2008/06/03
印刷だより
---------------------------------------------2008/6/3 ◆◆◆◆◆◆◆ ◆┃印刷だより #66┃◆◆◆◆ http://business.hey.ne.jp ------------------------------------------------------------------ 株式会社ビジネス印刷センター ================================================================== 両親へのRequiem #3 先月号で「父親のことよりも母親のことを知りたい」というResponseがあっ たので、少々躊躇いながらも、どうしても続きを書かされる羽目になった。 父親は若干「事大主義的」な発言をする人だったが、母親は何があろうと (父親なら天変地異があろうと、と言うのだろうが)「淡々としたまま」で 物事に当たる人だった。 数か月に一度しか許されなかった上洛見舞いの折りには、当番制を組んで泊 まりがけで看病してくれていた「同志社大学器械体操部員」へも、労いの心 で、物静かに対応していた。 体操部の監督やコーチも「お母さんから泣き言や恨み言聞かされると覚悟し ていたんやが、立派なお母さんやな」と安堵の声を聞いていた。 「お母さん、高野の小さい頃の話を聞かせて下さい」という部員達の Requestに対しても、恰も明日は私が歩いて退院するような口調で語り部を 務めていた。 ─────────────────────────────────── 私が4才の頃、川遊びをしていてガラスで足の裏を爪先から踵まで切ったこ とがあった。何か月経っても家の中を這っているので、しびれを切らした 母親が「立ってみんさい」と命令したらしい。 Obedience(従順)が取り柄の? 私は、恐る恐る、しかしちゃんと起立し たらしい。 「歩いて見んさい」には、スタスタ歩き始めたらしい。 まさかと思いつつ「走って見んさい」と言えば、家中を走り始めたらしい。 親戚中でも笑いの種にされていたが、母親の平坦な口調が何とも言えず、体 操部員達は、涙を堪えて笑い転げていた。 6才の頃の記憶は新鮮に覚えていた。近所の化粧品店の改築工事があり、子 供達でお店の前で遊んでいたときの記憶を暴露された。 「仲良う怪我せんように遊びんちゃいよ」と言われた矢先に、よちよち歩き の子供が取っ手に洋服を引っかけたため、ガラス戸が倒れ始めた。 「危ない」と言った瞬間に、私は扉とよちよち歩きの子供の間に入っていた。 後先顧みない「オッチョコチョイ」な性格は既に芽生えていたのであろう。 頭部でガラスが割れて側頭部(左耳の上)を切って、血だるまになりながら 帰宅したことも微かに覚えている。出血がひどいので、急遽、すぐ近くの 「産婦人科」で縫合手術をして頂いた。古き良き時代にも「医術は仁術」が 生きていたのだろう。麻酔を嗅がされた記憶もハッキリ残っている。 小学校では、数針縫った傷跡を見て「電車ハゲ」と茶化されるのが嫌だった。 中学生になると「産婦人科で性転換手術受けたシスター」と冷やかされた。 当時はまだ「美輪明宏」のことを「丸山明宏」と呼んでいた時代で「オカマ」 と言う言葉はなく、おんながたを「シスター」と呼んでいた。 翌日退院してからは、抗生物質は高くつくので「苦い薬」を飲まされた。 「せんぶり」や「げんのしょうこ」などを混ぜ合わせてあるらしく、身震い するほど苦かった。 母親がやはり淡々と(今思えば、真実は「眈々」と、だった)「この薬を飲 まんと、脳みそまで腐ってしまい馬鹿になるんよ、苦いけど我慢して飲みん ちゃい」と懇々と諭すので逆らえるような雰囲気ではなかった…… 「でもあんた、泣き言も言わずによう飲んだね。私なら、あんな苦い薬なん か絶対に飲まんかったよ」14年ぶりに、病室で初めて真実が明かされたのだ。 母親は常に行儀が良く、駆け引きもせず、物事の道理をわきまえている人だ と思っていたのに…… 裏切られた気持ちも些少はあったが、部員達と一緒 に私まで笑いの渦に巻き込まれてしまった。 ─────────────────────────────────── 母親が病室を空けた時に、叔母(母親の妹)が語ってくれた。(叔母とは年 が近いセイもあって、子供の頃からそして今でも「薫子姉ちゃん」と呼び、 お世話になっている) その薫子姉ちゃんが「兄ちゃん(=父親)がね『ワシならとうに人生投げ出 してしまうが、あいつは母ちゃんの血も継いどるけえ、もしかしたら生き様 を見つけてくれるかも知れん。能わぬことだが、あいつの代わりになってや りたい』って弱気になっとるんよ。それから姉ちゃん(=母親)はね、今日 はお化粧で隠してるけど、あんたが怪我した翌日には髪の毛が真っ白になっ て、一晩で10才くらい年取ったみたいになったんよ。それでもあんたはね、 兄ちゃん姉ちゃんにとっては今でも『希望の星』なんだから、渋とう生きん さいよ」 その晩、初めて病室の枕を濡らした。 ─────────────────────────────────── Post Script 厳密には「両親への鎮魂歌」という私ごとで紙面? をお借りするのは「#4」 になる。 あまりにも「印刷だより」のTitleとかけ離れるので、せめてものお詫びに、 印刷界でさえ曖昧模糊どころか混同している「シャープ」と「ナンバー」の違 いくらい蘊蓄を垂れておこう。 「文字物」に対して「記号類」「符号類」を総称して、我々は「約物」と呼ん でいる。 それでは、約物のシャープ「♯」とナンバー「#」の違いを見比べて頂きたい。 シャープは音楽記号で横二本線が右肩上がりになっているのと、ナンバー(印 刷界の俗称はイゲタ)では横二列が平行になっているのを確認して頂けるだろ うか? 混同しているどころか、区別する意識さえ欠如しているのが今の印刷 界の現状であろう。 来月号からは、元に戻って癖のある文章ながらも、暖めていること? を漸次 披瀝する。 OGRE 詳しくはこちらのホームページをご覧下さい →→→http://business.hey.ne.jp ================================================================== ◇ご意見・ご感想◇ business@x.age.ne.jp ◇このメールマガジンの解除はこちらから◇ →→ http://business.hey.ne.jp/magajin/magajin.t.htm ================================================================== 発行:株式会社ビジネス印刷センター (〒732-0052 広島市東区光町二丁目2‐1) 第67号は6月30日予定です



