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2007/08/20

ぷろこんエッセイ 第135号 真のナポリピッツァ方式

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現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ
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第135号 真のナポリピッツァ方式
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真のナポリピッツァ協会という団体がある。団体といっても業界団体という
より、伝統的なナポリ製法による正真正銘のナポリピッツァを出す店を認定
する協会である。1984年にイタリアのナポリでAssociazione Verace Pizza 
Napoletanaが結成された。Veraceの形容詞Veraciはオリジナル、亜流では
ないという意味である。

ピッツァ職人家系に生まれ、ピッツァ作り一筋のAntonio Paceさん(現会長)が
代々ピッツァ職人の家系に育った職人や、ナポリで有名なピッツェリア関係者
20名とともに1984年7月に創立した。ねらいはナポリピッツァの伝統技術を再
評価し、その伝統が世代交代で変化していくことを防ぐ。そしてナポリピッツァ
について緻密な基準づくりをし、厳しくそれを守る。

Antonio Paceさんはこう語る。「誰と戦うためにやってるわけじゃない。伝統の
技を伝承したいだけだ。だけれど宅配ピッツァや冷凍ピッツァといったインス
タントなピッツァには反対だね。あれはVeraciでも何でもない」

戦争は下手だが料理は得意というイタリア人魂というべきだろうか。最初は
20名10軒程度のグループが今ではアメリカ、カナダ、英国、オーストリア、
スペイン、ドイツ、ギリシャなど世界11ヶ国、約160店舗にまで拡がり、日本
では23店舗(2007年8月現在)が登録している。

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真のナポリピッツァ協会加入の条件は厳しい。主なもので6か条がある。

1)生地に使用する材料は、小麦粉、水、酵母、塩の4つのみ 
2)生地は手だけを使って延ばす 
ピッツァのレシピの秘訣は生地とその延ばしにある。10〜12時間を要して
膨らませ、棒を使わず手で延ばし、コルニチョーネ(Cornicione 額縁)を
作る。額縁が具やモッツァレラチーズ、トマトソースの流出を食い止める。

3)窯の床面にて直焼きする 
4)窯の燃料は薪もしくは木くずとする
専用の窯を持ち、ガスも電気も使ってはならない。薪か木くず(樫やオリーブ
の木)を使わねばならない。温度調節の技術をもたねばならない。

5)仕上がりはふっくらとして、「額縁」がある 
6)上にのせる材料にもこだわる 
コルニチョーネがでこぼこしてところどころに焦げ目がつくのが良いとされる。
ピッツァを焼くときに上からふりかけるだけが許されるオイルは、オリーブオイ
ル。トマトはサンマルツァーノ種、バジリコの葉をのせる。これで赤(トマト)、
白(生地)、緑(バジリコ)の色づかいが完成する。

協会加入条件は設備、材料、製法、焼き方、さらに商品化にまで細かく及ぶ。
真のナポリピッツァ協会に加入できるお店になるには、まず「必要条件」を満た
すことだ。それは店舗投資すれば何とかなる。だがまだ「十分条件」がある。
ナポリピッツァの伝統を伝承をするという意志、ピッツァの味を継続させるには
仕入れ・調理・給仕までの運営、そしてたゆまない技術教育が必要となる。
これは実に高いハードルである。

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2007年も半分以上過ぎたが、2007年問題が解決しているわけではない。

それは技術やノウハウの伝承、いわゆるナレッジマネジメントの問題である。
2007年以降、団塊世代が定年退職し、その知恵が流出してしまうという懸念が
それある。すでに手を打ったと胸を張る企業もあれば、何の対策も取らずに
いる企業もある。2000年頃からいくつかのプロジェクトでナレッジ関連の案件
に首を突っ込んだわたしのナレッジ伝承に関する率直な感想は、「かなり
ハードルが高い」というものである。

教え手となるベテラン世代の説明力やコーチ力の不足だけでなく、彼らは
プレイヤ兼中間管理職として教える時間が捻出できない。さらに教わる側の
問題が大きい。バブルの頃の採用肥大時代の社員は「上昇志向」という意志
が決定的に不足しているし、2000年前後のリストラを経て、「教える相手」、
すなわち中堅社員が極端に減った。今どきは好況で採用肥大である。
社員構成は極端な「ひょうたん型」になり、ベテランは去り、教え手は細り、
教わり手はアマチュアである。だからナレッジもモラルも伝承せず、不祥事
や技術劣化が収まらない。

現場は途方に暮れている。そこでヒントになるのが、ナレッジの伝承には
「真のナポリピッツァ方式」が効く、である。

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真のナポリピッツァでは設備、材料、製法、焼き方、運営という条件、そして
協会が厳密に認定する仕組みがある。伝統を守るプロセス、手順が明確である。
それは会員が守りたいものが明確であり、それがお客さまが美味しいと認める
やり方であると信じているからである。

真のナポリピッツァ方式は事業のナレッジにもあてはめることができる。

 窯設備 → オフィスや現場設備
 生地材料 → データ
 生地製法 → ノウハウ
 火加減 → マネジメント
 運営 → 仕入れ、営業、販売

ナレッジの蓄積・伝承・活用の活動は、なぜ下火になるのだろうか?

その理由のひとつは部門最適の活動に陥り、顧客視点が欠けるからである。
伝承すべきナレッジが、「美味しさ」言い換えればお客さま視点で首尾一貫
していないからである

技術は技術、販売は販売、管理は管理というようにバラバラな情報共有を
しても、伝承すべき全体像も目的も見えない。起点が売り手視点に過ぎる
ので、いつしかボロが出る。下火になる。

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守り伝承すべきは、お客さまの喜ぶ商品づくりの一貫したプロセスである。

理想的なナレッジ共有手法は、部門でもなければ業務プロセスでもない、
同質の目標をもつ部門横断の小集団をつくり、その中で実施すべきもの
である。なぜなら設備から仕入れ、材料加工、製法、そしてお客さままで
首尾一貫するものが、企業のナレッジすなわちコアコンピタンスだからだ。

「全社でナレッジ共有をしよう」。それは正論だが、異業種や新技術の出現
により、競争条件がうつろいやすい現代では通用しない。むしろ小集団を
増殖させて、時代の変化に合わせて、合併や分裂させる。そうすれば、
変化に強い事業体がつくられる。

当初、真のナポリピッツァ協会に集まったナポリピッツァ職人たちは、高級店
もあればテイクアウトもある異質な人々だった。だが異質な人の集団でも、
同質の目標(伝統あるナポリピッツァの伝承)で結束した。伝承すべき技術
を持つ者だけに絞り、さらに上を目指すために各店舗は独自のレシピで
競争する。このぐらい排他的でなければ、ナレッジの伝承なぞできないと
腹をくくるべきだろう。

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下火になりがちな情報共有を活性化させるヒントも、ナポリピッツァ方式に
ある。それは「食べる側も伝統を守る」。

「良いチーズは額縁の中で泳ぐ」ので「熱々で泳ぐうちに食べる」。ゆえに
ピッツァは「シェアせずに」「脇目もふらず真剣に食べる」。それがNeapolitan
(ナポリ人)の信条である。

冷えたナレッジは食べられない。Veraciな(真の)ナレッジを伝承し、マナー
を守って活用することを忘れてはならない。

参考&引用元 http://www.pizzanapoletana.org/
同 http://www.asahi.com/komimi/TKY200706040310.html
同 http://www.partenope.jp/vera_pizza/vera_pizza.htm
同 http://www.nisshin.com/life/italian/pizza/

2007年8月20日発行

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