2009/02/02
ニシキプリントNEWS vol.183「本の装丁」
┏━━━━━━━━━━━┓┏┓━┓┏┓┏━━┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓ ┃ どのような印刷を ┃┃┃┓┃┃┃┃━━┛┃┗┛┃┃┃┃┏┛┛┃┃ ┃ ご希望ですか? ┃┃┃┃┃┃┃┏━━┃┃┏┓┃┃┃┃┗┓┓┃┃ ┗━━━━━━━━━━━┛┗┛┗┛┗┛┗━━┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┏━━┓┏━━┓┏┓┏┓━┓┏━━┓┏┓━┓┏━━┓┏┏━┓┓┏━━┓ ┃━━┃┃━━┃┃┃┃┃┓┃┗┓┏┛┃┃┓┃┃━━┓┃┃┃┃┃┃━━┛ ┃┏━┛┃┏┓┓┃┃┃┃┃┃ ┃┃ ┃┃┃┃┃━━┛┃┃┃┃┃┏━━┃ ┗┛ ┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┗┛ ┗┛┗┛┗━━┛┗━━━┛┗━━┛ ━印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 当マガジンでは、印刷を必要とされる企業や個人事業主の皆さまへ ☆賢い印刷発注☆にお役立ていただける実用的な情報をご提供します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ >> 2009.02.02 183号 ★今回のコラムはよくわかる印刷講座「本の装丁」です。 ─────────────────────────────────── 皆さん、今日から2月の仕事始め。もうすっかり正月気分は抜けたと思います が、寒さはまだまだ続きます。風邪など引かないように気をつけましょう。 さて、このところ印刷の近未来のお話が続いたので、今回は視点を変え、「本 の装丁」という、ある意味、本の根本的な話題を取り上げることにします。ど うか最後までおつきあいのほどを。 (今年こそと決意を新たにするも、早くも年初から家計が赤字のシン) ※このメルマガは等幅フォントでお読み下さい。 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ★よくわかる印刷講座 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ▼知っておくと便利な印刷知識や印刷用語をご紹介。 ■ 本の「装丁」とは まずは、「装丁」の定義から。 装丁 (そうてい)とは、一般的には本を綴じて表紙などをつける作業 (つまり製本作業)を指しますが、書籍の場合、カバー、表紙、見返し、 扉、帯、外箱のある本は外箱のデザイン、また製本材料の選択までを含 めた、造本の一連の工程またはその意匠(すなわちデザイン)を意味し ます。そして、装丁を担当する専門家のことを装丁家(装訂家、装幀家) と呼びます。また、装丁と本文のデザインなどを含めた図書設計を行う 専門家のことを、図書設計家と括る場合もあります。 「そうてい」の漢字表記は不安定で、「装幀」または「装釘」、「装丁」 とも表記されますが、元来は装(よそお)い訂(さだ)める意味の「装 訂」であるとも言われます。 明治までは、造本作業は単に「製本」と呼ばれましたが、明治末年頃か らの出版文化の発展とともに、装い釘(てい)じると言う意味の「装釘」 が使われ始めました。「装釘」は「装い釘うつ」を意味する熟語として 中国古代より存在した熟語です。 1920年代後半からは、釘との連想を避けて「装幀」と表記することが多 くなりました。1946年(昭和21)に発表された当用漢字表には幀・釘と もに入っていなかったため、1956年(昭和31)の国語審議会報告「同音 の漢字による書きかえ」では、装幀・装釘には「装丁」が置き換えられ ることとされましたが、装幀や装釘も一般に用いられています。 (以上、オンラインフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 を参考にさせていただきました。) このように、装丁という言葉は、広義には「製本作業全体」を指すわけ ですが、今回は主として狭義の「本のデザイン、また製本材料の選択ま でを含めた、造本の一連の工程またはその意匠」を中心にお話を進める ことにします。 ■ 装丁の歴史 〜西洋〜 西暦前4000年頃、バビロニアやアッシリア地方では、粘土に文字や絵画 を記し、これを天日で乾かすか、またはかまどで焼き固めて、書物の代 用としました。これらの文字や絵画を保護するため、同じ粘土で外箱が つくられていました。このような外箱は、今日から見れば、内容の破損 を防ぐための、表装の役割を果たしていたといえます。 また、古代エジプトでは、文字を刻んだ鉛の書板の幾枚かを、金輪でひ とまとめにすることが行われていましたが、これも書物の散逸を防ぐた めに考えられたもので、書物を綴じるという考え方の始まりと言えるで しょう。 また、エジプトでは、西暦前3000年頃からパピルスが書写材として用い られるようになりました。これはやがて膠(にかわ)のようなのもので つなぎ合わせ、その端に軸をつけ、巻物とするようになりましたが、こ れらの軸は、次第に獣の骨や木や象牙などで飾られるようになりました。 これは一種の装丁であると見ることが出来ます。これこそが装丁のはじ まりであるとする研究家もいるようです。 書物の形態が今日のようになったのは、5〜6世紀の頃と見られ、その 頃の装丁の仕事は、大部分がかじ屋の仕事でした。というのも、金・銀・ 宝石をちりばめた豪華装飾本が流行したのがこの時代だったからです。 これらは美術品の一種として扱われ、ことに教会の聖書の装丁などは、 実に華麗を極めたとされています。 しかし、一方で主に樫板を表紙の芯に用い、羊や山羊のなめし皮でこれ を覆って、切込み細工をした皮革装丁本もつくられるようになり、12世 紀頃には、型押しによる空押し装丁も行われるようになりました。 この頃になると、装丁の仕事は、ほとんど全て僧院内の記録僧たちの手 によって行われていました。 15世紀中頃、グーテンベルクの印刷術が発明されると、それに伴い、こ れまで僧侶の手にあった造本術も、専門家の手に移されました。 これにより装丁技術も急速な進歩をとげ、15世紀の末から16世紀にかけ、 本格的な皮革表紙の金箔押し装丁が、ヨーロッパ全土に流行しました。 特にイギリスやフランスでは王室御用達の装丁師により、優れた作品が つくられました。 また16世紀中頃から、イギリスを中心に表装材料として、皮革の代わり にビロードや絹布あるいは帆布に刺繍を施したものが用いられるように なりました。 今日広く用いられている装丁用クロスが発明されたのは19世紀はじめ、 イギリス人が考案したものです。機械工業が興り、各種の装丁機械が発 明されるようになって、現在のような書籍装丁が完成したのです。 ■ 装丁の歴史 〜東洋〜 東洋の装丁の歴史は、そのほとんどを中国に源を発していると言えます。 古くは書写材として木・竹・金属・玉石が用いられましたが、春秋時代 から漢の時代にかけては、竹や絹が併用されました。その後、紙が前漢 に発明されると、後漢からは紙も用いられるようになりました。 はじめは絹も紙も巻物の形でしたが、やがて読むのに便利なように、紙 をジグザグに折り畳んだ形になりました。 その後、隋や唐の頃には二つ折りにした表紙に、折本の最初と最後のペ ージをまとめて表紙に貼り付けたものも流行しましたが、これらは年月 が経つと折り目が切れやすくなるという欠点があったので、紙を重ねて 糊付けし、表紙でくるむ方法が考案されました。ところが、この方法も、 糊を用いることで虫害にかかり易いという欠点があったため、糊を使う 代わりに糸で綴じるという方法になりました。この綴じたものを「冊子 (そうし)」と呼んだそうです。今日、本を「冊子(さっし)」と呼ぶ のはここから来ています。 その後、製紙の技術が進んでくると、次第に良質の薄い紙が作られるよ うになりましたが、このような紙に文字を書いたり印刷したりすると、 裏写りして見苦しいことから、本の小口側(本の綴じ側の反対のめくる 側)に折り目がきて、袋状になる、「袋とじ」が考案され、明の時代 (1368-1661)以降、他の装丁方法を駆逐して、使われるようになりま した。この装丁の仕方は、現在も簡易装丁の1種として使われています。 日本の装丁の変遷は、中国のそれとほぼ同じような形で変遷しましたが、 「やまととじ」と言われる日本独自の綴じ方も考案されました。 これは数枚の紙を同時に2つ折りとして、その折り目を糸で綴じて1帖 (ちょう)とし、こうした数帖をさらに糸でかがって1冊にし、それに 表紙をつけて仕上げるものです。この装丁の仕方は平安時代の末期から 和歌や国文に関する書物に用いられました。 鎌倉時代になると、日本でも袋とじが行われ始めました。このころから 各寺で書物が刊行されるようになり、装丁も寺の僧の手によって行われ ていたものと思われます。しかし、江戸時代になると、「書肆」(しょ し=今の「本屋・書店」にあたる)というものが独立した商売となり、 そこで一切が行われるようになったそうです。 西欧で考案された洋式装丁術がわが国に伝えられたのは、明治6(1873) 年5月、当時の印刷局(現在の国立印刷局)に装丁師として雇われたイ ギリス人、W.F.パターソンが装丁術を伝授したことに始まり、同年、 岡山儀正が洋式装丁の専門工場を設立しました。これが日本人による洋 式装丁の始まりと言われています。 (★以上の2項、日本エディタースクール出版部刊、「出版編集技術 (第2版)下巻」を参考にさせていただきました。) ■ 表紙の装丁の材料について 西欧諸国では自分が気に入った本を、好みに応じて、美しく装丁すると いう古くからの伝統があります。 これに対して、先の項で述べた通り歴史的には日本の和書は背表紙のな い和とじであり、和紙が洋紙に比べ、極めて強じんで保存性がよい(最 上のものは条件さえ整えば300年経っても使えると言われます。)のと、 和とじは比較的素人でも修復が容易であるため、装丁の方法を発達させ る必要がなかったため、日本ではこのような習慣がないのかも知れませ ん。 そのため日本では、自分の蔵書を一冊ずつ装丁家に依頼する人はごくま れで、また優れた装丁家を見つけることもなかなか困難です。 一冊装丁を依頼すれば、非常に小さな本でも最低何万円もかかり、大き な本なら最低十万円以上すること、さらに上にはきりがないことが日本 人には馬鹿らしく思えるのでしょう。 本の装丁には普通、動物の皮、マーブル紙、厚紙、などが用いられます。 マーブル紙とは特殊な方法で大理石のような文様をつけた紙のことです。 印刷とは異なり、本当のマーブル紙は特殊の水溶液面に絵の具を落とし て、うまくかきまぜて、偶然の文様を作り、それを紙に写しとったもの です。従って一枚一枚すべて文様が異なり、良質の紙で色と文様の優れ たマーブル紙は、かなり高価です。 西欧の上流家庭では、大事な人へのプレゼントを、世界でたった一つの 物という意味をこめて、本物のマーブル紙で包装して贈る習慣がありま す。マーブル紙の起源は諸説ありますが、日本の和紙の墨流しの技法が 起源だという説もあります。マーブル紙といってもピンからキリまであ り、その模様と紙の種類により値段は随分異なります。最高級のものは 雲状の線の模様が入っていて透かしマーブル紙といい、時には高級な皮 素材のモロッコ皮より高価なこともあります。マーブル紙は日本でも作 られていますが、初歩的なもののみで、透かしマーブル紙は作られてい ないようです。 本物のマーブル紙ではなく、マーブル模様が印刷された紙、コロタイプ 印刷されたもの、あるいは版画のリトグラフ技法で印刷されたもの等、 各種の擬似のマーブル紙もあります。 皮はモロッコ皮〔山羊〕、カーフ〔子牛〕、ベラム〔羊皮紙〕、白豚等 が使用されますが、圧倒的にモロッコ皮が多いようです。モロッコ皮の 本は西洋諸国の装丁家が非常に長い年月をかけてついに辿りついた究極 の本の姿といわれています。 モロッコ皮とは山羊の皮をタンニン剤でなめした良質の皮で、昔はモロ ッコ特産であったため、この名があります。現在ではモロッコ以外でも 作られているようですが、非常に高価です。 モロッコ皮では、その美しい表面の細かい凹凸の文様(「しぼ」と言い ます。)と独特の肌触りが愛書家を魅了するようです。愛書家なら一冊 でもよいからモロッコ皮の本を持ちたいと思うものだといいます。 装丁家に依頼して装丁した本でなく日本で大量に印刷されている本の皮 装本としては数十年前までは各種のものが出版されていました。 特殊な本でなく一般の人が利用する本としては、かつては英語の辞書等 で総皮装本が出版されていました。 しかし、天然皮革よりはるかに安価で、丈夫な人工皮革の出現により、 量産される革装本は今の日本には、ほとんど無くなってしまいました。 装丁の中には、好事家好みの、いわゆる「ゲテ装本」として、みの虫の 巣、白樺、ヘビ、トカゲの皮などを使用したものもあります。 しかし、ゲテ装本の最たるものは人皮装丁本でしょう。 この人皮装丁本は、一説によれば、世界に少なくとも百冊以上はあるだ ろうと言われています。 最も有名なのは、フランスの天文学者で詩人として知られるカミル・フ ラムマリオン博士の詩集『空の中の地』の一冊で、博士の詩を愛し、若 くして世を去ったある伯爵夫人の遺言により、夫人の肩の皮で装丁した もの。その本の表紙にはフランス語で「ある婦人の心からの願いを容れ、 その人の皮で装丁す、一八八二年」と麗わしく金文字で型押しされてい るそうです。 同書は長く博士の手元にあったそうですが、博士夫妻の没後はアメリカ のある愛書家のところに秘蔵されることになったそうです。 また、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツのブッへンワルト捕虜収容所 長の妻イルゼ・コッホは人間の皮、特に刺青のあるものに興味をもち、 夫の地位を利用して、刺青のある捕虜を殺害させ、その皮で本のカバー をつくり、ヒトラーの『わが闘争』や、家族のアルバムや日記を装丁し たと言われます。 さすがに、本を個人の好みで装丁する習慣がほとんどない日本では、こ の手の話は聞かれないようです。 ■ 最後に 〜装丁家語録〜 最後に、第一線で活躍されている装丁家の方々が、自身の本に対するス タンスや、仕事の仕方などについて語った「装丁家語録」をご紹介しま しょう。 緒方 修一 氏 「装幀は言葉(タイトル)に左右されます。そこにきれいな言葉がなけ れば、きれいな本は出来ない」 (『イラストレーション』2005年5月号) 葛西 薫 氏 「書店で目立たなくともいいと僕は思っているんです。平台とそこだけ がへこんで陥没しているような、いつ発売されたのか分からないよう な感じが好きです。むしろ読者が買ってくれて持って歩いているとき の風景だとか、机の上に置かれたときにどんなムードになるのかとい うことを考える。それと書棚に収まった後の背をいちばん大事にして います」。」 (『装幀列伝』臼田捷治 平凡社新書 2004年) 坂川 栄治 氏 「僕は基本的にゲラは読まず、その分編集者とじっくり話し合ってデザ インの方向を決めています。その本をどんなイメージでどう売ってい くかについては、編集者が一番主導権を持っていると思うので、その いいお手伝いが出来ればと考えています。」 (『イラストレーション』2005年5月号) 祖父江 慎 氏 「カバーだけならパッケージ・デザイン。本体部分でどう内容を伝えら れるかが、ブックデザインの醍醐味です」 (『Pen』2004年12月1日号) 平野 甲賀 氏 「装丁が本と読者をつなぐんじゃない。本と読者をつなぐのは、あくま でもその本の中身だと思う。装丁はちょっとしたサービス。ぼくがで きることといったら、その出版社がある感じをもって本を出しつづけ ている、その動きをサザナミみたいに、できるだけ気持ちよく表現し ていくことぐらいじゃないかな」 (『平野甲賀[装丁]術 好きな本のかたち』晶文社 1986年) 松田 行正 氏 「書籍のカバーデザインでまず気にするのは紙の選定。手にした時の手 触り感を大切にしたいので、ざらっとした感触のあるものを使うこと が多いです」 (『編集会議』「アートディレクターは本のどこを見る? 2005年) こうして見ると、本の装丁にも様々な見方があることがよく分かります。 皆さんも、書店に行く機会があったら、平積みにされている新刊書など の装丁が、どういう意図でデザインされているのか、色々と考えながら、 見てみてはいかがでしょうか。 〜次号(2月16日配信)は、ちょっと変則的ですが、続けてシンの担当で、 「製本 〜その1〜」をお届けします〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★メルマガ相互広告&サイトの相互リンク募集中! ご連絡はこちらまで。ご意見・ご感想もお待ちしています。 >>>info@nishiki-p.co.jp ─────────────────────────────────── 印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】 ─────────────────────────────────── ■発行周期 隔週(隔週月曜日)配信 ■配信元 株式会社ニシキプリント http://www.nishiki-p.co.jp/ ■お問い合わせ info@nishiki-p.co.jp ■バックナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000095734 ■配信システム まぐまぐ(ID 0000095734) http://www.mag2.com/ メルマ! 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