2008/12/08
ニシキプリントNEWS vol.179「今年一年の印刷業界を振りかえって」
┏━━━━━━━━━━━┓┏┓━┓┏┓┏━━┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓┏┓ ┃ どのような印刷を ┃┃┃┓┃┃┃┃━━┛┃┗┛┃┃┃┃┏┛┛┃┃ ┃ ご希望ですか? ┃┃┃┃┃┃┃┏━━┃┃┏┓┃┃┃┃┗┓┓┃┃ ┗━━━━━━━━━━━┛┗┛┗┛┗┛┗━━┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┏━━┓┏━━┓┏┓┏┓━┓┏━━┓┏┓━┓┏━━┓┏┏━┓┓┏━━┓ ┃━━┃┃━━┃┃┃┃┃┓┃┗┓┏┛┃┃┓┃┃━━┓┃┃┃┃┃┃━━┛ ┃┏━┛┃┏┓┓┃┃┃┃┃┃ ┃┃ ┃┃┃┃┃━━┛┃┃┃┃┃┏━━┃ ┗┛ ┗┛┗┛┗┛┗┛┗┛ ┗┛ ┗┛┗┛┗━━┛┗━━━┛┗━━┛ ━印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 当マガジンでは、印刷を必要とされる企業や個人事業主の皆さまへ ☆賢い印刷発注☆にお役立ていただける実用的な情報をご提供します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ >> 2008.12. 8 179号 ★今回のコラムはよくわかる印刷講座「今年一年の印刷業界を振りかえって」 です。 ─────────────────────────────────── 皆さん、おはようございます。今年もはや1か月を切ってしまいました。 私が担当するメルマガは今号が今年最後となります。そこで今回は印刷業界で 今年話題になったニュースをふりかえってみることにしました。どうか最後ま でおつきあいのほどを。 (今年の冬が暖冬でありますようにと祈っている、夏生まれのシン) ※このメルマガは等幅フォントでお読み下さい。 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ★よくわかる印刷講座 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ▼知っておくと便利な印刷知識や印刷用語をご紹介。 ■ 今年の3大印刷業界ニュース 今年の一番の印刷業界のニュースといえば、やはり再生紙の古紙率偽装 問題でしょう。メルマガ157号でも緊急に取り上げた話題です。 あと2つ選ぶとすれば、以下の2つではないでしょうか。 2位 印刷用紙の値上げ 3位 印刷用インキの環境偽装問題 まず、2位は今年の原油価格急騰の影響による原材料費値上がりによる ものです。今年は、本当に何もかも値上げで困りましたね。 3位は今年の2月頃、再生紙の古紙率偽装問題が下火になりかけた頃、 印刷用インキメーカー数社で、「エコマーク」や「ソイシール」を添付 して出荷したオフセットインキと新聞インキの一部に、基準を満たして いない製品があったことが明らかになったものです。 古紙率偽装問題で大騒ぎした直後だったので、あまり話題にものぼりま せんでしたが、このように今年は印刷を取り巻く環境で相次いで偽装が 起きた年となりました。 また、再生紙の古紙率偽装問題については、その直後に続いた食品の偽 装や汚染問題等の陰に隠れて、いつのまにか忘れ去られてしまった感が あります。(製紙会社は矛先がそれてほっとしたかも知れませんが。) そこで、以下にその後の古紙率偽装問題がどうなったかについて見てみ ることにしましょう。 ■ 古紙率問題への製紙業界の罪の意識の希薄さ どうも製紙業界には、古紙率配合問題に対して、罪の意識が薄いのでは ないか、という指摘があります。それはある大手製紙会社の元社長の次 のような発言によく表れているように思われます。 「今回の古紙配合比率が違っていた問題は、わかりやすくいえば、牛 肉を豚肉と言って売っていたようなもの。紙のユーザーは品質が高く、 製造コストも高いものを安く手に入れられた。食品偽装とは根本的に 違う。現場には偽装との意識が低かった」 こうした罪の意識の希薄さには、製紙業界では、ずっと前から、「再生 紙は必ずしも環境に優しくない」ということをよく知っていたからでは ないかと思われます。 ある製紙会社が2005年に、自社工場で作るコート紙を対象に、原材料の 調達から製造までのCO2排出量を調べた結果、 「古紙100%配合紙の製造段階における化石燃料由来のCO2排出量は、 バージンパルプだけで作る紙の約2倍」 という結果が出たそうです。これには次のような理由があります。 木材チップを原料とするバージンパルプは、製造時に副産物として得ら れる黒液(リグニン)をボイラーの燃料に利用できるので、バイオマス (生物資源)由来の黒液は、カーボンニュートラルの考えに基づいて燃 焼時にCO2を排出してもゼロとみなされます。 これに対して、古紙からパルプを作る際には黒液が生成されません。そ のため、燃料に重油などの化石燃料を使用した場合、製造段階のCO2排 出量が多くなる、というものです。 この製紙会社に限らず、他の製紙会社も、こうした事実を早くから知っ ていたのではないかと思われます。 ■ 古紙率問題への製紙業界の刑事責任を問うことの困難さ 今回の古紙偽装は、最終的に公正取引委員会から排除命令が出て、やっ と事件性が世の中に明らかになったものと言えますが、今回、被害者が 訴訟を起こしたという話はほとんど聞かれません。 これは紙の流通、例えば企業で使用するコピー用紙の場合、次のような 複雑な経路を経ているのが原因と思われます。 製紙企業 → 紙問屋 → 小売・取次 → 企業総務部等 最終的な購買者である企業が訴えることができるのは、直接的な小売・ 取次になりますが、その際、売買契約書を交わして「古紙配合率100%の ものを納入すること」と書いてあれば、法律的な対処をすることもでき るかもしれませんが、普通そこまではしないものです。 この事件全体の発端になった、年賀はがきの古紙配合率が仕様通りの40 %になっていなかった事件は、当然、契約関係があったので、訴訟を起 こす気になれば、起こすこともできたはずですが、偽装していたのが製 紙会社全部に及ぶことが明らかになったせいか、訴訟には至らなかった ようです。 それから、紙に古紙が含まれているかどうかの分析方法が発見されたこ とが、製紙会社の偽装の裏づけという面で重要だったようです。 紙を普通に外から見ただけでは古紙が含まれているかどうかはわかりま せん。しかし、古紙パルプは漂白されていることを用いて、顕微鏡下で 古紙パルプの量をどうにか判別できるという方法が見つかったため、製 紙会社も言い逃れができなくなり、偽装をしていたことを次々と認める 結果になったというものです。 もし、この方法が見つからなければ、内部告発によってマスコミがいく ら報道しても、製紙会社は偽装を認めなかったかも知れないと言われて います。 (しかし、この方法では、古紙率100%か80%かという微妙な違いまで は見分けられないそうです。) ■ 製紙会社によって大きく異なる古紙率偽装是正への取り組み 再生紙の古紙配合率偽装問題で公正取引委員会は4月25日、コピー用紙 に実際より高い配合率を表示していたとして、景品表示法違反(優良誤 認)で業界大手を含む、国内でコピー用紙を生産する全8社に再発防止 などを求める排除命令を出しました。 各社は再生紙コピー用紙の箱やラベルに「古紙配合率100%」などと表示 していましたが、実際の配合率は半分以下の製品が多く、数%のものも あったそうです。 この再生紙の古紙配合率偽装問題で、これまでにトップの引責辞任を決 めたのは2社だけです。業界には幕引きムードが漂っていますが、けじ めの付け方が甘いとの批判もあります。 このように、一様に排除命令を受けた国内8社ですが、古紙率偽装問題 に対して、早くから是正する方向で動いていた会社と、偽装が発覚する 最後の最後まで、是正への取り組みがなされなかった会社では、大きな 隔たりがあります。 このことは、大手製紙会社2社(N製紙とO製紙)の公開されている報 告書を対比してみるとよくわかります。 まず、報告書を作った調査委員会の構成が、N製紙とO製紙とでは全く 異なっています。 N製紙調査委員会 *委員長 N製紙グループ取締役副社長(CSR委員長) *委 員 N製紙取締役、常任監査役、監査役、経営監査室長、 CSR室長、コンプライアンス室長など 6名 *外部委員 コンサルティングから1名、弁護士1名 O製紙の調査チーム *座 長 社外監査役 弁護士 *委 員 社外取締役 2名、社外監査役1名、弁護士3名 *事務局 統括技術本部長など4名 この委員の構成を見れば、社外の委員がごくわずかのN製紙と、社外か らの多くの委員によって客観的に調査しようとしているO製紙の姿勢の 違いは明らかです。 この委員の構成の違いがそのまま報告書にも表れていると言えます。 N製紙の報告書は、文章は長いものの、分かりにくく、実質的な中身が 乏しいものになっています。 例えば、N製紙の報告書に次のような記述があります。 「生産工場においては、技術環境室および製品化にて基準配合との乖離 は認識していたと思われるが、古紙配合率を顧客に保証していること に対する重要性の認識に欠けていたため、乖離を是正するはたらきか けは取られなかった。 「品質保証部は、新規製品の受注受付時に営業部門の部長とともに工場 へ検討依頼を行うが、この依頼を受けて工場にて作成された品質基準 書に公称古紙パルプ配合率が守るべき基準として明記されていなかっ た」。 これらの記述からは、N製紙に古紙配合率を守ろうという意識は全くと 言っていいほど感じられません。 N製紙は記者会見で、「配合率の偽装は、決してコスト要因ではありま せん。古紙の入手が困難であり品質を優先したために行ったことです。」 と述べましたが、コストをいとわなければ、上白古紙を使うなどして配 合率を満たすことは技術的に可能であったことは明らかで、コストを下 げるために偽装を続けていたと言われても仕方がないと思われます。 これに対して、O製紙の報告書は、実際、DIP設備(古紙から印刷イ ンクを取り除き、古紙を処理するための設備。“De Ink Process”の頭 文字をとったもの。)がどのぐらいあって、再生紙がどのぐらい出荷さ れたか、そのバランスを基礎に解析を進めた、分かりやすい記述になっ ています。 例えば、O製紙の報告書には、こんな記述があります。 「2002年頃、古紙処理能力よりも販売している再生紙に含まれる古紙量 の方が多いことに気付いた営業部門の社員が、技術部門にリサーチを 依頼した結果、当該社員が乖離の事実を認識したことが認められる。 当該社員は、乖離の実態を事業本部長に報告したが、顧客との関係も あって、一気に変えることはできなかったとのことである」。 「2003年にコンプライアンス室が設置され、(中略)乖離についてもコ ンプライアンスに反する問題としての認識が社内に浸透する契機とな り、その後の是正の取り組みが進んだ要因となったものと考えられる」。 「2005年にコンプライアンスの社外研修を受けた技術部門の社員が乖離 を放置すれば個人責任を追及される可能性があることを聞き、前出の 営業部門の社員とともに、事業本部内に是正のためのプロジェクトチ ームを立ち上げ、取り組みを開始し、約半年の実態調査ののち、顧客 に代替品の提案などを行いながら、徐々に乖離を解消していった」。 「なお、是正の過程では、他工場のDIP設備余力を利用し、コスト アップを厭わず、他工場DIPを運搬・利用や、上白古紙の配合によ り対応している」。 O製紙は、このような自主的な是正をしていたことから、極めて分かり やすい報告書を書くことができたようです。 この報告書によると、O製紙は、偽装をしていたものの、2004年以降改 善に取り組み、コストの高い再生紙を供給しており、恐らく、かなり損 失をこうむっていたと思われます。 メディア報道では、両企業が同程度の偽装をしたように読み取れる記事 やテレビ報道が多かったようですが、実際には、早くから偽装に気付き、 それがコンプライアンス上問題であることを認識し、是正に向けて取り 組んでいたO製紙の態度と、それを認識していながら、是正ができなか ったN製紙の態度が、その報告書のトーンの中に明瞭に読み取れます。 両社が一律に同罪として扱われているのは不公平な気さえしてきます。 ■ グリーン購入法見直しの経緯 グリーン購入法に基づく基本方針でコピー用紙の判断基準は「古紙パル プ配合率100%」とされています。そこで、環境省は次の条件で納入可 とする緊急避難措置を6月まで認めました。 (1) 事業者が、不足する環境価値に対し、植林、古紙回収促進への支援 措置などの環境保全のための対策を講ずる旨を、自ら申し出た場合 (いわゆるオフセットなど)。 (2) 事業者が、不足する環境価値に対応するため、環境に配慮されたバ ージンパルプ(森林認証された木材から生産されたもの、間伐材か ら生産されたもの、植林木から生産されたもの)が配合された製品 による旨を、自ら申し出た場合。 しかし、事業者の宣言さえあれば実施は納入後でもよいとされ、その場 しのぎの措置でした。 7月以降にどうするかは、特定調達品目検討会で、検討が行われました。 その結果、提案された新しい判断基準案は、次のような判断基準引き下 げ案でした。 (1) 古紙パルプ配合率100%かつ白色度70%程度以下であること。ただ し、配合されている古紙パルプのうち30%を上限として、環境に配 慮された原料を使用したバージンパルプに置き換えてもよい。 (2) 塗工されているものについては、塗工量が両面で12g/m2以下である こと。 (3) 製品に古紙パルプ配合率、白色度及び塗工量が記載されていること。 環境に配慮された原料を使用したバージンパルプが配合されている 場合は、古紙パルプと環境に配慮された原料を使用したバージンパ ルプの合計の配合率が記載されていること。 ところが、6月27日に開かれた特定調達品目検討会で最終的に決まった のは、「古紙パルプ配合率100%」という元の基準でした。製紙メーカ ー側が、古紙配合率100%コピー用紙を政府の必要量供給できると回答 したため、基準を引き下げる必要はないと判断したそうです。 しかし、メーカーの回答は政府の必要量を供給できるというものに過ぎ ず、多くの自治体なども国と同じ基準「古紙100%」を採用しているた め、品薄状態が続いているといいます。自分たちさえ調達できればとよ いとばかりに基準を決めた環境省の判断は正しかったのか、疑問が残り ます。 ■ 最後に 〜今後の古紙配合率問題再発防止策〜 グリーン購入制度は、事業者の示した仕様が正しいことを前提としてい るため、今回のような偽装は制度の根幹を揺るがす問題です。 現状では罰則のないグリーン購入制度にも罰則規定を設けるべきという 意見もありますが、公正取引委員会が製紙メーカー8社に排除命令を出 したことなどを踏まえ、特定調達品目検討会では、既存の他の制度との 連携によって対応は可能とされました。 また、チェック・検証をどのように強化するかも検討されました。ただ し、過度な対応は、社会コストの増加を招き、環境物品の市場への普及 の障害になるおそれがあるともされており、議論は簡単ではありません。 今後のグリーン購入制度の強化策として、特定調達品目検討会は次のよ うな提案をしています。 (1) 製品への必要事項の表示を徹底させるとともに、その表示方式の改 善により、不適正な表示を行ったものとして責任追及が可能となる 仕組みとすること (2) 判断の基準等への適合状況調査によるグリーン購入制度の信頼性の 確保及び抑止効果の観点から、一定量のサンプルに対し調査を行い、 不正事案については公表を行う等の対応を実施すること また環境省は、グリーン購入法の対象18分野237品目について来年度か ら4〜5年かけて基準を満たしているかどうかを調べる「エコテスト」 を実施する方針を固め、来年度の予算要求を行うと報道しています。 ★ グリーン購入法に関する記事は『環境と原子力の話』のHPを参考に させていただきました。 (http://homepage3.nifty.com/ksueda/koshi.html) 振り返れば、昨年末に引き続き、今年は印刷業界のみならず、色々な偽 装問題がありました。来年こそは偽りのない年であってほしいものです。 〜次号(12月22日配信)は「WEBの基礎知識〜WEB制作のこれまでとこれから〜」 をお届けします〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★メルマガ相互広告&サイトの相互リンク募集中! ご連絡はこちらまで。ご意見・ご感想もお待ちしています。 >>>info@nishiki-p.co.jp ─────────────────────────────────── 印刷会社がお届けするメールマガジン 【ニシキプリントNEWS】 ─────────────────────────────────── ■発行周期 隔週(隔週月曜日)配信 ■配信元 株式会社ニシキプリント http://www.nishiki-p.co.jp/ ■お問い合わせ info@nishiki-p.co.jp ■バックナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000095734 ■配信システム まぐまぐ(ID 0000095734) http://www.mag2.com/ メルマ! 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