高さ、高機能装備、ブランドの差異で商品の違いを訴える
ことが、車ではいつまでできるだろうか?こうしたマーケティングも販売方法も、
20年後にはゴミ箱行きかもしれない。今のタバコのパッケージにあるように、
ガソリン自動車の広告には「地球資源にそむいています、環境には害があり
ます」という文面を入れる時代がやってくるかもしれない。

乗り手にとって車は「走り抜ける喜びではなくなる」。

PUYOの「必要なときに必要な運転情報を提示する」というコンセプトは、速度
やトルクやエンジン温度、空調、GPS、ETC、iPodやサウンドなど、情報処理に
忙しい運転者にとって福音である。「情報処理がやさしい車」は高齢化社会
にもぴったり。

どでかい排気量とブランドイメージ、メカがモリモリの車で「走るよろこび」と
いう価値観はすでに否定されつつある。乗り手=歩き手にとっても、「自動車が
敵でなくなる」方が正解なのだから。

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自己否定からの出発は当面は痛いけれど、企業を強くする。

PUYOは「ガソリンの否定」「鋼板素材の否定」「従来の運転操作の否定」「高速
スピードの否定(くらげみたいに動きそう)」など、自動車会社にとって、いくつも
自己否定がある。

有名なHONDAの社是「作って喜び、売って喜び、買って喜ぶ」。この社是の根本
を変える必要がないが、「何を」の部分は従来の商品を完全に否定しているのが
PUYOである。自己否定商品をショーの目玉出品にできる企業は、ほんとうに強い。

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そろそろモーターショーという名称も変えなくてはならない時期である。あえて
言えば「モビリティショー」になるのであろう。移動ということを、作り手、売り手、
乗り手、持ち手(所有者)から考え直す展示会という内容になるのなら、これから
毎回行ってみたい。

10年後には、カーシェアリングで4人乗りの「PUYO」や8人乗りの「BUYO」(笑)
が街中を走っているといいと思う。

2007年10月15日発行

【新著『顧客視点の成長シナリオ』 経営を考える秋の夜長に!】
http://www.firstpress.co.jp/
【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】
 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/
 【Business Media 誠 新連載 “うふふ”マーケティング】 毎週木曜掲載
 http://bizmakoto.jp/

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