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2009/04/27

ニシキプリントNEWS vol.189「印刷と環境」

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                        >> 2009.04.27 189号

 ★今回のコラムはよくわかる印刷講座「印刷と環境」です。
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皆さん、おはようございます。早いもので4月ももう終わり。間もなく待ちに
待ったゴールデン・ウィークがやって来ます。色々予定を立てられている方も
多いことでしょう。
さて、今回は「印刷と環境」と題してお送りします。どうか最後までおつきあ
いのほどを。
 (ゴールデン・ウィークは家の片付けがあるので、あまりうれしくないシン)

             ※このメルマガは等幅フォントでお読み下さい。
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 ★よくわかる印刷講座
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           ▼知っておくと便利な印刷知識や印刷用語をご紹介。

 ■ 「印刷と環境」を考える4つのキーワード

   今回とりあげる「印刷と環境」というテーマ、別にことさら目新しい内
   容ではありません。これまでにお送りしてきたメルマガにも印刷と環境
   に関わる内容を扱ったものがかなりあります。

    ・メルマガ116号 「非木材」
    ・メルマガ119号 「リサイクル」
    ・メルマガ138号 「非木材紙の現状」
    ・メルマガ153号 「再生紙がなくなる?!」
    ・メルマガ157号 「古紙配合率問題」

   これらのメルマガの共通点は、印刷に使う紙のリサイクルや森林保護に
   関わるテーマであるということです。
   紙の問題については、これまでにこれだけ取り上げてきましたし、紙の
   リサイクルというのは私たちに身近で改めて取り上げる意味も薄いと考
   えますので、今回は紙の問題については割愛したいと思います。

   そこで、今回は印刷工程(印刷用語では「プレス工程」)を中心に、
   「印刷と環境」というテーマを以下の4つのキーワードを中心に考える
   ことにします。

    (A)水なし印刷
    (B)大豆油インキ(ソイインキ)
    (C)フレキソ印刷
    (D)小口分割化印刷

 ■ (A)水なし印刷

   現在、印刷で最も一般に行われているオフセット印刷では、水と油(イ
   ンキ)が反発しあう特性を利用し、インキがつかない部分を作り出して
   います。その際に使用する水は「湿し水」と呼ばれますが、これにはイ
   ソプロピルアルコールなどの化学薬品が含まれており、水質汚濁のおそ
   れがあります。

   これに対して「水なしオフセット印刷」は、刷版表面のシリコンゴム層
   がインキをはじく特性を利用してインキのつかない部分を作り出します
   ので「湿し水」を必要としません。
   水なし印刷協会(日本WPA)の認定を受けた印刷会社の印刷物には、
   「バタフライマーク」がつけられています。

   ちなみに、このマークの蝶は、オオカバマダラ(Monarch Buttefly)とい
   い、世代を超えて渡りをすることで知られ、米国の国蝶にもなっていま
   す。この蝶は環境のリトマス試験紙とまでいわれるほど環境に非常に敏
   感なため、公害や開発の影響で、エサとなる樹木が無くなり、その生息
   域も年々少なくなっているそうです。

 ■ (B)大豆油インキ(ソイインキ)

  (1) 大豆油インキとは

   大豆油インキとは、原料に植物性の大豆油を使ったインキのことです。
   石油資源を保護する、紙のリサイクルが容易になるなどの利点を持つ環
   境にやさしいとされるインキです。

   大豆油インキが生まれる以前の印刷用インキは、顔料や樹脂のほかに大
   量の石油系溶剤を含んでいました。石油は限りある資源であり、それに
   代わる再生可能なエネルギーが世界的に求められています。近年米国は、
   トウモロコシやサトウキビを原料としたバイオエタノールに着目し、そ
   の可能性を大きく評価していますが、大豆油インキもまた米国が1970年
   代のオイルショックの際に、新聞印刷用インキとして石油系インキの代
   替として開発したのがはじまりと言われています。

   従来インキの成分である石油系溶剤には揮発性有機化合成分(Volatile
   Organic Compounds、以下VOCと略)が含まれており、これは印刷機
   オペレータなど、印刷現場で働く人の健康に悪影響を与えることが、以
   前より問題視されていました。さらに、印刷工場で使用されるインキに
   は必ず「余り」が発生しますが、これらを焼却処分することで排出され
   る有毒ガスが光化学スモッグの原因になっていることも事実です。
   近年では、VOCがシックハウス症候群の主要な原因になっていること
   も分かっています。

   大豆油インキはこうした有害な石油系溶剤の成分を可能な限り植物性油
   (大豆油)に置き換えたものですが、現在使用されている大豆油インキ
   の多くは、その石油系溶剤の成分の全てを大豆油に置き換えているわけ
   ではありません。

  (2) 大豆油インキの特徴と使用状況

   石油系溶剤よりも自然に還元する比率がはるかに高く、原料の大豆は毎
   年収穫でき、ストックすることも可能です。また、紙の繊維を損傷しに
   くく、再生紙にリサイクルしやすい、発色がよく摩擦に強いので鮮やか
   さを長く保つことができるなどの特徴があります。

   米国大豆協会(American Soybean Association)の大豆油インキの認定
   基準をクリアした印刷インキ(ソイオイル・インキ)で印刷された製品
   ・印刷物には「大豆油インキマーク(ソイシール)」が付けられます。

   現在主に使用されている大豆油インキは、従来インキに含まれた石油系
   溶剤の20%〜30%を大豆油に置き換えたものです。ちなみに、アメリカ
   大豆協会の大豆油インキマーク使用を許可する大豆油インキの基準は、
   「大豆油成分20%以上」とされています。

   現在、わが国のオフセット印刷において、大豆油インキの使用が占めて
   いるのは70%前後と言われますが、全体から見ればインキに使用される
   石油成分のほんの一部が植物油に置き換わっただけに過ぎません。

   近年の環境保護に対する社会全体の意識の高まりから、大豆油インキの
   シェアはますます広がっていくことが予想されますが、それと平行して
   見られる動きに、大豆油インキそのものの進化と、大豆油インキの欠点
   を補う新たなインキの使用拡大が挙げられます。

  (3) 大豆油インキの進化とUVインキの使用拡大

   近年、従来の石油系鉱物油インキのような、光化学スモッグやシックハ
   ウス症候群の原因となる石油系のVOCを全く含まない、Non-VOCタイ
   プの大豆油インキが登場しました。このようなVOCを含まないインキ
   で印刷された印刷物には「Non-VOCインキマーク」が付けられています。
   ただ、それまでの大豆油インキよりもコストが掛かり、乾きが遅いとい
   う難点があり、現在のシェアは0.6%にとどまっています。

   このようなNon-VOCインキの欠点を補う有力な候補として、「UVインキ」
   が挙げられます。これは全くVOCを含まないという特性に加え、紫外
   線(UV)の照射で瞬間的に硬化・乾燥するという性質を持っています。
   ただ、UVインキを使用するには、それに対応した特別な印刷機を導入し
   なければならず、そうした設備投資に掛かるコストの問題から、シェア
   はまだ全体の2.5%にとどまっています。しかし、後発ながらもNon-VOC
   インキの4倍ものシェアを獲得している点は見逃せません。将来的には
   大豆油インキに次ぐ勢力として、ますます利用が伸びていくことが予想
   されます。

 ■ (C)フレキソ印刷

  (1) フレキソ印刷とは

    分かりやすく言えば、凸版を用いた印刷のことです。歴史的に見ても、
    最も古くからある印刷方式です。これは表面に凹凸のある版の山(凸)
    部分にインキを乗せて紙に転写するもので、同じ原理を用いたものに、
    印鑑や木版画があり、活版印刷もこの方式の1種です。
    現在では、ゴムや感光性樹脂版を使用する凸版方式の印刷を特に「フ
    レキソ印刷」と呼んでいます。
    欧米ではフレキシブルパッケージ(注1)の印刷に多用されています
    が、日本でもパン、冷食用包材、ショッピングバック等のプラスチッ
    クフィルムや紙袋、段ボールに使用されています。

     注1)プラスチックフィルム・紙・金属箔などを原材料として製造
        される柔軟性のある包装材料。日本語では「軟包装材料」。

  (2) フレキソ印刷の特徴
    版の山(凸)の部分にインキを乗せて、圧力をかけて紙に転写をする
    ため、力強い輪郭のシャープな文字を印刷することが可能ですが、反
    面、紙に直接圧力がかかるため、紙にシワがよったり、印刷面にへこ
    みがついたりすることもあります。
    また、版面の高さが一定なので、写真などの連続階調表現はあまりき
    れいに再現できません。直接圧力をかけて印刷するため、版面よりイ
    ンキのはみ出し(マージナルゾーン)が生じ、小さい文字などもつぶ
    れてしまう可能性があります。

  (3) フレキソ印刷と環境問題

    今回のメルマガでフレキソ印刷を取り上げたのは、この印刷方式が環
    境に優しいということで、近年、特に欧米で印刷方式のシェアを大幅
    に伸ばしているからです。
    近年の(といっても数年前のデータですが)日本の印刷方式のシェア
    はおよそ次のような比率であると言われています。

     ・オフセット(平版)印刷…60%
     ・グラビア(凹版)印刷……30%
     ・フレキソ(凸版)印刷……5%
     ・その他の印刷………………5%

    これに対して同時期の欧米での印刷方式のシェアは次のようになって
    います。

     ・フレキソ(凸版)印刷……43%
     ・オフセット(平版)印刷…40%
     ・グラビア(凹版)印刷……16%
     ・その他の印刷………………1%

    日本と欧米の印刷方式のシェアの違いで最も大きな相違はフレキソ印
    刷のシェアの差です。日本と比べて欧米では約8倍以上もフレキソ印
    刷の比率が高くなっています。これは何故なのでしょうか。

    それは欧米では環境対策のため、オフセット印刷やグラビア印刷から
    フレキソ印刷へと印刷方式のシフトが起こっているからです。
    フレキソ印刷には印刷速度が他の2方式に比べて遅いという欠点があ
    りますが、環境に悪影響を与えることが少ないとされる水性のインキ
    やUVインキが使用されることが大きな要因のようです。

    一般に、大豆油インキは低公害と言われていますが、大豆成分はわず
    か20%程度のみで、インキ成分の約80%はVOCなどの人体に有害な
    薬品を使用しているものがほとんどです。しかしフレキソ印刷で使用
    するインキは人体に有害な薬品を含んでいないので、地球環境に非常
    に優しい印刷と言えます。

    各印刷方式の有害薬品の度合いを図示して比較すると次のようになり
    ます。また、あくまで参考程度ですが、車の方式で例えたらというも
    のも示してみました。

    ●オフセット印刷・グラビア印刷……○車で例えると「ガソリン車」

     通常のインキ
       ■■■■■■■■■■ 【有害薬品100%】
                  (アルコール・シンナー・有機溶剤)

    ●オフセット印刷…………………○車で例えると「ハイブリッド車」

     大豆油インキ
       ■■■■■■■■□□ 【有害薬品80% 大豆油20%】


    ●フレキソ印刷…………………………○車で例えると「電気自動車」

     UVフレキソインキ・水性フレキソインキ
       □□□□□□□□□□ 【有害薬品0%】

     水溶性フレキソインキ
       ■□□□□□□□□□ 【薬品5%】

    このように、フレキソ印刷は極めて環境負荷が少ない印刷であり、こ
    の利点によって欧米ではフレキソ印刷のシェアが極めて高くなってい
    ますが、残念ながら、日本では印刷速度が遅く、印刷物の品質も他の
    方式よりも現状では劣るなど欠点があるため、あまりシェアは伸びて
    いないようです。

 ■ (D)小口分割化印刷

   今年3月、日本のある印刷会社が、総合印刷機材メーカーとして世界的
   に有名な、ドイツのハイデルベルグ社が昨年新設した「ハイデルベルグ
   ・エコ・プリンティング・アワード」という賞の革新的ソリューション
   部門(Innovative Solution)での大賞を獲得し、表彰されました。
   この賞は、環境面で革新的かつ卓越した実績を達成した世界各国の印刷
   会社を表彰するもので、世界で2社選ばれる大賞のうちの1社として受
   賞したものです。

   受賞の理由は、同社が以前より環境に対する取り組みとして行ってきた
   「フレッシュプリント(鮮度保持印刷)」が評価されたからです。
   フレッシュプリントという呼び名は、同社オリジナルのネーミングのよ
   うですが、一般にはこれは小口分割化印刷と呼ばれています。
   仕組みとしては、印刷会社がユーザーと年間契約を結び、年間印刷部数
   と印刷料金を設定し、大量に作り置きをせずに、定めた期間ごとに必要
   部数を印刷するというものです。

   これまで、印刷製品は、一度に大量に印刷することで製造コストを抑え
   る提案がなされるのが当然のように行われてきました。しかし、そのた
   めに、製品を使い切るまでに製品の情報鮮度が落ち、製品が使われない
   まま廃棄されることが多かったのも事実です。

   一方の小口分割印刷では、必要に応じて適正部数の生産を行うので、情
   報鮮度が落ちず、また、廃棄される印刷物の量も微量で済みます。

   とかく環境対応では、省エネルギー・地球温暖化ガス排出量の抑制等に
   注目が集まりがちですが、もっとも重要な「無駄なものを作らせない」
   という提案が世界的に認められたのです。

   しかし、一方で、この方式はどこの印刷会社でもすぐに始められるとい
   うものではないでしょう。生産数を多くした方が、生産単価が下がると
   いうのは、何も印刷に限ったことではなく、製造業全般に言えることだ
   からです。また、印刷を小口に分けると、どうしても刷版の再出力など、
   中間の生産コストが余分にかかることは明らかです。

   この問題を同社は、(1)無処理刷版の使用による「現像液不使用」、
   (2)独自のインキ乾燥促進印刷による「印刷損紙発生量の抑制」、(3)
   「パウダー使用量の減少」、(4)「強制乾燥装置(紫外線ランプ照射)
   を用いないことによる高エネルギー電力の不使用」など、工程内での様
   々な工夫を総合的に行い、コスト上昇を抑え、小口分割化印刷の総合的
   なメリットを引き出すことよって解決したということです。

   この小口分割化印刷のやり方としては、オンデマンド印刷も同様の効果
   が期待できます。特に改定が頻繁に行われる多品種・小ロットのマニュ
   アルなどは、オンデマンド印刷の独壇場と言ってよいでしょう。

   弊社でも数年前からオンデマンド印刷に取り組み、オンデマンドでなけ
   れば困難な短納期・小ロットの様々な印刷物をつくっています。

 ■ 最後に 〜これからの印刷と環境〜

   印刷業界では、環境型社会形成推進基本法、グリーン購入法、PRTR
   (化学物質排出移動量届出制度)法などの法律整備を受け、環境保全へ
   の社会的要請に応え積極的に環境対応を推進する方向にあります。

   特に、VOC排出を抑制する社会的な動きがあり、これを受けて日本印
   刷産業連合会によるグラビア印刷のグリーン基準が制定されています。
   これまで、環境に関する法律や条例などは自主規制が多く罰則がないも
   のがほとんどでした。しかし、平成14年4月の埼玉県環境保全条例を皮
   切りにVOCの規制強化が行われ、溶剤型印刷インキの使用を控える印
   刷業者や、水溶性インキやVOC規制以外の溶剤型に変更する事業者も
   増えています。

   弊社で使用している印刷用のインキも、特色を除く、通常のカラーセッ
   ト(C・M・Y・Kの4色)のインキは大豆油インキを使用しています。

   水溶性インキは印刷条件や使用条件などが溶剤型インキに比べて不利な
   点が多く、欧米先行で進んでいる感はありますが、プラスチックフィル
   ムメーカーや製版メーカーの技術開発も進んでおり、日本のフレキシブ
   ルパッケージ等の印刷方式も将来的には変わって行くかも知れません。


 〜次号(5月11日配信)は「WEBの基礎知識〜ホスティングサーバー〜」
  をお届けします〜

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