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2007/09/17

ぷろこんエッセイ 第137号 マーケティングはエコーで

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現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ
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第137号 マーケティングはエコーで
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この人のセンシティブな部分をちょっと持ち上げてこっちの方向に移行すれば
マーケットが変わる、というようなことを考えるのです。つまり商品を通じてお客様
に「あなたはこういうことがわかる人ですね」と言わなければならないのです。
深澤直人氏 Management Forum 一橋ビジネスレビュー2007AUT

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イタリア高級家電大手デロンギが、初の日本直営店かつ複合店舗の「De'Longhi's 
TOKYO(デロンギーズ トーキョー)〜LIFE STYLE CENTER〜」を渋谷の代官山
プラザにオープンという記事があった。

デロンギと言えばオイルヒーター、エスプレッソ・マシン、オーブン、アイスクリーム
などデザインと機能に優れた家電メーカーとして知られる。

代表的な製品のひとつ、全自動エスプレッソマシンのMagnificaは、コーヒー豆から
でもパウダーからでも美味しいエスプレッソができる。濃さと量をダイヤルで選び、
ワンプッシュで同時に2杯淹れられる。カップウォーマーやミルクフロスターで泡立ち
ミルクをつくりカプチーノもお手の物という優れものである。だが価格は5.5〜6万円と
決して安いものではない。

デロンギは日本でアンテナショップを設けていたが、市場機会が熟したと見たのか、
代官山という感度の高い人が集まるエリアに直営店を出した。そのお店の特徴は
「報道ではよくわからない」というものだ。これは家電店なのか、レストランなのか。

1階は本格イタリアンを提供するダイニング・レストランで、昼は2500円のデロン
ギーズ・ランチ、夜は3,800円からのディナーコースが楽しめる。ソファ席を含めて
68席あり、グランドピアノを置いたステージでは生演奏もあるという。そして2階には
テラス席のブルスケッタバール(ブルスケッタを提供するカフェ)。こちらは32席。
おまけ?のように家電ショップ、そして奥まったところにキッチン教室やイベント、
プライベートダイニングとしても使える多目的スペースがある。フルに座って100名
を飲食でもてなせるお店と家電販売が融合するショップである。

イタリアン・ライフスタイルの中心には「飲食ありき」。これがコンセプトなの
だろうか?家電の売り方としてとても象徴的だと感じた。デロンギとはどんな会社
なのか。

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デロンギの日本サイトのトップバナーの位置に、同社の理念が掲示されている。
ロゴには「イタリアン・リビング・イノベーション」、そして理念のいくつかの文字を
ひろってみた。

 IDEA/アイデア 常に心の奥にあり、呼び覚まされる時を待っている
 STYLE/スタイル 個性の表現、誰にも真似できない
 STRENGTH/ストレングス 技術の力は世界を変える
 AIR/エア かけがえのない空気
 TASTE/テイスト 平凡な日常を極上にする
 RESPECT/レスペクト それは人間を大切にすること
 MOVEMENT/ムーブメント かつてない未来をつくりだす

これだけでもデロンギが単純なプロダクトメーカーではないことがわかる。だが
なぜAIRなのか、なぜRESPECTなのか、これだけではわかりにくい。

LIVING INNOVATIONとうたう同社のビジネス領域はふたつある。「除湿された
清潔で爽やかな空気をご家庭にお届けする」そして「毎日の家事をシンプルに
することで、より質の高いくつろぎの時間をご提供する」である。どちらも「幸福と
健康をサポートする」のが共通コンセプトとされる。

 幸福と健康をサポートする。

言い換えれば「家電を売るのではなく」幸福と健康を「家電という商品を通じて」
提供する、ということだろう。「モノを売らずに本質を売る」 マーケティングでは
王道の切り口である。

王道ではあるが、日本企業ならカフェチェーンとタイアップしよう、料理専門家
をキャラにしよう、ぐらいが関の山だ。本格的なイタリアンレストランをメイン
コースにするまでは、なかなか踏み切れない。

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もうひとつの気づきがある。イタリアンテイストの家電マニアにも売っていない、
ということだ。

「あたしは欧州家電にはうるさいの」というデザインコンシャスなだけのマニアは
お呼びではない。それは一品豪華主義で、よく見るとライフスタイルのバランス
が取れていない消費者である。デザインも機能のひとつとしてだけ見ている、
そういう消費者は、デロンギでは歓迎されないのではないか。

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わたしが思うにはこうだ。「あなた、家電を買うんですか。有楽町やアキバや池袋
に行くのですか。それでもかまいませんが・・・あなたなら代官山のデロンギを理解
してもらえるものと思っています」。これがデロンギのメッセージなのである。

ここにはマーケティングの重要な転換がある。

人間にはこういうタイプがいる、ああいうタイプがいる。そういタイプ分けをマーケ
ティングの世界ではセグメンテーションという。作れば売れる時代が終わり、
売れない時代から盛んになったマーケティングの金科玉条の第一条がセグメン
テーションである。お客様を何らかの軸(購買実績や商品購買タイプ、収入や
家族構成など)で区分することである。

老婆心ながら第二条はターゲティングで、自分のメインのターゲットを見定める
こと、さらに第三条はポジショニング、他社と違った商品やサービスを投下しよう
という実践である。その頭文字をとってSTPという。

だがそういう考え方は古いと一刀両断なのが冒頭に引用したプロダクト・デザイナー
深澤直人さんである。商品を通じてお客様に「あなたはこういうことがわかる人
ですね」と言うことは、セグメンテーションという考え方とは対軸にある。

ネット時代になって人は自分が複数のペルソナ(仮面)を持っていることにます
ます気づかされてきた。家族割りをしていても通話スタイルはまるで違う。買い物
にしても家族の間で果たしてDNAがあるのか?というほど購買嗜好が違う。
あるときはみみっちく、あるときは大枚をはたく。その理由はさまざまだが、たい
がいは無意識にそうしている。

今どきの購買は、「それをわかる」から買うのである。デロンギというスタイル(空気
を奇麗にして、人の生活をたいせつにする)をわかり、またわかりたいとから買う。
もちろん、わからなければ買わない。

それは売り手視点のセグメンテーション(顧客を選別)ではなく、エコー(echo/
こだま)のようなものだと思う。「家電とレストランを一緒にするテイストを、あなた
ならわかってもらえるはずです」 それを受け取った人がこう答える。 「なるほど
ね、わかります!」 

こういうエコーのやりとりを創ることがマーケターの使命である。

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エコーのやりとりとは経営の構造づくりがひとつ。商品開発・売り方・供給までの
企業活動を一貫させるコンセプトづくりである。ふたつにはブランド力の構築。
Announcement(理念のPR)、Communication(やりとり)、Understanding(理解)、
そしてExperience(体験)までを一貫させるマーケティングである。

STPを忘却し、ペルソナの無意識に光をあて、その消費行動に新しい輪郭を見い
出すことが、21世紀のマーケティングのミッションである。

2007年9月17日発行

【新著『顧客視点の成長シナリオ』 経営を考える秋の夜長に!】
  http://www.firstpress.co.jp/
【ブログ 「マーケティング・ブレイン」】
 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/
【Business Media 誠 新連載“うふふ”マーケティング】※9月20日より毎週木曜掲載
 http://bizmakoto.jp/

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