×For ever Blue×[vol.186]
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―――× For ever Blue ×―――
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― Today's Contents ―
×Novel×
"また会いましょう" by カナン
×Illust×
"眼鏡で10のお題 -- 06:スーツと眼鏡" by 龍生
×Free×
"人間なんでも一生懸命行動したという事実はネタになる" by カナン
今回の執筆担当:カナン
龍生
―× Novel ×――――――――――――――――――――――――――――
"また会いましょう"
「中野くん。こっち、こっち」
人のざわめく懇親会会場でも、彼の声はくっきりと通る。
声の主の名は、仁科聡。
今、最も期待されている若手研究者の一人。
そして、俺にとっては滅多に会えないけれど、大事な先輩であり、友人でもある人。
「おひさしぶりです」
「久しぶり。中野くんは発表、明日なんだね」
「そうなんですよ。仁科さんは最終日でしたっけ」
「うん、そうなんだよね。おかげで最後まで気が抜けない」
うちの分野で、国内最大規模の学会。
沖縄と北海道という日本の端同士の人間ですら関係者なら必ず顔を合わせる、
年に一回のイベント。しかし、俺が今年一番会いたかったのは間違いなく、この人。
「中野くん、去年は学会来なかったから、もしかして2年ぶり?」
「そうですよ。去年は教授が出させてくれなくて」
「それは手厳しい。ちなみに、今晩は空いてるんだっけ?」
「いや、教授が研究室で飲みに行くぞ、って号令かけてます」
「そっか。じゃあ飲むのは明日にしようか。中野くんはそのほうが発表終わって
気楽でしょ」
自分の発表予定を考慮せず、仁科さんが飲みの予定を入れる。
自分の発表はいいんですか?と尋ねようとしたところで、仁科さんが肩をたたかれ
後ろを向いた。
知り合いらしい誰かと話す仁科さんの横顔を見ながら、ふと思う。
見た目はいかにも賢そうで、いや実際賢いんだけど、育ちの良さと欲しい環境は
自分の力で手に入れてやるっていうハングリー精神がきれいに同居している人。
自分の強みをしっかり把握していて、しかも、それで直球勝負が出来る。間違いなく
変人だけど、間違いなく、いい人だし、何より何時間も話していてちっとも飽きない人。
もし、誰かに仁科さんがどんな人かを聞かれたら、きっと俺はこんな風に答える。
俺の場合はもとからウマがあったせいもあるけど、仁科さんと話すのが楽しいと
思う人が多いっていうのは間違いようのない事実で、仁科さんと飲んでいて終電を
逃したというエピソードを持つ人は実に多い。当然、本人はその人数分そういう経験を
しているわけで、
「俺って、なんか終電近くなると時計見なくなるんだよね。まぁ、だらだら飲むのも
好きだから問題ないんだけど」
とからりと笑う。そのときは、
「頭いいんでしょ。ちょっとは成長しましょうよ?」
って、つっこんでしまうけど、けして本心からはそう思っていない。
まず仁科さんと飲む場合、時間は長くても酒量が多くないから仮に朝まで飲むことに
なっても、その後に決定的な被害が出ない。俺は仁科さんとサシで朝まで飲んだことも
あるが、お互い翌日、寝不足はあっても深刻な二日酔いに苦しめられたことはない。
「仁科と飲んでて酔っ払うのも、酔っ払わせるのも、もったいない」
年上が注いだ酒は即効で飲み干せ、と言い放つ、うちの酒好き教授でも、仁科さん
だけはつぶそうとはしない。お前は話せばいい、と言われるから、仁科さんはよく
若手の生贄として、教授に差し出されている。それすら、偉い人と話すのもけっこう
おもしろいよ、と笑って仁科さんはこなしてしまう。
「基本的に寂しがりなんだよ。だから誰でも興味を盛ってくれた人は大事にしたいと
思うだけ。でも、ごくたまに中野くんみたいに、出会うのが運命みたいな奴もいて、
俺って運がいいんだな、って」
いつだったか、やっぱりだらだら飲みながら、仁科さんはそんな風に言っていた。
世間から見て、運がいいのはどうみても俺のほうだというのに、人生で一番強烈な
出会いをした友人、と仁科さんは嬉しそうに俺を他人に紹介してくれる。
「九州の学会に行った時に、ホテルのミスで部屋がダブルブッキングしたことがあって、
その相手が中野くん。シングルをもうひとつ用意できないって言われて、最初は
どうしようかと思ったけど、聞けば同じ学会に来てる学生だって言うし、ホテル側も
ツインなら用意できるって言ったから相部屋にしたんだよね。あの時はお互い
発表前日だっていうのに、練習そっちのけで語り明かしたっけ」
「それは仁科さんだけ。俺は人生初学会で、むっちゃ緊張しながら練習しました」
「そうだった?なんか初めて会ったのに、そんな感じがしなくて、いろいろ喋り倒した
記憶が・・・」
「仁科さんが、俺これでも研究員なんだよ、って言うからあれこれ尋ねてしまったんです」
「そうそう。若く見られるのは慣れてるけど、あれほど驚いた顔見たのはひさびさだったなぁ」
初めて出会ったとき、仁科さんは博士号をとったばかりの研究員で、これは今でも
そうだけど、実年齢よりずいぶん若く見えた。相部屋を持ちかけられた時、俺が
あっさりOKしたのは、相手も自分と同じ修士の学生だとふんだからだ。
「部屋がブッキングしてるって聞いて、俺なんかむちゃくちゃあせってるのに、
仁科さんは実にのんきそうでしたよね。それは困ったねって」
「だって絶対なんとかなると思ったし」
「その根拠のない自信はどこから来てたんです?」
「中野君の顔かな。こいつ相手ならなんとかなるって思った。」
聞けば、俺が相手を学生と思うことまで予想して、相部屋を申し出たらしい。
あれから4年弱。
仁科さんと会うのは、これで5度目ぐらいだろうか。
先ほど、俺の発表は課題てんこ盛りながらも無事終わった。
約束どおり、仁科さんと落ち合い、その他大勢で近くの居酒屋に入る。
「なんかサイクリングとかしたいなぁ。学会って頭は使うけど体は使わないから
バランス悪いんだよねぇ」
脳内がどんな風になっているのか、横を歩く仁科さんが、脈絡も無くそんなことをつぶやく。
「そういうことはせめて自分の発表が終わってからにしてください」
「今回、俺は発表最終日だし。その後だと時間とれるかわかんないし」
俺は発表が終わったから何があっても気楽だけど、最終日が発表だというのに、
この人はどうしてこうも余裕なのだろう。
そして、最終日。
仁科さんの発表は、俺が心配するだけ野暮だったと思わせるような、実に見事なものだった。
会場でも、拍手をする俺の後ろで、
「仁科君は油がのっているねぇ」
というお偉いさんの会話が嫌でも耳に届く。
結局、その後も軽く飲んで、終電ぎりぎりに新幹線の駅に二人でたどり着いた。
ここから俺は大阪に、仁科さんは東京へと帰る。
「おつかれさまでした。また、どこかの学会で」
仁科さんに出会ってから、俺は修士から博士へと進むことで、自分を後がない立場に
追い込んだだけだが、仁科さんは助教になり一生研究で飯を食えるだけの立場を手に入れた。
だから、仁科さんとは次に会う約束を決めない。
俺が頑張って学会に行けば絶対、仁科さんはその会場にいる。
そう信じられるだけの才能と実績が、彼、仁科聡という人間にはある。
〈 fin 〉
―× Illust ×――――――――――――――――――――――――――――
"眼鏡で10のお題 -- 06:スーツと眼鏡"
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~b-knife/mm/illust/megane06.jpg
今回はオナゴです。
「スーツ」と来てすぐオノコを描こうとした自分の萌えをあえて裏切りました。
描いてみればこれはこれで……フフフ(変態龍生)。
お題提供元:「SCHALK.」様 URL>> http://schalk.xii.jp/
―× Free ×―――――――――――――――――――――――――――――
"人間なんでも一生懸命行動したという事実はネタになる"
おひさしぶりです、カナンです。
学生の皆さんは、もう夏休みでしょうか?
カナンは院生なので、夏休みといっても学部生ほど長い休みはありません。
でも、通常ゼミなどがお休みで、ちょっとのんびりした雰囲気。というのも、
先月末に学会が終わったのです。
そう、だから今回のノベルがあんな話になりました。
個人的には、一人称『俺』多発の珍しい話です。
やや量が多いですが、ご容赦ください。
さて、今週、私の脳内では、タイトルにもしました「人間なんでも一生懸命行動した
という事実はネタになる」という怪しげな一文が常時点灯しています。
今、わけあって友人の就職活動を手伝っているのですが、この子がまた異常なくらい
エピソードが少ないのです。
大なり小なり本人がやったことを膨らませるのはいいけど、やってないことをやった
というのは詐欺!
というわけで、冒頭の怪しげな一文が点灯します。
ちなみに、点灯させながら人と接すると、たいていの人はどこかにそれらしいエピソードを
見つけることができます。でも、たまに、この人エピソード多過ぎって人にも出会います。
こういう人は所謂『引き出しの多い人』というやつなのでしょう。
聞いていると、こういう人達は、とにかく日頃から何にでも手を出していて、そこで
得た経験を酒の肴にしていることが多いです。
しかも、こういう人って何にでも一生懸命になるのが当たり前になっているから、傍で
みているとものすごく頑張っていることでも、「そういえば、これも頑張っていることに
入るのかな?」って返しをされてしまいます。
そういう時、周りは、すごいと言ったり、アホだと言ったり、その反応は色々ですね。
ちなみに。私が最近、とある引き出しの多そうな人から聞いた言葉で、
「アホなことって、意外と実行するのは大変だよね」
というのがあります。これは、それこそアホなこともそうでないことも散々やった上での
発言だから、重みが違いましたね。
さて、せっかくの夏休み。私も何か1つぐらい一生懸命になるもの探したいです。
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× For ever Blue × vol.186
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