2009/03/30
ニシキプリントNEWS vol.187「製本2」
┏━━━━━━━━━━━┓┏┓━┓┏┓┏━━┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓ ┃ どのような印刷を ┃┃┃┓┃┃┃┃━━┛┃┗┛┃┃┃┃┏┛┛┃┃ ┃ ご希望ですか? ┃┃┃┃┃┃┃┏━━┃┃┏┓┃┃┃┃┗┓┓┃┃ ┗━━━━━━━━━━━┛┗┛┗┛┗┛┗━━┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┏━━┓┏━━┓┏┓┏┓━┓┏━━┓┏┓━┓┏━━┓┏┏━┓┓┏━━┓ ┃━━┃┃━━┃┃┃┃┃┓┃┗┓┏┛┃┃┓┃┃━━┓┃┃┃┃┃┃━━┛ ┃┏━┛┃┏┓┓┃┃┃┃┃┃ ┃┃ ┃┃┃┃┃━━┛┃┃┃┃┃┏━━┃ ┗┛ ┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┗┛ ┗┛┗┛┗━━┛┗━━━┛┗━━┛ ━印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 当マガジンでは、印刷を必要とされる企業や個人事業主の皆さまへ ☆賢い印刷発注☆にお役立ていただける実用的な情報をご提供します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ >> 2009.03.30 187号 ★今回のコラムはよくわかる印刷講座「製本(その2)」です。 ─────────────────────────────────── 皆さん、お久しぶりです。早いもので3月ももう終わり。印刷会社は3月と言 えば、かき入れ時で大忙しなのですが、もう一息で山を越えそうです。 さて、今回はメルマガ184号の続きをお送りします。前回は製本の加工の種類 や工程についての説明が中心でしたが、今回は、製本の現状と未来および新技 術についての問題を取り上げます。どうか最後までおつきあいのほどを。 (永らく赤字続きだった家計がようやく2月から黒字になって一安心のシン) ※このメルマガは等幅フォントでお読み下さい。 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ★よくわかる印刷講座 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ▼知っておくと便利な印刷知識や印刷用語をご紹介。 ■ 製本工程は自動化が困難 近年、印刷業界では自動化、デジタル化が進んでいます。特に「プリプ レス」と呼ばれる、印刷の前工程ではその傾向がますます著しくなって います。しかし、製本の工程はなかなかそうなって行かないようです。 歴史的に見ても、西洋で印刷術の発明後も、一冊ずつ手で製本する伝統 は長らく続き、部分的に機械が導入されることがあっても、人力から動 力使用へと変わった位で、基本的な変化はなかったと言ってよいでしょ う。印刷と違って製本は工程が複雑に細分され、容易には機械化するこ とはできなかったのです。 製本には、綴じと断裁だけでなく、様々な折り加工や仕分けなどの作業 が入ります。こうした複雑な作業の組み合わせで行われている工程を、 例えば自動車の生産ラインのように、自動化することは非常に困難です。 例えば、定数ずつ輪ゴムで束ねて止めるといった作業をするような機械 を開発したとしても、それだけのためにその機械を導入する会社がある でしょうか。そんな機械を導入するより、手作業でやってしまった方が はるかに簡単で早く、安くつく場合がほとんどなのではないでしょうか。 また、書店で売られている本を見ると、カバーは当たり前のようについ ており、さらに帯(※注1)のついている本もあり、読者カードと呼ば れるはがきがはさんであったり、本の最後には応募はがき綴じこんであ る本もあります。さらには最近ではCD-ROMが付いている雑誌なども珍し くなくなりました。このような、非常に多種多様な用途に応えることは 定型作業しかできない機械ではとても難しいのです。 ※(注1)本の表紙・カバーの上、箱の外側に付ける帯状の印刷物。 「付け物(付き物)」(付属印刷物の総称)の一つで、わが国独 特のものです。はかま、おびしとも呼ばれます。書名、著者名、 内容の簡単な紹介、批評や推せん文などの一部を刷りこみ、販売 広告をかねて表紙に巻きこみます。最近ではトライオートと呼ば れるカバー掛け機により、帯紙も自動で取り付けることができる ようになりましたが、箱に付けるのはいまだ手作業だそうです。 このような事情で、この先どれだけ印刷の自動化が進んでも、製本と運 送だけは自動化できない工程として残るのではないかと言われています。 ■ 製本会社の特徴 弊社は、プリプレス・印刷・製本(社内では並製本まで)を含めた、総 合印刷会社の一つですが、製本のみを専門とする会社も数多くあります。 この製本業界は完全な分業世界と言えるでしょう。上製本、並製本、中 綴、事務用品、帳簿、さらに製本の工程別では、折り加工、糸かがり加 工など、ここに一度には書ききれないほど細分化しています。細分化し ている分だけ工程数があり、管理や段取りが煩雑で手間がかかるという ことを意味します。 総合印刷会社でも、あらゆる種類の製本作業をこなすことは困難です。 そこで、社内でできないような加工は、その加工を専門に行う製本会社 に依頼することになるわけですが、今まで手がけたことのないような製 本の加工を引き受けてくれる製本会社を探そうとすると、かなりの労力 を必要とします。また、仮に探せたとしてもその会社にコネでもなけれ ば、急な仕事をすぐに引き受けてもらえるとは限りません。 近年、設備等の機械化・デジタル化され、手作業で行う作業の割合は低 くなってきていますが、そういう時代にもかかわらず、製本では機械作 業でできないような手作業による加工をしなければならないこともまだ まだあるそうです。各製本会社ではそうした技術的なことは社外秘とし て扱われ、そのためか製本業はいまだに閉鎖的な職人の世界だと言われ ることが多いようです。 また、一般に、製本業は、デザイン・印刷会社が企画した製品を、刷本 の状態で搬入し、指示書の通り製本仕上げをするという形態が多いため、 一般の消費者との付き合いはほとんどなく、得意先は、出版社や印刷会 社の担当のみという場合がほとんどというのが現状のようです。 また、製本の工程は、印刷物作成の最終工程であり、短納期のものが多 く、遅れたり、失敗することは許されません。 例えば、印刷会社で印刷を失敗しても、赤字にはなっても、版を作り直 し、紙を追加して、すぐに印刷に回して、その後に製本に出せば…と、 工程の途中の失敗のほとんどは自社内または協力企業によってカバーで きることが多いのです。 しかし一方の製本会社は、刷本を印刷会社から引き取って加工していま す。もし刷本を間違って断裁してしまえば、自社内で印刷をしたりして 失敗を取り戻したりすることは絶対に不可能です。お客である印刷会社 に隠すことも出来ませんし、その失敗のツケを弁償し、かつお客さまで ある印刷会社に刷り直しさせることになってしまうのです。ここに通常 の印刷会社との大きな違いがあります。 ■ これからの製本業に求められる「提案型営業」 一般に、「提案型営業」とは、単なる御用聞きに終わるのではなく、顧 客とのコミュニケーションから新たなニーズをくみとって実現したり、 自らの発想で問題解決方法を示したりすることを指します。 近年、製本業界全体でもこの問題への取り組みが進められているようで すが、実際のところ製本業界全体では、永年の印刷会社依存の体質が影 響しているのか、営業に来ても、「何かありませんか?」で終わってい たり、自社の加工や設備の新情報を発注元の印刷会社に向けて発信する ことも少ない、いわゆる「待ちの経営」がまだまだ多いと言われます。 これは、得意先である印刷会社が製品すべての仕様を決め、その仕様に 基づいて製本をすることに原因があると言われます。基本的に自ら需要 を生み出すことはまれで、独立した企業にもかかわらず、存続や維持、 そして発展していくために必要なすべてを得意先に依存している業種と 言えるでしょう。右肩上がりの高度成長時代は、それでもやって行けま したが、近年の価格競争が激化している状況では、これまでのようなや り方は通用しなくなるでしょう。 これからの製本会社は、面付け、紙の種類の選択、加工方法などを、得 意先である印刷会社に積極的に提案していくことが生き残っていくため にますます求められて行くのではないでしょうか。 確かに、製本にとってはコストダウンと短納期が実現できるすばらしい 提案でも、印刷工程では逆にコストアップにつながり、トータルではコ ストアップになることもあります。そうした場合には、お客様の立場の 印刷会社の意向に従わざるをえないこともあるでしょう。 しばらくは試行錯誤が続くかもしれませんが、印刷会社に対する提案は、 製本会社の作業の効率化、コストダウンのためには今後ますます避けて は通れない課題であると思われます。 ■ 製本の差別化のための新技術 〜PUR製本〜 大正から昭和初期に、民族学や考古学の名著を多数世に送り出した岡書 院店主の岡茂雄氏は、こわれない本造りにこだわり、でき上がった本を 床に叩きつけ、堅牢に仕上がっているかを試したと言われています。 また、岩波書店の創業者岩波茂雄氏も、社長室で、でき上がったばかり の本を床に叩きつけ、試したという話が伝わっています。 このように、落としても壊れない丈夫な本というのは、昔から本作りの 理想とされてきました。この理想を実現するには、従来は上製本でなけ れば無理とされてきましたが、最近、並製本でもこの理想の実現に近づ けるような技術が開発されました。 現在、製本用の接着剤として広く使用されているのは、EVA系ホット メルト(以下ホットメルトと略)と呼ばれています。ホットメルトは加 熱する事によって溶解し、冷える事によって硬化する仕組みです。 このサイクルを無限に繰返すことも出来ますが、これはホットメルトの 耐熱性が弱いという短所でもありました。 これに対して、最近開発されたPURは、ポリウレタン系の未硬化樹脂 (プレポリマー)を主成分とし、加熱溶解の後、空気中の水分(湿気) と反応して硬化します。 その反応が完了してしまえば強靭な皮膜を形成し、強力な接着力を発揮 します。反応が終わったPURは再び熱で溶解されることはありません ので耐熱性、耐寒性にも優れています。 ※EVA=エチレン酢酸ビニル共重樹脂(Ethylene Viny Acetate) PUR=ポリウレタンリアクティブ(Poly Urethane Reactive) ■ PUR製本のメリット ポリウレタン系ホットメルトによる無線綴じ製本「PUR製本」には、 次のような5つのメリットがあります。 (1) 丈夫な本 引張り強度は、どのようなタイプの印刷用紙でもPURが通常のホッ トメルトを上回ります。極端な話、本の背を内側にして折り、ズボン のポケットに押し込んだまま歩いたり走ったりしても、PUR製本で あればびくともしないそうですが、通常のホットメルトの場合はもち ろん、そうは行きません。 これは、PUR製本では、1枚1枚のページが紙の繊維レベルで接着 剤でしっかり固定されているからです。さらに、PURは変質劣化す る心配がありません。したがってPURで製本された本は長持ちし、 半永久の命を得ることができと言われています。 (2) 広開性が良い PUR製本は広開性の良さも通常のホットメルトと比べ格段に良く、 本を開いたままの状態で、ハンズフリーで読むことができます。 これは、PURが強靭な皮膜と強力な接着性能を持ち合わせているた め、従来のホットメルトに比べ、製本1冊当たりの塗布量を2分の1 から3分の1程度まで少なくするが可能となり、その結果、開きがよ くなるということです。 (3) 製本出切る素材の選択肢が増大 綴じる素材の種類が多いこともPURが従来のホットメルトよりも優 れている点です。ホットメルトで使用できるのは紙に限定されていま したが、PURはプラスチックフィルム等にも使えるので、製品のデ ザインの可能性が広がり、付加価値を高めることができます。 (4) 温度変化に強い PUR製本は外気温度に影響されにくく、暑さや寒さでも、温度変化 による劣化が少ないという特性を持っています。 日本の寒い冬、気温の下がった住宅のなかでも、あるいは温度も湿度 も上昇する日本の夏に車のフロントガラスの前に置いても、PUR製 本ならマイナス30度からプラス100度の範囲で書籍の形状と性能を維 持できると言われています。 (5) 環境に優しい素材 PURはインキ溶剤に対する耐性が強く、大豆油インキでフルブリー ド(全面)印刷した折丁を綴じることも可能です。 また、接着剤の溶解温度が低め(一般のホットメルトの約3分の2) なので、エネルギーおよびCO2排出を節減できます。 書籍が再生紙に生まれ変わる時も、加熱しても溶け出さないため、古 紙リサイクル工程で接着剤の固まりとなりパルプ(紙の原料)と完全に 分離することができます。ほぼ100%(一般のホットメルトは70%と言 われます)が取り除かれ、紙に残って斑点になるなどの問題が起こら ないので、エコマークの認定を取得するのに適した接着剤です。 ■ PUR製本のデメリットと今後の展望 このように、いいことずくめのPURですが、欠点もあります。 まず第一に、まだまだ従来のホットメルトに比べ、まだ高価であること。 第二に、オペレータに、使いこなしのための習熟が必要であること。 また、第三に、PURには、専用塗布装置が必要で、従来のホットメル ト塗布装置では使用出来ないため、設備を更新する必要があることと、 PURが空気中の水分と反応する接着剤であるため、空気に出来るだけ 触れないように管理することが必要になることもデメリットと言えるで しょう。 このため、開発当初は高級書籍のみにPUR製本が使われていましたが、 最近は中小製本会社での使用事例も徐々に見られるようになってきてい るということです。 PURへの移行が効果的とされているのは、コスト削減のために上製本 をPURの並製本にすることだと言われています。 全体的にコストが圧縮されている現状で、いかにコストを抑えるかを考 えると、通常のホットメルトの並製本をPURに置き換えるとコストア ップにつながり、時間もかかるためです。 PURが日本で本格的に使用され始められてからまだ5年ほどの歴史し かありません。ある機械メーカーによると、PURを5年ほど研究して、 その長所と短所がだんだんわかってきたということです。PURが必ず しも万能というわけではなく、これからも研究の余地があるようです。 ■ 最後に 〜製本の未来を考える〜 私たちは、ともすると企画・デザイン・製版・印刷の結実が製本であり、 製本こそが最終製品であることを忘れがちではないでしょうか。 2回にわたって見てきたように、製本は単なる糊付け加工ではありませ ん。印刷で具体的に企画提案ができる大切なツールだと考えるべきです。 最近、注目を浴びている特殊加工や、特殊印刷をうまく取り入れた製本 が多く見受けられるようになりました。 例えば印刷後に、インクののった部分に「ニス引き」という処理を施す と、その部分が浮き上がって立体的に見え、高級感やインパクトを与え ることができますが、従来はコストなどの面から大ロットの、しかも通 常の印刷によるものに限られていましたが、最近はオンデマンドで出力 した小ロットのものにもこうした加工をするサービスが登場しています。 またあるオンデマンド印刷サービス会社の企画担当者からは「製本こそ が(印刷の)付加価値です」という言葉も聞かれ、時代の流れの変化が 感じられます。昨今のWebとのメディア競合の中で、印刷メディアをよ り付加価値あるものにする鍵を握っているのが製本であるといっても過 言ではないでしょう。 〜次号(4月13日配信)は「WEBの基礎知識〜CMS〜」をお届けします〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★メルマガ相互広告&サイトの相互リンク募集中! ご連絡はこちらまで。ご意見・ご感想もお待ちしています。 >>>info@nishiki-p.co.jp ─────────────────────────────────── 印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】 ─────────────────────────────────── ■発行周期 隔週(隔週月曜日)配信 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