2007/10/01
ぷろこんエッセイ 第138号 わたしの理想的なマーケティング
■□■■■■■■□■□■□ ぷろこんエッセイ ■□■□■□■■■■■□■ 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 第138号 わたしの理想的なマーケティング ---------------------------------------------------------------------- Eating is a multi-modal process (involving all the senses). Any comments concerning food being just about taste are misguided. Try drinking a fine wine from a polystyrene cup or eating a beautifully cooked piece of fish off a paper plate with a plastic knife and fork, it is not the same. 「食べることは全身の感覚をつかう、多様なプロセスである。味覚だけで食を 語れると思ったら大間違いだ。旨いワインでもポリスチレンカップで飲んだり、 美味なる魚料理でも紙皿とプラスティックのナイフとフォークで食べるのでは、 味は変わる」 レストラン「The Fat Duck」 シェフ ヘストン・ブルメンタール氏のHPより ************************************************ 数ヶ月先の予約しかとれない英国の有名レストラン「The Fat Duck」のシェフ、 ブルメンタール氏は、料理は「Sensory Design(感覚デザイン)」だという。 その一端は「iPodで海のせせらぎを聴きながら、海の幸を食べる」という奇抜な アイデアに表れている。そのメニューをオーダーすると、海の幸を料理した プレートと、もうひとつ、iPod shuffleを載せたプレートが運ばれてくる。テーブル で耳にはイヤホンをいれ、両手にはナイフとフォークを持ち、海の音を聴きな がら、海の幸を味わう。視覚、味覚、触覚、嗅覚だけでなく、聴覚を入れて 五感で食べるのである。 もうひとつ、デザートメニューの例。プレートを運ぶ前にウエイターはアロマボトル をテーブルに置く。バラの香りがテーブルに拡がる。嗅覚がバラになじんでから、 結晶化されたバラの花びら(食べられる素材でできている)のデザートが運ばれる。 これを一枚ずつつまんで食してゆくそうだ。 サーブの順序と逆だが、アミューズでのプレートも裏切りがあっておもしろい。 「こちらはオレンジとビーツのゼリーです」と出されるプレートには、オレンジ色の 四角いゼリーと、紫色の四角いゼリーがタテにならぶ。オレンジ色だからオレンジ 味でしょ、と思うが・・・口に入れるとオレンジ色の方がビーツで、紫色の方がオレ ンジだという(出所 http://septlondon.exblog.jp/3077301/)。遊び心が満点。 ブルメンタール氏にとっての食とは、ユーモアというセンスも入れた全身の感覚で 味わう、多感な料理なのである。 ************************************************ ブルメンタール氏の事例を聞いたのは、先日聴講した日経デザインフォーラムの セミナー、ロンドン芸術大学のDesign Laboratoryを率いるプロダクトデザイナー、 ブレント・リチャーズ氏の講演だった。 レストランでありながら、口に入れるものだけでない驚きをつくる。それをリチャーズ 氏は「感覚デザイン」と表現していた。感覚をデザインする?いったいプロダクト デザインとは、何をする仕事なのだろうか? リチャーズ氏は他社事例や、自ら手がけた事例を並べた。bug digital radioと という虫のようなカタチのラジオは、まったくラジオには見えない商品だ。Earth- wareという瓦か陶器のベンチは、ベンチの概念とはまったく異なる形状だった。 Cool Experienceというケーキ屋さんのショーケースではグラスファイバーも 使った、ケーキ屋というよりブティックのような店舗づくりだった。商品と売り方に 物語をもたせた、というようなことを言われた。あとはヘストン・ブルメンタール氏 の感覚デザインの話だった。 デザイナーなのだから、商品デザインをする。それは当たり前だ。だが商品の うわべだけを変えるのがデザインではないはず。それじゃスケッチ屋さんだ。 中身の機能や構造にもタッチしなくてはならないし、そうなると製造ラインからの 変更にも口だししなくては。いやいや、素材の見直しもあるかもしれない。 待てよ、そもそもリチャーズ氏の講演のテーマは「平たい地球と丸い地球」だった。 地球が丸いということが冒険家に実証される前、地球は平たく、端っこがあった。 丸いなんていうことを信じる人は多くなかった。命知らずの冒険家がいたからこそ 真実がわかった。 リチャーズ氏は「クリエイティブ・シンキング」という言葉を挙げ、冒険家こそが 常識の枠を否定できる、開拓者としてリスクを取って行動できる、冒険こそが デザイナーの仕事であると言った。 ************************************************ かつてわたしは、同僚からこう言われたことがあった。 「(郷さんは)クリエイティブをするのか?仕組みづくりをするのか?」 その同僚の問いには答えづらかった。どちらも必要なことだが、どちらかに 限ることは違うのではないか。そんな気がしたからだ。 クリエイティブとは「発想」寄りで、商品開発や売り方の開発をするというイメージ。 マーケティング・プランナーはこちらである。一方、仕組みづくりとは「マネジメン ト」寄りで、売り方や顧客との接点の仕組みの改善というイメージである。いわゆ る業務改善型コンサルタントはこちらである。 「どちらもすべて請け負うことだ」。そう言いたいけれど、デザインからマーケ ティング、そしてマネジメントまで一貫してできる天才は多くない。デザイナーの 山中俊治さんも同じ講演で、そんな人は「Appleのスティーブ・ジョブスぐらい」 と話していた。 多くの会社で「デザイン」「生産」「マーケティング」「販売」「マネジメント」 は、別々の歯車が回るかのようにバラバラである。だから一貫したプロセスを 根付かせるのはとても大切なことである。これはわたしの仕事観に近い。 だが、一貫性だけでは、自分は何者で、マーケティングは何をサービスするのか、 クリエイティブをするのか?仕組みづくりをするのか?あるいは他のことをする のか?という問いには真正面から答えていないような気がする。 ************************************************ 理想的なマーケティングの話をしよう。それはシェフのブルメンタール氏がやる ように「テーブル上の認識を変えること」なのである。 食は舌だけで味わうものではなく、トータルな体験である。iPodプレートは奇を てらったように見えるが、お客さまの認識を変えるひとつの表現。バラの花びらも そうだ。常識の枠を外し、経験を否定し、リスクを取ってテーブル上の認識に揺さ ぶりをかける。ちょうど中世の海洋冒険家のように。 もうひとつは説得である。感覚デザインといいながら、感覚だけではだめである。 ブルメンタール氏は「脳が食をどう演算するのか?」という科学的なアプローチも している。科学的に人を説得することも冒険家の仕事である。でないと冒険に援助 が得られないから。 わたしの思うありたい仕事のアプローチは次のようなものである。 人とモノやサービスの関係を考える 人の意識の中心を見抜く 人の認識を変える 「テーブルの上」を「市場」や「チャネル」「商品機能」「顧客体験」「顧客行動」 などになる。「人」はお客様であるが、時に従業員でもあり経営者でもある。 「認識を変えること」を顧客視点で実施する−シンプルだが、それが理想的な マーケティングだと思う。 2007年10月1日発行 【新著『顧客視点の成長シナリオ』 経営を考える秋の夜長に!】 http://www.firstpress.co.jp/ 【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/ 【Business Media 誠 新連載 “うふふ”マーケティング】※毎週木曜/金曜掲載 http://bizmakoto.jp/ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 発行者 郷 好文 連絡先 gowild@gol.com ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000096057.htm からできます。 ---------------------------------------------------------------------- ==[ ▼PR ]========================================================= 「ぷろこんエッセイ 〜 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ」 コンサルティング・プロジェクトの成功・失敗の本質を、さまざまな角度から毎号本音で 語ります。オモシロおかしく足掛け5年目に突入! ★http://www.mag2.com/m/0000096057.htm ☆ ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ========================================================[ ▲PR ]===


