2007/07/09
ぷろこんエッセイ 第132号 叱られたい、けれど「もっとほめてくれ」
■□■■■■■■□■□■□ ぷろこんエッセイ ■□■□■□■■■■■□■ 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 第132号 叱られたい、けれど「もっとほめてくれ」 ---------------------------------------------------------------------- 「こういう本が売れるんですねぇ」 ある出版社の社長とお話をしていたとき、 社長が一冊の本を手にとった。 「どんな本ですか?」 社長が手にした本には、タイトルとは別に、表紙と帯にこんな文句が踊っていた。 「気持ちのいい仕事はしない」「口約束を大切にせよ」「できる準備は全部せよ」 「戦いを恐れるな」「仕事も遊びも時間厳守」「一つだけ大事なことを見極める」 「『ハズ』という言葉は使わない」・・・ 「この本の著者は、長年社員に向けてメッセージを書き綴ってきて、それを本に したいと言ってもってこられたんです」 「そうなんですか」とわたし。 「全体で70個ぐらいあって、ちょっと叱りつけているような章もあるんですが、 それがかえってね、若者にウケてるみたいなんです」 「叱られたい・・・?」 「そう。叱られたくて読む読者が多いんですよ。これは新鮮な驚きでした」 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ この本の読者レビューを読むと確かに「読んでよかった」と書いている人ばかりだ。 それも「こんなことは会社の先輩や上司は教えてくれない」「下手に研修参加する よりよほどいい」とさえ書いてあるのだ。本にあることは奇をてらったことはなくて、 どちらかと言えば当たり前のことが多いようだ。だけれども売れている。もちろん 当たり前のことがなかなか実践できないからとも言えるのだが、どうもそれだけで はないようなのだ。 叱られたい若手社員が多いということは、裏を返せば、叱られていない若手社員が 多いということだろう。叱られたいのに叱ってくれないので、本にその代償を求める。 その意味では、管理職は怠慢なのだ。叱られたい人がいるのに、それに応えて いない。だから叱られない社員は、自分がどう評価されているのか、怒られている のか、認められているのか、わからないのであろう。 叱られたくて、でも叱られなくて、心が漂流して、やがて退職する。そういう若者が 多い。だからこの本も売れている。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 昭和から平成になって、叱るのがむつかしい時代になった。 叱る、怒る、怒鳴る、そしてちゃぶ台をひっくり返すといえば、向田邦子さん原作の 『寺内貫太郎一家』である。寺内石材店のご主人、寺内貫太郎が気に入らないこと があると怒鳴ったり殴ったり蹴ったりの大乱闘を繰りひろげるドラマである。長男役 の西城秀樹さんが、収録中に骨折までしたという乱闘ぶりだった。 この乱闘と、貫太郎の母きん(悠木千帆)が「そういうこともあるねぇ・・・」 というようにボケようがドラマのウリだった。TBS水曜劇場「寺内貫太郎一家」 そして「同2」が放映されたのは、1974-75年(昭和49年〜50年)という、まだ 昭和が熱い時代だった。 それから約十年たった頃人気を博したのが『スクール・ウォーズ』だった。正確な タイトルは『スクール☆ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜)』である。このドラマの 放送は1984年-85年(昭和59年〜60年)という昭和の末期であった。今30代半ば ぐらいの人には同時代体験があるはずだ。 これはは荒廃した高校に赴任した、体育教師滝沢(山下真司)は、元ラグビーの全 日本代表選手という経歴で、ラグビーを通じてグレた(死語ですね)高校生たちを 熱くさせようという話だった。原作の『落ちこぼれ軍団の奇跡』をベースにした実話 だが、ドラマでは山下熱血教師が鉄拳を見舞って、学校で問題になるという筋書き がウリだった。 だが副題に「泣き虫先生の7年戦争」とあるように、滝沢先生は熱く叱る硬骨漢で、 だてに殴っているわけでない。自分の選手経歴(怪我で代表選手を断念した)や、 不治の病に冒された生徒を想う先生だった。想うゆえの鉄拳であった。 こうしてみると昭和は、若者に暴力的な時代だったのかもしれない(笑)。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 平成になって、若者に圧倒的な支持を得たのが、井上雄彦氏の傑作漫画『スラム ダンク』である。1990-1996年(平成2年〜8年)という、経済不安定かつ低成長で、 インターネット前夜という時代。今の20代〜30代の多くがスラムダンクに登場する キャラクターの洗礼を受けているはずだ。その中で三井を敬愛するわたしだが、 ここで取り上げたいのは、話の主役の湘北高校の選手たちではない。 「もっとほめてくれ」と言った福田吉兆選手(陵南高校)である。 陵南高校は神奈川県下のバスケの名門校という設定である。その高校のバス ケット部の監督は、将来の大黒柱となる2人の素材を見いだした。ひとりは仙道と いう中学からのスター選手で、高校が東京の学校から引き抜いた。もう一人は 福田だった。彼はまったく無名で不器用だった。だが監督は光る素質を見抜いた。 監督はプライドが高い(と考えた)仙道をほめて伸ばし、失うものがない福田は 叱って伸ばそうとした。だからは福田にはわざとつらく当たり、叱りに叱った。 福田はじっと耐えて練習を続けた。だがある日、叱られ続けた鬱積が爆発した。 福田は、練習で監督に暴行を振るってしまったのだ。そして無期限の部活動 停止処分を下された。 実はプライドが高かったのは、スター選手だった仙道ではなく、福田の方だった のだ。監督は自らの不明をくやんだ。バスケができない福田は、試合が行われて いる体育館のまわりを、することもなくたださまよった。コートも無ければフープも 無い、寺の境内でボールをひたすら突いていた。 そして部活動停止が解けたとき、福田のプレーは爆発した。飢えを癒すように 点を取り、リバウンドを奪う福田のプレーに試合場は「フクダ!フクダ!」のコール で沸いた。声援をうけて。、彼の動きにはさらに磨きがかかった。 そのとき福田吉兆がコート上で言ったセリフが、「もっとほめてくれ」だった。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 叱られたい、けれど「もっとほめてくれ」、このアンビバレントな心持ちが、良くも 悪くも日本の今の若者、いや叱り手も含めた社会全体を象徴している。 若者には、やたら熱血で直線的に叱る熱血教師を待望する気持ちもあるのだが、 現実にはちょっと叱られるだけで落ちこんでしまう。そしてすぐに自分を退職に 追い込んでしまうひ弱さが同居している。 ニートが増加するのも、3ヶ月で会社辞める若者が多いのも、衝動的な事件が 多いのも、叱られることがないわりに、ほめられることもないからではないか。 叱り役、ほめ役の立場になって考えると、最近わたしはいつ、誰かを叱ったことが あるだろうか?誰かをいつ、心からほめたことがあるだろうか?この二つをセット にすることで、ひとりでも誰かが前向きになるのであれば、なぜそれをやらないの だろうか。 参考URL(スラムダンク) http://ja.wikipedia.org/wiki/SLAM_DUNK 参考URL(スクールウォーズ) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E2%98%86%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BA 参考URL(寺内貫太郎一家) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E5%86%85%E8%B2%AB%E5%A4%AA%E9%83%8E%E4%B8%80%E5%AE%B6 参考書 『スラムダンク』 ジャンプ・コミックス 16巻、18巻 冒頭引用書 『他社から引き抜かれる社員になれ』 ファーストプレス 古川裕倫 著 2007年7月9日発行 【ブログ 「マーケティング・ブレイン」で熱くマーケティングを語っております!】 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 発行者 郷 好文 連絡先 gowild@gol.com 「無料"サウンド″・サービス; Goot Advice(ぐっとアドバイス)」 ホームページURL http://www2.gol.com/users/gowild ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000096057.htm からできます。 ---------------------------------------------------------------------- ==[ ▼PR ]========================================================= 「ぷろこんエッセイ 〜 現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ」 コンサルティング・プロジェクトの成功・失敗の本質を、さまざまな角度から毎号本音で 語ります。オモシロおかしく足掛け5年目に突入! ★http://www.mag2.com/m/0000096057.htm ☆ ホームページ http://www2.gol.com/users/gowild ========================================================[ ▲PR ]===


